貴方の名前はブラック・ジャック   作:バグルス
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お知らせ。

〜お気に入り登録してくださってる方は必ずお読みください〜

冷静に考えたら、今ある俺の作品の評価8、9はリメイク執筆前の2ch風SS時代の物です。

自分は会話形式SSと小説とは全く別物だと思っていますので、一旦評価リセットの意味も込めて別の同じ作品の方に移住をしてみたのですが…。

https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=107502

勿論唯一リメイク後の評価である3は、その評価はその評価という事で自分でちゃんと受け入れて別アカウントでつけようと思います。

今書いてるリメイク版の実際の評価は星3一つなのに、再スタートを切った方の評価だけが未だに残ってると言うのは、何だか読者を騙してるようで申し訳ないのです…。UA5000だってこのうち3000はSS時代の物ですし…。

せっかくスランプと鬱から立ち直れたので、本当の意味での再スタートとという意味でも、これからはこっちでやっていこうと思ってます。ふぁぼられた方、ふぁぼる予定の方はこちらの方をお気に入り登録してくださると幸いです。

再三、ご迷惑をお掛けしますがご協力願えますでしょうか…。本当に申し訳御座いません。

こっちの方は暫くしたら消そうと思ってます。

以下、字数稼ぎ

part04~06
part04「油断」
視点:宮水三葉

『何かあった時には遅いからな。体の変調とかはちゃんと連絡しろよ?』

ㅤ確か瀧君は同じ事を出張前にも言った。
ㅤでも、その時はまさかそんな事起こる筈も無いよねって事で軽く聞き流していた。

『はーい。瀧君頑張ってな!いってらっしゃい。』って感じで。

ㅤでもその後、一つだけ気になる事があった。それは、瀧君が出張に出かけた翌日の昼辺り、右の横腹が全速力で走った訳でもないのに激痛に見舞われた事。
ㅤ便秘なのかなって思ったけど、朝はちゃんと出してるし、多分その線は無い。

ㅤ治ったその後もズキズキと少々痛んだけど、私には3歳の六葉をちゃんと見とかなきゃいけないって母親としての責務があるし…。その後特に何も起きなかったってのもあって、構ってられないよねこんな事って事で、ほっといた。勿論瀧君に連絡なんてするはずもなし。

ㅤそれと、今の私が昼に外に出るとすれば六葉を幼稚園に連れて行くついでにゴミ出しや買い物、近所に回覧板を回す、偶に六葉を連れて他の人の家に遊びに行くくらいで、基本的には家の中。あと最近六葉が幼稚園に行ってる間に料理教室にも通うようになった。
ㅤ暇な時はテレビを見てるか、本を読んでるか。後、電話で今やママ友にもなったサヤちんや他のママ友と喋ってるか。

ㅤそして、愛する娘の為に服を編んでやるのが今の私の一番の楽しみの一つ!六葉が今着ているセーターは私のオリジナルなのだ!

ㅤそうやって過ごして行くと1日は本当にあっという間に終わって行く。電話で話している最中にふと窓を見ると既に夕焼けだったなんて事も割とザラ。主婦ってこんなものなのかな?
ㅤだからこの1週間も実を言うと感覚的にはかなりあっという間に終わっていて、1週間前のお腹の痛みの事はすっかりと頭から消えていた。
ㅤ瀧君とも夜の22時にメールで連絡取り合ってたし、瀧君不足に悩む事も無し。

『何かあった時には遅いからな。体の変調とかはちゃんと連絡しろよ?』

ㅤこの事を今さっき言われるまで腹痛の事を思い出す事は無かった。
ㅤでもまぁ、大丈夫だよね。特にあれから何か痛むわけでも無いし。

「ふぅ」

ㅤそう言って台所に湯気を立たせながらやって来たのは今晩宿泊する黒田さん。無愛想な人だけど、なんでかな?瀧君の言った通り、悪い人な感じはしない。
ㅤ相変わらず六葉は怯えてるけどね…。でもまぁ、黒田さんには悪いけど仕方ない気はする…。

「どうぞ、お座り下さい。さっき主人が買ってきたお饅頭です。すごく美味しいらしいんですよ。」

「あぁ、ありがとうございます。…。ほう、中々ですな。」

ㅤ黒田さんはややニヒルに口元を曲げ、少し目を大きく開けただけで美味しいという感情を表現した。
ㅤはっきり言って不気味ではあるのに、何処か表情豊かな面白い人で、悪い人では本当に無さそう。

