初めて出来た彼女に、私は夢中になっていました。
付き合ってすぐ彼女のお母様に「結婚を前提にお付き合いさせて下さい」という挨拶に行ってしまうほど、頭の中がハッピーになってしまっていたのです。
しかし、気になること一つがありました。
シングルマザーであるお母様は
「〇学生くらいの男の子」(ヤッくん)と一緒に暮らしていたのです。
彼は一体何者なのか・・・・。
■この記事は、一応コチラの記事の続きになります。
結婚?の挨拶を終えてから車に乗り込むと
私はスグ彼女にその事を尋ねました。
■あの子はいくつなのか?
■付き合ってるってどういう事なの?
■顔にアザがあったけど、アレはどうしたの?
興奮のあまり、ついつい質問攻めにしてしまいました。
すると彼女は「ヤッくんとお母さんはね~ラブラブなんだよ?」
と、二人のことを話してくれました。
ヤッくん
彼女によると、ヤッくんは、私が思ったとおりの年齢でした。
そして
「二人の出会いは運命的だったんだよ~」と彼女はニコニコ笑いました。
ヤッくんは、小さい頃からお父さんに「虐待」されていたそうです。
毎日、毎日、毎日、殴られたり、蹴られたりしていたそうです。
後日、ヤッくんに聞いた話では
「いやぁ、もう殴られるとかは気にならなくなってましたよ・・。」
と言っていましたが・・・やはり随分つらかったようです。
そして時には虐待がエスカレートしてしまい、
「命に関わる事」をされそうになる事もあったそうです。
そんな時、彼は急いで家を飛び出したそうです。
走って、走って公園や神社などの適当な場所で
お父さんの怒りが収まるのをジッと待っていたそうです。
そんな時、ヤッくんに声をかけてくれたのが
近所に住んでいた
「彼女のお母様」だったそうです。
初めて人の優しさに触れたヤッくんは
いつしか、恋に落ちてしまいました。
そして恋仲になった二人は愛し合い
ヤッくんは暴力を振るうお父さんから離れ、
二人は一緒に暮らすようになったのでした・・・・。
めでたしめでたし
さらに彼女は力強く語ります。
「ヤッくんのお父さんは本当にヒドイ人なんだよ!許せない!」
「お母さんが助けなかったら、ヤッくん死んでたよ!」
(なるほど、確かにそうかもしれない・・・)
そして、私は「感動」しました。
お母様の慈悲深い心と二人の愛にです。
なんという美談・・・・。
二人の歳の差を見て
これは不純な愛ではないか?と疑った自分を恥じました。
かなりの歳の差はあるけれども、
二人が心から愛し合っているのであればいいのではないか?
私はそう考えるようにしました。
ええ、この時は・・・・・・
私の頭もお花畑だったのです。
同棲の開始
お互いの両親に挨拶を済ませ。
結婚の約束を交わした私たちは、さっそく「同棲」を開始しました。
同棲の場所は「彼女が一人暮らしをしていたアパート」です。
私は二人きりの生活にウキウキと心躍らせていました。
しかし二人の生活は「究極の貧困生活」でした。
超ブラック企業での生活
超ブラック企業に勤める私たちのお給料は
二人のお給料を合わせても月15万にもなりません。
(※個人事業主扱いなので、さらにココから税金や年金、保険料などが引かれます)
なので二人の食事は、いつも
白米とキャベツが入ったコンソメスープ、くらいなモノでした。
お昼は持っていったオニギリを作って食べます。
さらに、私たちは毎日10時間近く、
飛び込み営業をする仕事なのですが
ジュースを買うお金も無いので、
毎日コンビニのトイレや公園で水をくんでいました。
日曜日になれば、たまにデートをします。
月の休みは2日程度なので、あまりデートをする事はありませんが
トーストにマヨネーズを塗って焼き
公園で100円ショップで買ったバトミントで遊んだりしていました。
笑ってしまうくらい、いや笑えないくらい貧乏でしたが
彼女がいれば私は幸せでした。
時には、お金が尽きてしまい
電気もガスも止められてしまう事もあります。
そんな時は、二人で彼女の実家へお風呂を借りにいきます。
お母様は、いつも私たち二人を暖かく迎えてくれます。
気さくで本当に優しい方でした。
お風呂から上がるとゴハンが用意してあります。
お母様も飲食店のアルバイトをしているだけなので
まったく裕福ではありません。
ヤッくんは家でいつもイヌの世話なんかをしているようです。
しかし、お母様が出してくださる
ちっちゃなお肉が入った野菜炒めと
山盛りのゴハンは私たち二人にとっては大変なご馳走でした。
それはもう、涙が出るほどに・・・・。
不幸な真実
ある日、またお金が無くなってしまったので、
彼女の実家へ行くことになりました。
本当に情けない話です。
その日も食事をゴチソウになり、
みんなで談笑していると
ヤッくんが何やら携帯電話をイジり始めました。
どうやらヤッくんは
当時流行っていたモバゲー?というヤツに夢中だったようです。
すると、お母様が立ち上がり
「てめぇふざけてんじゃねえぞ!」と叫びました。
え!?
私はワケがわかりませんでした。
するとお母様はヤッくんに向かってパンチを繰り出しました。
パーではありません。
グーで作る「パンチ」です。
パンチはヤッくんの顔面に真っ直ぐ突き刺さりました。
ヤッくんの鼻から赤い液体がこぼれ落ちます。
しかしお母様の攻撃は止まりません。
2発、3発、4発、これでもかとヤッくんを殴り続けます。
そしてうずくまったヤっくんに蹴りを入れ始めました。
二人とも何か叫んでいましたが、よく聞こえません。
(まさか・・・・)
愚かな私はやっとこの時
ヤッくんの顔のアザの正体に気がついたのです。
ヤッくんのお父さんの虐待の話は真実だったとしても、
それはお母様と同棲を開始する前の話のハズです。
今でも真新しいアザが体にあるのはオカシイのです!
美談なんかじゃなかったんだ・・・。
彼を暴力で支配していただけだったんだ。
考えてみれば、娘である私の彼女も
怒ると暴力を振るう習慣がありました。
私もよく殴られたりしたものです。
アレはお母様から譲り受けた習慣だったのか・・・・。
一瞬で頭の中に色んな考えがグルグルと浮かんできました。
しかし、考えている時間はありません!
ヤッくんがうずくまって動かなくなっています。
(止めなきゃ!!!)
私は、動かなくなったヤッくんの背中をバシバシ叩いている
お母様の手首をガシッとつかみました。
掴んだ手首は汗でヌメヌメしています。
すると、お母様の動きがピタッと止まりました。
時が止まったように感じました。
私の足は、あまりの恐怖にガクガクと震えています。
声も出ません。
そして、お母様はゆっくりコチラを振り向くと
ニッコリと笑いました。
つづく