【ジュネーブ=原克彦】多額の不良債権を抱えるイタリアの銀行3位モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナは22日、経営健全化のために取り組んでいた増資が失敗に終わったと発表した。自力再建を断念し、近く伊政府に公的支援を要請する見通しだ。
モンテパスキは7月に50億ユーロ(約6100億円)の増資を柱とする経営健全化策を発表。さらに証券化と呼ぶ手法で不良債権をファンドなどに売却することで財務体質を改善する計画だった。
だが同行の22日の声明によると、債務の株式化や公募増資などへの応募は50億ユーロに届かなかった。増資の引き受けで中核的な役割を担うとみられたカタールの政府系ファンドを念頭に、「主要な投資家が関心を示さなかったことが、他の機関投資家にマイナスの影響を与えた」と説明した。
伊政府は同行への支援に備え、200億ユーロの財源を確保済み。23日にも具体的な支援策を決定する。
欧州連合(EU)の欧州委員会は金融問題が加盟国の財政を悪化させるのを防ぐ狙いから、国が民間銀行を救済する際には株主や銀行債保有者が一定の損失を負うことを条件にしている。イタリアには多くの個人が銀行債を持ち、モンテパスキでも約4万人の個人が劣後債を保有する。
イタリアのパドアン経済・財務相はモンテパスキの救済について、できる限り小口投資家を保護すると表明している。今後は投資家保護に税金を使う伊政府の支援策を、欧州委が容認するかどうかが焦点になる。
自社の時価総額を大幅に上回るモンテパスキの大型増資は、当初から実現を疑問視する声があった。今月4日には国民投票で憲法改正案が否決され、賛成を呼びかけたレンツィ前首相が辞任。政局の先行きが不透明になったことも投資家が出資しづらい状況を招いた。
モンテパスキは22日の声明で、健全化計画が頓挫したため、21日まで募集した債務の株式化を撤回すると説明した。契約に従い、再建策をまとめた米JPモルガン・チェースと伊メディオバンカへの手数料を払わないことも明らかにした。
伊銀行は合計で国内総生産(GDP)の約2割に相当する3600億ユーロの不良債権を抱え、同国経済の活性化を阻む要因になっている。ユーロ圏で3番目の経済規模を持つイタリアで金融不安が広がれば世界経済にも悪影響が波及しかねないため、最大案件であるモンテパスキの再建が注目されている。