今月31日に任期を終える国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は最近になって来年の大統領選挙出馬の考えを少しずつ明らかにしている。潘氏は20日に韓国人特派員や現地在住の韓国人らと会った席で「大韓民国の発展にプラスになるのであれば、この一身を犠牲にしてでも努力する用意がある」「来年は73歳になるが、健康な限り国のために努力したい」などと述べ、大統領選挙への出馬を事実上明言した。これまで国連事務総長が任期を終えると同時に自国の大統領選挙に出馬したケースはない。前の国連事務総長の中ではワルトハイム氏が1986年にオーストリアの大統領になったが、それは退任から5年が過ぎた後だった。
韓国国内の世論調査では、潘氏は次の大統領として常に1位か2位の人気を維持してきた。次期大統領として有力視される人物の中に、国民が心から期待できるような人物が見当たらなかったからだ。ただこのような国民の思いを潘氏が満たせなかった場合、その人気も支持も一気にしぼむ恐れがあるのも間違いない。
事実、潘氏については国民の間で期待と懸念が交錯している。現時点で次の大統領選出馬が有力視される人物の多くは外交経験がない。そのため世界中を自分の庭のように行き来してきた潘氏の経験は非常に特別なものに見える。10年にわたり国連事務総長として米国のオバマ大統領、中国の習近平・国家主席、日本の安倍首相、ロシアのプーチン大統領や世界各国の首脳らと渡り合い、世界各国の問題に取り組んできた潘氏の知識と経験は、今のところ世界では中規模国でなおかつ強大国に囲まれた韓国にとって大いに役立つかもしれない。潘氏が北朝鮮の核問題解決に適任とする声も決して根拠がないわけではない。
一方で潘氏は2007年1月にニューヨークに渡ったが、それから後は韓国の国内問題に関与する機会も、また深く考える時間もほとんどなかったはずだ。韓国国内では社会の二極化、非正規雇用、若年失業など、次の大統領が本格的に取り組まねばならない課題が山積している。政治は問題解決どころかむしろ問題の根源になっている。そのため潘氏がこれまで大統領選に向けて何を準備し、そして何を語るかについて国民の誰もが注目している。
憲法裁判所が朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に対する弾劾を認めた場合、大統領選挙までに残された時間は4カ月しかない可能性が高い。潘氏は帰国するやいなやなぜ大統領選への出馬を決めたのか、大統領になったら何をするのか、国民に詳細に説明しなければならないかもしれない。それほど昨今の状況は、韓国にとっても、潘氏自身にとっても、常軌を逸している。