国際・外交 テロ ドイツ
ベルリン「トラック突入」テロの衝撃!政治を揺さぶるクリスマス
犯人はやっぱり難民なのか?
川口 マーン 惠美 プロフィール

そんなわけで現在、政府は犠牲者や遺族との団結を強調し、国民感情を平静に保とうと懸命だ。

そのせいかどうか、国民の間にヒステリックな動きは起こっていない。フランスのように戒厳令を敷くという話も出ない。それどころか、国民は意識的にパニックを避けようとしており、事件の翌日も他のクリスマス市を閉鎖することがなかった。

テロ現場のクリスマス市も22日から再開する予定だ。その冷静さは、福島第一原発の事故の後、ガイガーカウンターやヨードを買いに走ったのと同じ国民だとは思えないほどだ。

〔PHOTO〕gettyimages

日本も「明日は我が身」

おそらくドイツ人は、テロ防止に限界があることがわかっているのではないか。

先日、ベルリンで旅行者として行動したときに気づいたが、すでに今、美術館やテレビ塔、帝国議会などでは、入り口で厳重なチェックが行われている。また、町のめぼしいところには、機関銃を携行した警官がたくさん立っている。しかし一方で、空港や駅、ショッピングモールなどに入るときに検査はない。

ドレスデンでは、クリスマス市にトラックが突っ込めないよう、あわててコンクリートの障壁が並べられたが、クリスマス市はドイツで大小合わせると現在2500ヵ所で立っている。そもそも、何もかもすべてチェックすることなど不可能だ。そんなことをすれば、普通の生活が成り立たなくなる。

 

無差別テロは、数年前まではイラクやアフガニスタンで起こるものだった。それが去年フランスを襲い、今年の夏からはドイツにも及んだ。

ただ、つい最近までドイツ人も、まさかこんなことになるとは思っていなかったのだ。つまり、この波が突然、日本にやってきても不思議はない。

だからこそ日本人も、「明日は我が身」と思って、テロ対策だけはしっかり立てておいたほうが良いと、今、私は強く感じている。

最後に読者の皆様へ:今年も一年ありがとうございました。本稿が今年最後となりますが、暗い話で恐縮です。来年はもう少し平和な年になりますように。そして皆様、良いお年を!