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現代物理学には、二つの問題点がある。
・ 暗黒物質と暗黒エネルギーが見つからない。
・ 量子論と重力理論を統合する道筋が見えない。
前者は、「現代物理学の理論からすると、暗黒物質と暗黒エネルギーが存在するはずなのに、どうにも見つからない」(理論に観測が一致しない)ということだ。
後者は、「現代物理学の方向性からすると、量子論と重力理論は統合されるべきなのに、なかなかそれができない」(超ヒモ理論がその方向に近づきつつあるが未達成だ)ということだ。
この二つの問題は、「現代物理学が未完成だからだ」と言えなくもない。だが、「もしかしたら方向性が根本的に間違っているのではないか? インド大陸を探して大西洋を渡ろうとするような、とんでもない見当違いのことをしているのではないか?」という疑いも生じている。
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さて。一方で、現代物理学の方向性とはまったく別の(つまり異端の)発想も生じている。その一つが「エントロピック重力」の理論だ。
この理論は、重力を、(量子論における)基本相互作用の力の一種とは見なさず、熱力学的な理論で説明されるものと見なす。
エントロピック重力は、現代物理学の理論であり、重力をエントロピックな力として記述する。
エントロピックな力は、(電磁気力の光子や強い核力のグルーオンのような)場の量子論やゲージ理論を媒介とした基本相互作用ではなく、物理系のエントロピーを増加させようとする傾向の確率論的な結果のことを言う。
この提案は、物理学会で論争されていて、重力の熱力学的性質の研究の新しい方向を呼び起こした
重力の確率論的な記述は、少なくとも1970年代中期のヤコブ・ベッケンシュタイン(Jacob Bekenstein)とスティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)のブラックホールの熱力学まで遡る歴史を持っている。これらの研究は、重力と熱の振る舞いを記述する熱力学の深い繋がりを示唆している。1995年、テオドール・ジャコブソン(英語版)(Theodore Jacobson)は、相対論的重力を記述するアインシュタイン方程式が、等価原理と一般的な熱力学を結びつけることにより、導出できることを示した。
2009年にエリック・ヴァーリンデは、エントロピックな力として重力を記述する概念的なモデルを開示した。その論理は300年以上の論理をひっくり返すような論理で、重力は「物質の位置に関連付く情報」の結果である」と議論している。このモデルは、ジェラルド・トフーフトのホログラフィック原理を持つ重力と熱力学的アプローチを結びつけている。これは、重力は基本相互作用ではなく、ホログラフィックスクリーン上にエンコードされたマイクロスコピックな自由度の統計的振る舞いから創り出された現象であることを意味している。
( → エントロピック重力 - Wikipedia )
このように、普通の現代物理学とはまったく異なる発想の理論だが、この理論では、「暗黒物質は存在しなくてもいい」という結論が出る。すると、この理論は観測結果に合致する。
《 ダークマター存在せず? - 「エントロピック重力理論」と観測データが一致 》
ライデン天文台(オランダ)の天文学者マーゴット・ブラウワー氏らの研究チームは、宇宙における重力分布の測定データを分析し、「エントロピック重力理論(ヴァーリンデ理論)」と一致する結果を得たと報告した。
エントロピック重力理論は、2010年にアムステルダム大学の理論物理学者エリック・ヴァーリンデ教授が発表した重力についての新理論。重力とは「電磁気力」「強い力」「弱い力」と並ぶ自然の基本的な力ではなく、実は「見かけの現象」に過ぎないとする理論であり、発表当時、物議を醸した。
この理論に立つと、宇宙の全質量・エネルギーの約27%を占めるとされる目に見えない未確認の重力源「暗黒物質(ダークマター)」を想定しなくても良くなる点も注目されている。
エントロピック重力理論では、重力とは「物体の位置に関する情報量の変化によって生じるエントロピー的な力である」と説明される。物体の位置が変動することによって、情報量としてのエントロピーが変化し、この変化が重力という形を取って現れるという。つまり、重力とは、エントロピー変化にともなう見かけ上の現象ということになる。
