『十角館の殺人』 綾辻行人
久しぶりにおすすめの小説を紹介。いつものようにネタバレなしで魅力を語ります。
ミステリーが好きなら読んでおきたい一冊。館シリーズで有名な綾辻行人さんのデビュー作です。
きっと衝撃を受ける作品だと思います。
あらすじ
大分県K**大学・推理小説研究会のメンバーは角島(つのじま)という無人の孤島を訪れた。そこには、別名“青屋敷”と呼ばれる、十角館という建物が建っている。
十角館では半年前に奇妙な殺人事件が起こっていた。
そんないわくつきの外界から孤立した場所に、彼らは1週間滞在する予定だった。
これから殺人事件が起こるともしらずに。
そして、この旅行に参加せず本土に残った推理小説研究会メンバーのもとには、謎の告発文が送られてきていた。
果たしてこの告発文を送ってきたのは誰か。
十角館で起こる殺人事件の犯人は誰か。
2つの場所で起こる不可解な事件はやがてひとつに繋がっていく…
みどころ
叙述トリック
作者である綾辻行人さんは叙述トリックを得意とする作家。この作品にもその手法は用いられている。
叙述トリックとは、読者の先入観や思い込みを利用し、一部の表現をぼかすことによって、作者が読者に対してミスリードを仕掛ける手法です。
読者が思い描いていた結末などが、一瞬にしてひっくり返る驚きが最大の醍醐味。
つまり簡単にいうと、どんでん返しがすごいという事。
叙述トリックものを読みなれている人にとっては、なんとなくわかってしまうかもしれないが、そうではない人にとっては大きな衝撃となる。
実際私も、事件の真相となる部分を読んで衝撃を受けた。
今まで見ていたものが全く違うものに見える感覚。
この感覚は実際に読んで体験してもらわないとピンとこないかもしれないが、是非味わって欲しい。
いかにもミステリーという設定
この作品はミステリー要素が詰まっている。
孤島という密室・謎の館という怪しい状況・登場人物たちがミステリーマニア。
そんな状況で事件は起こっていく。
わかりやすく探偵役となる人物もいるので、その人物が解説役としてうまく立ち回ってくれる。
物語は、本土と島の構成にわかれていてそれぞれの場面で話は進んでいく。
この構成が非常にわかりやすい。
また、十角館の見取り図なども載っているので、途中でわからなくなったら、都度確認できるのも良い。
細かな伏線が見事すぎて何も言えない
主要となる登場人物が何人かいて、読み進めていくと、それぞれどのような人物かわかってくる。たとえば大学の学年と学部だったり、見た目なり雰囲気。そういった細かい情報に思わぬヒントが隠されている。
あとは登場人物同士が意外なところで知り合いだったりもする。
推理小説研究会のメンバーは互いを、愛称で呼び合っているのも特徴的。
たとえば“アガサ”だったり“エラリイ”だったり、有名な推理作家の名前で呼び合っているので、ミステリー好きにはたまらないのではないだろうか。
感想
個人的に最近読んだ中で一番のミステリー小説。トリック・意外性・文章表現、全てにおいてレベルが違います。
新装改訂版なので多少手は加えられていると思いますが、それにしてもこれがデビュー作とは思えないくらいの素晴らしい作品です。
ミステリー小説を一気読みしたのは初めてかもしれません。長編推理小説と言われるくらいボリュームのある作品なのですが、すぐに読み終わってしまいました。
読後の満足感といったらないです。
やっぱり叙述トリックがうまいなと思いますね。
どんでん返しでだまされたのに、見事すぎてスッキリします。「だまされた!」っていう感覚がやみつきになる。
「また綾辻さんの作品を読みたい」と心から思わせてくれる作品です。
この作品を読んだ後、実際に綾辻さんの他の作品を購入して読みました。それくらい面白いです。