天皇誕生日に考える「生前退位」 特別立法の何が問題なのか
- 神奈川新聞|
- 公開:2016/12/23 14:50 更新:2016/12/23 21:43
- 無料公開中
弁護士で憲法問題も詳しい倉持麟太郎さんは特別立法による解決策には大きく三つの問題があると指摘する。
まず条文上、違憲の疑いを生じさせるという点。憲法はその第2条で「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と明確に、「皇室典範によって定める」と規定しているからだ。
倉持さんは「憲法は法律や政令、条約、そして皇室典範を、意図的に使い分けている。つまりここには規範性があり、特別立法によって皇位継承を定めることは違憲性を帯びる」と断じる。
二つ目は、時の国会における多数派が恣意(しい)的に今上天皇の地位を奪うことができる仕組みになってしまうことへの懸念だ。「こうしたことを避けるためにも、皇室典範で手続きと要件を定めるべき」と指摘する。
三つ目は、天皇の意向と、それを受け止めた国民の意思だ。「お言葉で、今上天皇は象徴天皇として憲法から期待されているものを極めて立憲的に解釈して取り組んでこられた。この象徴天皇としての役割を、今後も安定的に継続する必要性がある。そうした思いをにじませたお言葉を聞いた国民もまた世論調査では恒久的制度に賛成する意見が多数派であった」と解説する。
その上で「多面的に考えても、選択肢としてあるのは皇室典範による制度化しかあり得ない」と強調する。
また皇室研究家の高森明勅さんも「特別立法による一代限りの退位を認める」という対応に強い懸念を抱いている。「天皇の地位、その尊厳に関わる問題。到底許されない」と断じる。
有識者会議やそのヒアリング対象者の選定に対し欺瞞(ぎまん)を指摘しているのは戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんだ。「議論が本格化する前から、政権内部から『一代限り、特別立法による解決の方針』と定期的に情報がリークされ続けていた」とその在りように疑いの目を向ける。
有識者会議は、来年1月にも論点整理を公表する方針。これを受けて政府は具体的な方策を講じる。
COMMENTS