「しかし宮水さんには世話になってばかりですな奥さん。」

「いえいいんですよ。お医者さんなんでしょう?車ん中で寝て風邪でも引いたらダメですよ。」

「ま、オーストラリアの砂漠のど真ん中で眠ってた頃よかよっぽどマシですがね。」

「へ……?オーストラリアの砂漠……?」

「ええ、色々あってね。何とか事なきを得ましたがね。アレは大変でした。エキノコックスの変種に感染されたりディンゴに襲われたりね。今考えても恐ろしい。我ながらよくあれで死ななかった物です。」

ㅤ何か…一般人には推し量れない様な凄い壮絶な経験を凄く淡々と語ってるけど…と言うか、えきのこっくすって何…でぃんごって何……?

「ま、まぁココはオーストラリアじゃなくて日本ですから…。そのえきのなんたらとかでぃんご?なんてのもおらんし。」

「ええ、ここにいるのは裕福な人間の家族ですからな。今夜は何も気にせず安心して眠れると言う物です。」

「黒田さん…。」

ㅤ裕福な人間の家族かぁ…そういう事を何気なく言ってくれる時点で、やっぱこの人は凄く良い人。何より瀧君が信用して連れて来てくれた人なんだしね。
ㅤ人は見た目じゃわかんないって言うけど本当にこの人がそうだと思う。

「たった一晩だけですけど、どうぞゆっくり…」

して行って下さい。

ㅤそう言いかけると、今更になって右横腹に激痛が走った。それも、1週間前の比じゃ無い、まるで太い針でぐさりと突き刺されたかの様な鋭い痛みが……。

ㅤ………いや、何かが……破裂した……!?

ㅤ痛い……痛い………!痛い!痛い!!痛い!!!何これ!?痛いなんてレベルじゃないっ!?

ㅤ…どうして…?どうして、今になって…?

「あっ……!あぐっ……!い、痛ぁっ…!」

「どうしたんですか!?」

ㅤ余りの痛みに言葉が出ない。その場で膝を折って倒れ込み、床の上に右横腹を抑えながら私はうずくまった。
ㅤ私の目の上には一体何が起きているのかわからないという風に唇を震わす六葉がいた。

「あっ……!あぁっ!うぁぁっ!」

「奥さん!奥さん!どうしたんですかい!」

「マ…ママ…。」

『何かあった時には遅いからな。体の変調とかはちゃんと連絡しろよ?』

ㅤ何であの時、ちゃんと病院に行かなかったのだろう…。何でちゃんと瀧君に連絡しなかったんだろう…。

ㅤ何が起こる筈無かろうなのよ!そうやって油断した結果、今こうして私は地面の上で刺す様な痛みに耐えられず絶叫しながらうずくまっているわけじゃない!

ㅤ…でも…もう遅い…。油断が今の状況を生んだんだ…。
ㅤ私は一体…どうなるんだろう…。



part05「勇敢な少女」
視点:ブラック・ジャック

ㅤ一体何が起こっている!?今、目の前で奥さんが突然声を上げて倒れ込んだのだ!

「く…くろ…ださ…。」

「喋りなさんな!まずは息を整えなさい!」

ㅤ凄い熱だ。明らかに普通では無い。間違いなく何かしらの病気である。

ㅤ恐らく抑えてる場所的には盲腸かもしれないが…嫌な予感がする。まさか腹膜炎を起こしているのか?とりあえずじっくりと検査せねばなるまい。

「取り敢えず寝室を探します!」

ㅤすると、後ろの方から誰かが私の服を引っ張ってきた感覚がある。
ㅤ振り返ると、そこにいたのは宮水家の娘さんだった。目に涙を浮かべながら手を震わせている。

「…重篤のママが苦しむ姿を見たくは無いだろう。早く何処かへ行っておくといい。」

「くろださん…いしゃ…ママ…みてやって…おふとんのおへや…おしえるから…」

「何だと!?」

ㅤ何とこの子は愛する母親が苦しんでいる、私への恐怖という同じ年頃の子供ならその場で泣き出してもおかしく無い様な状況に立って涙一つ流さず、寝室にまで私を案内すると言ったのだ。母親を助けたい一心で彼女は今にも決壊しそうな心を制御しているのである。

