来年度の国の当初予算案で、防衛費は前年度当初から1・4%増の5・1兆円になった。第2次安倍政権発足後の2013年度予算で増額に転じて以来、5年連続の増加である。

 中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル実験など東アジア情勢が不安定なだけに、ある程度の負担は避けられまい。ただ財政難のなかで、防衛費をことさら優先するような予算編成には疑問を禁じ得ない。

 来年度予算案の政策経費の伸び率を分野ごとにみると、高齢化に伴う自然増や少子化対策で1・6%増の社会保障費と、原発事故の賠償関連経費が加わって3・5%増となるエネルギー対策費を除けば、防衛費の伸びが最も大きい。5年続けて1%前後の増加を確保するのも、社会保障費以外には例がなく、優遇ぶりが際立つ。

 防衛費とは対照的に、教育・科学振興費は5・3兆円余と横ばいで、防衛費との差は2千億円余りに縮まる。目玉政策とされた給付型奨学金も小粒なスタートだ。社会保障でも、予算の増加を抑えるため医療と介護で高齢者を中心に負担増を求めており、日々の暮らしに直結する項目で厳しさが目につく。

 防衛費には、14~18年度の中期防衛力整備計画で一定の枠がはめられている。米軍再編経費などを除く費用については、5年間の総額を約24兆円にするため、毎年度の伸びを平均0・8%に抑えるという目安がある。

 それが最近、当初予算ではこの範囲にとどめつつ、補正予算で上積みして目安を超える例が目立ってきた。補正を抜け道に使うのは今に始まったことではないが、防衛費もすっかり「常連」になっている。

 今年度の第3次補正予算案にも1700億円を計上した。高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)などを念頭に置く、弾道ミサイル迎撃態勢の調査研究費も含まれる。仮に日本全土をカバーするTHAADが導入されれば、1兆円規模の支出になるとの指摘もある。

 当初予算関連でも、戦闘機F35Aや輸送機オスプレイ、滞空型無人機グローバルホークなどは複数年で分割払いする「後年度負担」という仕組みで、維持・修理費もかさむため、将来の予算を圧迫していく。大学などに研究費を支給する制度に110億円を計上したのも、学術と防衛の関係で問題をはらむ。

 財政の状況は厳しい。防衛費も聖域とせず、費用対効果を厳しく検証するべきだ。他の分野にしわ寄せするばかりでは、国民の理解は得られない。