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【首都スポ】

ルーキーズの素顔by瀬川ふみ子 西武ドラ6位・田村伊知郎を紹介

2016年12月21日 紙面から

今秋のリーグ戦後の11月、教育実習に向かう途中の伊知郎。グラブはいつも、リュックの外に大事そうに持っている(瀬川ふみ子撮影)

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 報徳学園高で1年生から甲子園で投げ「野球もスゴイ、頭もいいスーパー1年生」と脚光を浴びた伊知郎。立大に入学してちょっとたったころに初めて会話した時は、なんて落ち着いているんだろう、なんて気配りができるんだろう、これが高校卒業したばかりの大学1年生? と驚いた。

 故障もあり苦しい時期を過ごしたが、3年春の東大戦でリーグ戦初先発して完封で初勝利を挙げた試合は感動もの。その後はなかなか勝ち星を挙げられなかったが、副キャプテンになった4年春に4勝。優勝がかかった明大とのカードでは3日間連続で先発。勝ちに対する伊知郎の執念、熱い気持ちが、スタンドで見ていた私にまで伝わってきて、涙が出た。夏に大学JAPANにも初めて選出され、神宮に凱旋(がいせん)したときもうれしかった。

 「3年秋に1つ上の滉二さん(大城)がオリックスから指名を受けたのを間近で見て、初めてプロに行きたいって本気で思ったんです。そこから自分に何が足りないのかを見直すところから始まり、正しい努力を積み重ねて春につなげることができました」。春秋と優勝には届かなかったが、最後まで優勝争いができたのは、伊知郎の大車輪の活躍が大きかった。

 そんな伊知郎のことを仲間たちはこう言う。「いつも一生懸命」「いつも全力プレー」。私もそう思う。何事も手を抜かないで全力でぶつかってる。そのことを聞いてみたとき、こう言ってた。「僕って何でもあっさりできちゃうような器用さはないんです。でも、一つのことを長く続けたり、深くのめり込んでいったりすることは得意かもしれません。そうやっているところを見て、一生懸命だとか言ってもらえてるのかなって思います」。時間をかけて、熱く、泥くさくやってる姿を見て、周りの人も、私も、伊知郎が好きになっていっちゃうんですね。

 ドラフトは6位で指名され、「ダメかと思ったのでほんとにホッとしました」って胸をなでおろしていた。下位からはい上がれという神様からのメッセージを、伊知郎はしっかりと受け止めてる。大学野球引退後も、教育実習に、練習にと充実した毎日を送る伊知郎。プロでの抱負を聞くと「1年目からこんな活躍がしたいとか、そういうのはないんです。ただ、今まで通り、その日その時を頑張るみたいな。一歩一歩ですね」と話した。

 その言葉、伊知郎らしいなって思った。“いちろう”という名前は、オリックス時代のイチローが、鈴木一朗からイチローに登録名を変更した1994年に生まれ、しかも生まれた時間が午前11時1分だったから付けられたという。それを聞いたとき「“いちろう”だから、一番のピッチャーになれるといいね」って思ったけれど、今の伊知郎を見ていると、「一番じゃなくてもいいから、今までどおり、“一歩一歩”進んでいける伊知郎でいてね」って思う。

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