「そうかい。なら、案内してもらおうか。六葉ちゃんとやら。」

「うん…。」

「奥さん、立てんだろう。持ち上げますぜ。…よいしょっと。」

「む…つは…。」

「良い子ですな、あの子は。」

ㅤだが彼女の勇敢さに対して感傷に浸っている暇は無い。まずは奥さんの容態を調べなければならない。その為にも彼女の案内は必須だ。

「こっち…。」

ㅤとたとたと走る彼女について行くと、やがて寝室にまで辿り着いた。用意周到に彼女はドアまで開けてくれたのだ。

「感謝するよ六葉ちゃん。下ろしますぜ。よいしょっと。」

「はぁ…はぁ…。むつ…は…。」

「あの子はどうも風呂場にまで飛んで行った様だ。宮水さんを呼びに行ったんでしょうな。」

ㅤ彼女は未だにはち切れんばかりに膨張した涙のダムを必死の思いでせき止めているのだろう。あれ程無邪気でありながら、その実精神年齢そのものは三歳児のそれを遥かに超えている様な気さえする。

ㅤここまで強い子は他にいるのだろうか。父親と母親がそれぞれ出来た父親と母親であれば子供までもが出来た子供になれるのだろうか。

ㅤだが何にせよまずはここにいる奥さんの容体を調べねばなるまい。この人はあの勇敢な少女に託された人でもあるのだ。

「ちょいと服をはだけますぜ奥さん。痛かったら言いなさいよ。」

「はい…。」

ㅤ服の一部のみをはだけ、痛がっているらしい場所を私は手で抑えた。

「うぁぁっ!?」

ㅤ最悪の中の最悪のケースだが……予感は的中した。

「成る程ね…こいつはまずいですぜ。ただの盲腸ではない。腹膜炎を起こしているんだ。」

「じゃあ…」

「手術以外治療法は存在せん。とりあえず鎮痛剤を打ちますぜ。」

ㅤ注射針が奥さんの横腹に刺さる。強力な物を使っているのでさっきまで苦痛で歪んでいた奥さんの表情はみるみる落ち着きを取り戻す。

「はあっ………はぁっ………」

ㅤ息も整った。そこで一つ聞かねばなるまい。何故こうなるまで放っておいたのかという事を。

「…現代医学なら早期発見で薬でどうにかなる病気をどうしてここまで放っておいたのかね?」

「…私、2日前に横腹に激痛が走ったんです…。それを大丈夫大丈夫で放っといたら…。」

「………………なるほどね…。宮水さんが帰ってきてタガが外れた訳か。」

「多分そうなります…。」

「一応この場で手術は出来るんでね。直ぐに宮水さんはこっちにまで飛んで来るだろう。取り敢えず、その時に手術をして良いか許可を得ねばならない。この家には一宿の恩義がある。」

「本当ですか…!?あぁ…有難うございます…!」

ㅤ「奇跡が起きた」と、そう思っているのだろう。

ㅤ奇跡とやらを直ぐに起こしてやってもいい。

ㅤだが、その前に愛する人を「何としてでも」助けたいと言う意思が宮水さんに本当におありかどうか。

ㅤ「私流のやり方」で試させてもらいましょう、宮水さん。



part06「金と命」
視点:宮水瀧

(あの人の、名前は……。)

ㅤ俺はやはり、黒田さんの事を間違いなく知っている。冷静に考えれば黒コートに色別れの継ぎ接ぎなんて強烈な出で立ちの日本人は2人や3人いるはずもない。

(誰だ……誰だ…。)

ㅤ彼の本当の名前は何だったのか、そして彼の正体が何だったのかを、頭も含めた全身を湯船の中に埋めて集中し、様々な思考を巡らしながら考えている。

(黒いコート…継ぎ接ぎ…医者…黒田…黒田…ブラック……ブラックジャック…。…ブラック・ジャック!?)

ㅤざばりと湯船から顔を上げる。かなり長く潜っていたせいか、少々息苦しい。
ㅤだが、今記憶が「ブラック」というワードを手掛かりに「ブラック・ジャック」というワードまで引きずり出した。
ㅤ勿論トランプゲームの一つと言う意味ではない。一度明確な手掛かりを掴むと、記憶は次々と芋づる式に蘇ってくる。
ㅤあれは確かいつかの上司との飲みの席。

