ブラック企業大賞 電通に

ブラック企業大賞 電通に
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労働問題に取り組む弁護士やNPOなどが選ぶ「ブラック企業」大賞に、ことしは新入社員だった女性が過労のため自殺した大手広告会社の電通が選ばれました。
「ブラック企業大賞」は、労働問題に取り組む弁護士やNPO、ジャーナリストなど11人の委員が違法な長時間労働やパワハラなどで問題となった企業の中から選んでいます。

ことしは、従業員に違法な残業をさせていたとして罰金が科されたディスカウントストアのドン・キホーテや原子力発電所の審査の対応にあたっていた男性社員が過労のため自殺した関西電力など11社が候補となりました。

そして新入社員だった女性が過労のため自殺し、厚生労働省の強制捜査を受けた電通が、23日、大賞に選ばれました。

ブラック企業被害対策弁護団の代表を務める佐々木亮弁護士は、「新入社員の過労自殺だけでなく過去にも痛ましい事件が起きていて労働者の人権を大事にしてほしいという思いで選んだ。長時間労働やハラスメント防止にしっかり取り組んでもらいたい」と話していました。

ブラック企業 大手にも批判

「ブラック企業」とは、違法な長時間労働や残業代の未払い、パワハラなど労働環境が過酷な企業を表す言葉で、若者を中心に広く使われています。
ここ数年、一部の大手企業に対しても「ブラック企業だ」という批判が寄せられるようになり、厚生労働省は、全国に展開する大手企業を専門に調査する過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」を去年、設置するなど監督や指導を強めています。

電通 一連の問題受け改善の取り組み

電通をめぐっては、去年、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が自殺し、ことし9月、過労が原因の労災と認められました。
母親の幸美さんは、記者会見で、「労災認定されても娘は戻ってきません。娘が生きているうちに会社はどうして対策をしてくれなかったのか」と訴えました。

まつりさんの過労自殺などを受けて厚生労働省は電通に立ち入り調査を行い、先月には労働基準法違反の疑いで強制捜査に乗り出しました。

電通では、一連の問題を受けて夜10時以降の深夜勤務を原則、禁止したほか、組合と取り決めた残業時間の上限を月5時間減らすなど労働環境を改善する取り組みを進めています。
また、社員の心身の健康について、家族からも相談を受け付ける電話相談窓口を設置することや、育児や介護をしている社員を対象にした「在宅勤務制度」を始めることを22日、新たに発表しています。

社員「体質は変わっていない」

電通の現役の社員がNHKの取材に応じ、長時間労働の対策で一定の効果が出ているとする一方、家に持ち帰って仕事をする人が少なくないなど企業の体質は変わっていないと証言しました。

電通では新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が去年、過労のため自殺した問題などを受けて夜10時以降の深夜勤務を原則、行わないなどの労働環境の改善に向けた取り組みを進めています。

これについて今月、NHKの取材に応じた社員の1人は、「夜10時までという明確な残業規制が入ったため『あすまでにこれをやれ』と言って徹夜などを強いる理不尽な長時間労働は減っている」として対策で一定の効果が出ていると話します。

一方で「企業の体質は全く変わっていない。人によってはどんどん持ち帰って仕事をしている現状がある。ファミリーレストランや自宅、喫茶店など外に仕事を持ち出して作業をやっていると聞いている」と話しました。

さらに「体育会系という名目で正当化される理不尽なパワハラや人権を無視したひぼう中傷、暴言をはかれるといった企業文化は残っている。『俺はこれを乗り切ったんだからお前も乗り切れないと電通マンになれないんだぞ』といった企業風土は根深い」と話します。

特に新入社員に対しては、まつりさんの過労自殺が明らかになる前はパワハラともとれる厳しい指導が行われていたということで、「仕事がきつい部署では新入社員は3か月全く休みがなく、土日も出勤し続けるのが当たり前で、指導という名のもとで個室に詰め込んで個人的なことまでひぼう中傷する言葉を浴びせ続けるということが起こっていた」と証言しました。

そのうえで、「今回の件は電通の企業風土やパワハラが引き起こしたことで、犠牲者が出てしまったということを深く反省して社員一人一人が自分の言動をしっかりと見直してほしい」と話していました。