トランプ米次期大統領はこのほど、国家通商会議(NTC)をホワイトハウスに新設することを決め、統括役となる大統領補佐官・通商産業政策部長にカリフォルニア大のピーター・ナバロ教授を指名すると発表した。ナバロ氏は「中国脅威論」を主張する保護貿易タカ派だ。韓米自由貿易協定(FTA)についても「失敗した交渉だ」とし、再交渉すべきだとの立場を取る。中国ばかりか韓国も狙ったトランプ政権の通商攻勢が現実となり始めた。
米国だけではない。中国の国営企業が韓国企業と結んだ投資契約を一方的に解除した際、韓半島(朝鮮半島)への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を理由に挙げた。中国はこれまで韓流規制(限韓令)など非公式な報復措置を取ってきたが、THAAD問題に公に言及した格好だ。
韓国は今、世界の両大国が自国の利益のために通商の刀を振り上げることをためらわない現実に直面している。1960年代に「輸出立国」を掲げ、開放貿易路線を歩んできた韓国がこれほど困難な通商環境に直面したことはない。
それにもかかわらず、通商上の危機に対処する韓国内部の力は過去最悪だ。国政のリーダーシップの空白がいつ終わるのか見当も付かず、THAADや米中関係など対外的な問題でも内紛が起きている。通商担当組織は産業通商資源部の一部に縮小され、担当公務員も専門性不足と事なかれ主義に陥っている。
それでも韓国は米中に通商・外交交渉団を派遣し、まずは誤解を解かなければならない。トランプ陣営は韓米FTAが米国にとって損害だと誤解している。韓米間の自由貿易はそのいずれかにとって一方的なものではない。たとえ不均衡が一部あったとしても、それは過渡期だけだ。中国は貿易分野の報復で韓国の安全保障・軍事政策を変えることができると誤解している。あり得ないことだ。THAADは北朝鮮の核を防ぐための窮余の策であり、経済より優先される生存に関わる問題だ。中国指導部の認識を変えさせることに外交力を集中しなければならない。
韓国の次期大統領は通商問題を国政の最優先課題に掲げる必要がある。環境はあまりに急変している。新たな通商戦略を樹立し、それを戦略的に執行する組織をつくるべきだ。通商と外交で国の大きさが重要とはいっても、それが全てではない。シンガポール、オランダといった小国も高度の国家的戦略で通商・外交強国になることができた。カギは細やかな戦略を立て、一貫して実践するという国家的意思だ。