【ワシントン=吉野直也】トランプ次期米大統領は22日、大統領選で選挙対策本部長を務めたケリーアン・コンウェー氏(49)を大統領顧問に指名した。選挙期間中からテレビ番組に出演し、トランプ氏の見解を擁護。現在もトランプ氏の立場を代弁し、国務長官人事にも影響力を発揮した。トランプ氏を動かす女性としてホワイトハウス入りが取り沙汰されていた。
「私の大統領選勝利で重要な役割を果たした」。トランプ氏はコンウェー氏の起用をこう説明した。「素晴らしいコミュニケーション能力や洞察力を備えている」とたたえた。弁護士のコンウェー氏は共和党の女性支持者を増やした実績のある世論調査専門家としてトランプ氏の選対本部長に就いた。
選挙戦の最後の集会に民主党が伝統的に強いミシガン州を選び、同州で勝ったのもコンウェー氏の独自分析に基づく助言があったといわれる。大統領選勝利後の政権移行チームでは閣僚人事にも口を出した。焦点の国務長官人事で、トランプ氏の意中候補と目された2012年大統領選の共和党候補、ロムニー氏について「トランプ支持者に対する裏切りだ」と公然と反対した。
国務長官は最終的に米石油メジャー最大手エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者に決まった。ロムニー氏以外を訴えたコンウェー氏の主張が受け入れられた。大統領顧問は無任所のポストで、内政から外交まであらゆる政策にかかわることができる。
コンウェー氏はオバマ大統領のジャレット上級顧問のような役割が想定される。オバマ氏とミシェル夫人の結婚前から知るジャレット氏はホワイトハウスでの側近の束ね役だ。オバマ氏はジャレット氏に全幅の信頼を置く。
新政権ではポストにかかわらず、トランプ氏の長女イバンカ氏の夫、クシュナー氏が意思決定に重みを持つ。コンウェー氏は、このクシュナー氏とともに意思決定に参画する見通しだ。
コンウェー氏は選挙戦でトランプ氏に理がないと思われる問題でも徹底的に弁護し、時に失笑を買った。同氏の起用はトランプ氏の「側近政治」「身内主義」の一端を示す。均衡を欠いた政権運営を予感させ、政権内外の火だねとなる恐れもある。