この主張は、「電磁気力」「強い力」「弱い力」と並ぶ自然の基本的な力として重力をとらえる従来の物理学理論とは大きく異なっている。また、「情報」という概念を使って重力について説明しているところも、エントロピック重力理論の特徴である。
( → マイナビニュース )
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以上のことは、すでに知られた情報だ。それを私が簡潔にまとめただけだ。
このあと、私の評価を加えよう。
(1) エントロピック重力理論は、重力を説明できる。この意味で、ニュートン理論や、アインシュタイン理論と、ほぼ同等の価値があると言える。つまり、「間違った理論」ではなく、「正しい理論」であると言える。(少なくとも「トンデモ」なんかではない。)
(2) まったく異なった発想から出た理論が、どちらも同じような結論を出すとしたら、それらの背後には、何らかの深い真実(共通性)が眠っていると想定できる。
(3) 一方で、どちらか一方が「より正確」であるのならば、他方は一方の「近似」であるにすぎないのかもしれない。ちょうど、ニュートン理論が相対論の近似であるにすぎないように。
(4) 本件では、暗黒物質の存在について、エントロピック重力理論の方が正確に記述しているようだ。その意味では、「重力は基本相互作用の力ではない」と見なすエントロピック重力理論の方が正確であるようだ。
(5) しかしながら、エントロピック重力理論でも、重力を「エントロピー原理で熱力学的に説明する」のまではいいが、重力を「物体の位置に関する情報量の変化によって生じるエントロピー的な力である」というふうに「情報量」で説明するのは、いかにも無理がある。つまり、不自然だ。
(6) この不自然さはどういうことかというと、「真実を表層的にとらえているだけだからだ」というふうに解釈できる。比喩的に言えば、ローレンツ変換と相対性原理だ。ローレンツ変換という数式を使うと、いかにも事実をきれいに説明できるのだが、そのようなへんてこりんな数式をいきなり導入するのは、いかにも不自然だ。しかしながら、「相対性原理」という単純な原理を導入すると、そこからローレンツ変換は自動的に導き出される。つまり、ローレンツ変換は、「相対性原理」という真実を表層的に見たものだったのだ。
(7) エントロピック重力理論も、ローレンツ変換と同様に、物事を表層的に見ているだけだ、と思える。それは確かに真実を数式できれいに表現しているのだが、その奥にはより簡単な真実が隠れているはずなのだ。「相対性原理」のような簡単な真実が。われわれはまだそれをつかんでいないだけなのだ。
……以上が、私の解釈である。特に、最後の (6)(7) が、私の独自の解釈だ。
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ここまで読んで、「ふうん。何か物足りないな」と思う人が多いだろう。それもそうだ。「より簡単な真実が隠れているはずだ」と言っておきながら、その「簡単な真実」を示さないのだから、もどかしくなって当然だ。
だから、肝心の話は、このあとだ。
ここで、いきなり核心を示そう。その「簡単な真実」は、実は、すでに示されている。こうだ。
「重力の起源は、超球の密度差である。超球の密度が高いところと、超球の密度が低いところがあると、密度差によって重力が発生する」
これが、超球理論における重力理論だ。
より詳しい話は、下記で。
→ 超球と超ヒモ
これの後半に、重力の説明が記してある。(そこを単独で読んでも、チンプンカンプンなので、最初から順に読む必要がある。)
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結論を言えば、こうなる。
・ 重力を基本相互作用として示す現代物理学の方向性は、正しくない。
・ 重力を熱力学的に説明する新理論は、正しい。
・ ただし、数式的には正しくても、その根源が見えていない。
・ その根源は、超球理論で説明される。根源は、「超球の密度差」だ。
・ 超球理論の原理を数式で表現したものに相当するのが、エントロピック重力理論だろう。(たぶん)
[ 付記 ]
イメージ的には、次のように考えるといい。
・ 熱力学 …… 熱が高いと、体積が増えて、密度が下がる。
・ 超球理論 … 密度差で重力を説明する。
熱を媒介として、どちらも密度差を扱っている。だから、本質的には、この二つは同様のことを扱っていると考えていいだろう。
【 関連サイト 】
関連する話題がある。
→ 真空の複屈折 (マイナビニュース)