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「18歳選挙権」と「若者と政治」をめぐる大学生たちの本音

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「18歳選挙権」で若者に焦点はあたったけれど…

原田:「18歳選挙権」の実施が決まったのは昨年の6月半ばだけど、「10代で来年投票できるかもしれない」と決まった時に、どんなことを感じたかを教えてもらえますか?

町田:私はそもそも18歳に選挙権がないことの意味が分からなかった。海外の多くの国で18歳に選挙権がありますし、他の国と日本人の18歳を比較してもそれほど判断能力は変わらないはず。だから、18歳選挙権もあって当然なのにと思っていました。

BLOGOS編集部
松浦:僕も同じように、18歳の判断能力は20代の人と、そんなに変わらないんじゃないかと正直思います。「18歳ぐらいがちょうどいいのかな」というのは、以前から思っていたので、やっと“普通”になったかなと。

塚田:選挙権を得たことに関して、嬉しいとか感無量だっていう印象は正直なかったですね。

ただ、この1年間を通じて、「若者と政治」というイシューがすごい盛り上がってるなと思いました。例えば、政党の間でも給付型奨学金の話が話題になったり、新聞記事でも、若者・学生向けのキャンペーンがたくさん打たれているなと感じました。

原田:18歳選挙権になったことに対して、ネガティブなイメージだった人はいますか?

菅:年齢で選挙の幅を増やすより、「もっとやることあるだろ」と思うんですよね。投票率が高い国では投票が義務だったり、オーストラリアみたいに投票所でBBQやってたり。だから、「そういう工夫もやれよ」って。

今回の投票率も18歳は50%でも、19歳は30数%じゃないですか。なので、「今だけなんじゃないかな?」って僕は思うんですよね。18歳の子は「よっしゃ来た!」って思って選挙に行くけど、20歳を超えた人からすれば、「元々あったし」みたいに感じちゃうでしょうし。だから、年齢がどうこうよりも、今選挙権があるけど選挙に行かない人たちの関心を高めるためにやることがあるんじゃないかなって。

原田:この1年間の間に、高校生や若者をターゲットにした各政党のイベントが開催されたり、多くのメディアで取り上げられたけど、そういう取り組みを通じて「18~19歳含めた若者に様々な形で焦点が当たっている」という感覚はあったかな?

一同:それはありました。

原田:それはポジティブなものだった?

松浦:ポジティブには捉えていましたけど、そもそも18~19歳という年代はそれほど人口が多くない。だから、「そこの世代に焦点を当てたところで別に…」という気持ちもありました。もちろん若い世代に注目が集まることに対して、ポジティブには捉えている部分もあるんですけど、その反面「ん~」っていう微妙な気持ちもあって。

町田:絶対数としては少ないけど、今回の18歳選挙権によって若者がフォーカスされることで、「若者の意見も聞いてもらえそう」な雰囲気になったことは意味があったのかなと思いますね。

BLOGOS編集部
原田:今後も何か聞いてくれそうって感じはある?

一同:・・・。

原田:あれ?

町田:でもやっぱり、おじいちゃん、おばあちゃんが投じた一票に負けちゃうのかなっていう気持ちもあります。

田中:次の選挙の時に、18~19歳のムーブメントみたいなものが、どういう形になっていくのかは気になりますね。

原田:今回、18歳〜19歳を含めた若者に注目が集まる中で、メディアも政治家も様々なアクションを起こしてきたと思うんだけど、その結果、この選挙を経て、みんなにとって政治は身近なものになった?

町田:「身近か」と言われると微妙ですが、興味を持つようにはなりました。いままでも「考えた方がいいよね」とは思っていましたが、実際自分に権利が与えられることによって、「考えなきゃいけないんだな」と投票などを通じて行動に移すようになりました。

塚田:僕は元々政治に関心があったので、今回の選挙を通じて、近づいてきたとか、興味をさらに持ったということは、特にありませんでした。ただ、周囲の様子やメディアなど日本全体で考えれば、政治に関心を持つ人が増えたんだろうなと思いました。

菅:個人的には、それほど変わらなかったんですけど、周りの声が若くなったということは感じました。例えば、「選挙に行こう」みたいなCMでAKBのようなアイドルが「私たちも行けるようになりました」といったメッセージを出していたりとか。

言い方は悪いですけど、いままでは、おじさんばっかりが「頼むから、俺のために選挙行ってくれ」と言っていたのが、「私たちも行こう」みたいになったことは良かったと思います。

もっと気軽に政治について議論できる環境づくりが必要

原田:皆さんは今後数年間もメディア的には「若者」と呼ばれる世代だと思います。これからも選挙は続いていく中で、若者がより政治に興味を持つために必要だと思うことを最後にお聞きしたいと思います。

塚田:今回、若者としては、きっかけをたくさんもらったなと。なので、今後は、「どうしたら自分なりにいい投票ができるか」を考えて、その判断基準や質を高めるための取り組みを新聞などのメディアや国会議員のみなさんがやってくれたら良いと思います。

松浦:現状だと小中高と授業でまったく政治の話が出てこない。それなのに、「いきなり投票しろ」と言われても、判断基準がないから「政治に興味がもてない」「投票に行かない」となってしまう。

なので、子供の頃から、少しでもいいので政治に触れられる仕組みができたら、若いうちから考えるようになって、もっと活発に議論できるようになるんじゃないでしょうか。

町田:私は、「社会がこういう風に変わっていったらいいな」といった政治の話題を、あまり硬いイメージじゃなくて、フランクに友達と話せるようになっていく必要があると思います。身近な友達との会話の中に出てくる話題であれば、ある程度調べたり、情報交換もするでしょう。そうなれば、考える機会も増えて、投票に行く可能性もあがると思います。

菅:この前、ゲームの『逆転裁判』の新シリーズが出た時に、「これと政治がコラボした方が面白いんじゃないか」って話を友達としたんですよね。

最近、汚職を働いた方を、ゲームに登場させてみたり、その人の主張を崩すためには、どういう証拠が必要か、といった要素をシナリオに組み込んだり。そういう政治の世界で起きていることをわかりやすくする仕組みは必要かなと。

田中:メディアを通して見る限り、アメリカの大統領選って、お祭りみたいな感じになってますよね。トランプの集会の映像なんかを見ていると、多くの聴衆が応援のボードを掲げた映像が中継されたりするじゃないですか。日本だとそういうのがないなって。今回を機に、「そもそも、なぜ政治が大切か」というところからスタートし、政治を自分事として捉えて、身近に議論をするムーブメントが作れたらなって思います。普段の生活で、何かしら問題意識を感じる場面はあると思うので。

知識の有無よりも、まずは興味を持つことが大事ではないでしょうか。僕なんかサッカーを全然知らないので、マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティの違いなんてまったく分からない。でも、それと一緒で、僕は政治に関心あるから、自民党と民進党の違いが概ね分かるんですけど、興味のない人には全然分からないと思うんです。実際、友達から「何が違うの?」って聞かれたりするので。

川合:学校では政治の仕組みや制度は教えてくれるけど、現実の政治状況については教えてくれない。そういうことも小・中学校の頃から、授業で組み込まれていたら、もう少し考えやすいのかなと思います。

松浦:確かに衆議院や参議院の定数や任期を教えてもらっても、「で?」って感じで終っちゃうのはあるかもしれない。

原田:政治について、話しやすい雰囲気、ある程度話が出来るようになるための知識をえるきっかけを、様々な切り口で作っていく。そういう環境が、選挙権を持つ前から、もっと身近にあれば、積極的に話もできるし、政治への関心が高まって行く。そういう好循環をつくっていけるといいですね。

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