『立花、知ってるか?日本にはブラック・ジャックって言う顔面継ぎ接ぎ黒コートって出で立ちの凄腕の名医がいるらしいぜ。』

『顔面継ぎ接ぎ黒コート…?凄いですね…。何か医者っていうよりアニメの悪役みたいです。』

『だろ?でも腕は確かなんてもんじゃないぞ。噂によると治せん病気なんか無いらしい。』

「思い出したぞ!ブラック・ジャック!ブラック・ジャック!あの人の名前は、ブラック・ジャック!」

ㅤ何故か名前を思い出せたことが嬉しい。俺はそんなすげぇ人泊めてたのか!?という感じだ。

「パパ!」

「うわっ!?」

ㅤ愛娘が突然ガラリと風呂場の扉を開けて湯船にまで駆け込んで来た。
ㅤ息を切らせ、涙目で俺を凝視している。普通じゃない。……何かが起きてるのか?

「ど、どうしたんだ!?」

「マ…ママ…ママ…ママ…が…たお…たお…れ…。うわぁぁぁぁぁん!」

「なっ!?ママが倒れた!?今どこにいるんだ!」

「ママの…お…おへ…や…ひっく…くろださんと…ひっく…。」

ㅤ黒田さん…いや、BJ先生はあの部屋を知らないはずだ。という事はあの部屋を案内したのは…。

「お前、ママとあの人を部屋にまで案内してやったのか?」

ㅤしゃくり上げながらこくりと一回だけ頷く六葉。

「良くやったよ…本当…。」

ㅤこの子の名前の由来は、「栄誉」。今この場が風呂場で無ければ、表彰台であれば、俺はこの子に名前通りの栄誉賞をこの子に与えていたかもしれない。
ㅤ本当にいつの間に、こんなに立派な子になってたんだろか…。俺と三葉の注いできた愛情が今この場で結実するなんて……。

ㅤ…やばい、泣きそうだ。マジで感動で泣きそうだ。反抗期でもこの子の為だと言うのなら親として俺はマジで乗り越えられるぞ…。自信があるぞ…。

ㅤ---でも今はそんなこと考えてる場合じゃない!後でたっぷり愛でてやるけどな!!

ㅤ三葉が倒れたんだ!どういう事だ!?一体何が起きたんだ!?
ㅤ俺は風呂を出て全速力で体を拭き、寝巻きとして用意をしていた上着を袖に通してズボンを履く。急げ!急げ!1秒でも速く!早く!直ぐに部屋に向かわねぇと!

ㅤ部屋に向かうと、ちょうど部屋から先生が出た所だった。

「娘さんが教えに来たんでしょう?随分大きな声だったのに気付かなかったのかね?」

「風呂に潜ってたせいで、声に気づきませんでした…。---それに、貴方の本名の事を考えてましたから……貴方の名前は黒田太郎じゃありませんよね。」

ㅤ先生の顔色が変わる。まるで「初めから知っていたのか」とでも言いたげな顔だ。

「貴方の名前は、ブラック・ジャック…。」

「…そうだが。何だ?お前さん初めから知ってたのかい?」

「いえ、噂は聞いていたんです。黒コートに継ぎ接ぎという凄腕の名医が日本にいるという事は。今さっき思い出しました。」

「なるほど。変に名前が知られていると言うのも楽では無いね。」

「それよりも、三葉の方は…。」

ㅤ主張中、三葉が腹痛を我慢していて、それを盲腸だと気付かずに放置した結果、腹膜炎にに至る事、現在鎮痛剤を打って一時的に痛みは和らげているという事を、淡々と先生は説明した。

「腹膜炎……それってまさか……!」

「その通りですぜ。手術以外治す方法は存在せん。貴方が私の正体を知ってるんなら、BJの名に置いて今この場で治してやってもいいですぜ。」

ㅤそうだ!この人に治してもらえばいいんだ!!この人に治せない病気なんかないんだ!!

「じゃあ…BJ先生!お願いします!先生ならどんな病気でもその場で治せると聞いています!!今直ぐあいつを!お金は後で病院の方に…」

「病院?残念だが、私ァ病院など務めていませんぜ。」

「え…どういう事ですか?」

「私ァ無免許医って奴でね。俗に言うモグリですよ。報酬の方も随時こちらの方で決めさせてもらっている。」

「じ、じゃあ、いくら払えば…。」

「そうですな、宮水さん。今回の病気、あの人を助けるにはしめて…。」

ㅤ先生の瞳が、普段よりも鋭い眼光を帯びる。

「3000万円払っていただきましょう。」

「さ、さんぜ…!」

「どうしますかい?宮水さん。払えるかね?」






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