東京五輪・パラリンピックの3競技の会場見直し問題は、当初の案どおりで決着した。

 議論を通じて400億円余の経費削減の道が開けたのは、小池百合子東京都知事が問題を提起した成果のひとつといえる。

 一方で、小池氏が推した変更案が通らなかった経緯や理由はあいかわらず不透明なままだ。そして氏は早くも、バレーボール会場となる有明地区を「スポーツ、イベントの街」として整備する考えを表明した。

 総括ぬきで次の花火を打ちあげ、目先をそらすような姿勢はよろしくない。そもそもこうした構想は、招致段階から青写真を描いておくべきものだ。

 氏には、ていねいな説明と対話を通じて都民との信頼関係を築いていくよう求めたい。

 今回の騒ぎは、五輪準備にあたる都、組織委員会、国の三者間の連携の悪さと、当事者意識の欠如を浮かびあがらせた。

 選手が実力を十分に発揮できる環境、観客の収容能力、五輪後の活用策、将来の維持費も含めたコスト――。こうしたさまざまな要素を検討して最適解を探り、積みあげてきていれば、いまになって見直し論が浮上することはなかっただろう。

 その反省をふまえ、態勢を根本から立て直してほしい。

 まずとり組むべきは、組織委が最大で1兆8千億円ほどとする経費の分担問題だ。

 「組織委でまかないきれない分を都が負担し、それでも足りなければ国が支払う」との合意はあるが、詰めた話はできていない。そして組織委の収入はせいぜい5千億円とされる。

 「都と国の負担を注視する」(小池氏)、「なぜ国でなければならないのか」(丸川珠代五輪担当相)と互いを牽制(けんせい)する発言が飛びかい、都以外で開催地となる自治体からは「地元負担のないことが引きうけの前提だった」との声があがる。

 都と国に大きな責任があるのはいうまでもない。ただ他の自治体も一定の出費は避けられないのではないか。会場になることによるイメージ向上、選手や観客との交流など、五輪がもたらす資産を地域振興にどう生かすか、住民・納税者が納得できるアイデアを競ってほしい。

 五輪まで3年半。前年から本番にむけたプレ大会も始まる。関係者が不信とわだかまりを捨て、理念を共有し、しっかり向きあうことが何より必要だ。

 「準備が半年は遅れた」(森喜朗組織委会長)などと、今回の会場見直し問題をひとごとのように論評していては、大会の成功はおぼつかない。