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私の外へ逃げる事は出来ない
ーこんな事はわかっていたーあの執事なら、私をどこまでも追いかけてくれる事を。ーだから試してみたかった。私を見つけられるかどうかをー
きらびやかで豪華絢爛なパーティが行われているこの場を少女は嫌っていた。きつい香水の匂いと、自分を華やかに飾りたてた顔立ちと、派手なドレス。それでもある用事の為に、嫌々ではあったが執事と共に赴いた。ーここから私の姿を消したら何が起こるの?貴方は、何をするの?ー事を執事に任せて、私は夜景の空気を吸うために外に出ようと一人で歩いていた。すると、身なりのいい紳士が近づいてきた。不敵な微笑に、気づかれない様にそっと紳士の話に意識を向けた。
このパーティ会場を離れて、いつの間にか夜景のバルコニーに着いていた。風が身体の芯まで渡って気持ちがいい。男の甘い毒が頭上に降ってくる。ー私と共に遠くへ逃げましょう?ー帽子の中の表情と身体を舐め回すような指の動きは男の考えが丸出しだった。唇が私との顔の距離を縮める。後、一歩という所で男との距離が離れて目の前の人物がさっきまで喋っていた男の姿を消した。執事だった。一瞬で気がついたのはいつも嗅いだ事のある香水の匂いがしたからだ。じっと見上げたら、私の身体を抱きしめてきた。怒りの色を宿した執事の瞳がぶつかる。今度は身体を弄る指が私の意識を奪っていく。それはまるでー自分意外の者を思い出させないようにー耳に残る男の声も消す為に、言葉を囁いた。ー私がいるのに、誘拐されるのがお好きですねー
耳元に激しい水音を奏でる。バルコニーの手すりに身体を押し付けられた。脚が震えた。ーどこに行こうが私は構いません。ですが、もう逃したりしませんよー
男の指を置き換えるように執事の指は腰を撫でたり、下腹部を辿ったりする。再度、教えるように執事は解放を許してくれなかった。
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