国内総生産(名目GDP)で世界第4位の経済大国であるドイツは、EU(ヨーロッパ連合)圏の中では最大の経済規模を持つ国です。また、ドイツのメルケル首相はギリシャの財政危機への対処など、EU全体に影響を与える問題に対する取り組みで中心的な役割を果たし、タイム誌が毎年行っている、2015年版「今年の人」に選出されました。
経済と政治の両分野において、世界的な存在感を見せているドイツが、2015年に直面した主要課題の1つが、難民問題です。
これまでの経緯や背景、難民受け入れに対するドイツ国内の反応を見ていきましょう。
難民受け入れ 先進国のドイツ

2011年のシリアにおける内戦勃発をきっかけに、世界にはシリアからの難民が急増しました。その結果、ヨーロッパ各国を中心として、難民の受け入れ問題は、ここ数年の国際社会における緊急の課題となっています。
そんな中、ドイツは2015年以前から難民を大勢受け入れてきました。
国連難民高等弁務官事務所の2014年度報告書によると、ドイツは「フランス、スウェーデン、イタリアを抑え、EU諸国において、最も多くの難民申請を受理している国」です。
2014年に20万人の難民を受け入れたドイツですが、2015年に受け入れた難民の数は遂に100万人を超えました。
欧州に押し寄せる難民の受け入れをメルケル首相が決断した理由
ドイツが2015年に100万人以上の難民を受け入れることになった大きな理由の1つに、メルケル首相の方針転換があります。以前のメルケル首相は、難民をこれまで以上に受け入れることに対して、どちらかといえば消極的な立場を取っていました。
しかし2015年9月に、オーストリアのファイマン首相と共に、ドイツとオーストリア2カ国で、ハンガリーに逃れた数千人のシリア難民を受け入れることを表明したのです。
ベルリン在住の移民問題に関する専門家は決定の背景として、「ドイツは、他のヨーロッパ諸国と比較して、難民受け入れ賛成派の国民が多い」こと、「メルケル内閣で連立を組む最大野党の社民党が、難民の受け入れに積極的な姿勢を示していた」ことを指摘しています。
(VOX:2015年9月11日付)
難民受け入れを評価しているとは言い難いドイツの世論
メルケル首相のシリア難民受け入れ表明から約5カ月が経ちましたが、ドイツ国内における評価は大変、厳しいのが現状です。
ドイツの公共放送ARDは、2016年1月12日~14日に世論調査を行ったところ、約6割のドイツ国民が、「ドイツには現在、難民問題に対処する余裕はない」と考えていることが明らかになりました。
2015年の大晦日に、ドイツ・ケルンで、アラブ人と北アフリカ人の難民ら約1000人が数百人のドイツ人女性を集団暴行する事件が発生したことが、世論の変化に大きく影響を与えました。
更に1月には、メルケル首相が所属する与党、キリスト教民主同盟の連邦議会議員44名が、メルケル首相宛てに、「難民受け入れに寛容な政策の変更を求める書簡」を提出しました。
多くの難民を受け入れる決断をしたドイツですが、その道のりは平坦ではないようです。
<参考記事>
国連難民高等弁務官事務所
