トップ > 社説・春秋 > 記事

もんじゅ失敗の総括が先だ

2016/12/23付
保存
印刷
その他

 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)について政府の原子力関係閣僚会議が廃炉を正式に決めた。同時に、もんじゅに代わる新たな高速炉を開発し、原子力発電所の使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルは堅持するとした。

 決定自体は妥当といえる。日本原子力研究開発機構が運営するもんじゅは1兆円以上を投じたのにほとんど運転できず、ずさんな安全管理も問題になった。運転を再開するとさらに5千億円以上かかる。安全に稼働させるメドが立たない以上、廃炉は当然だ。

 高速炉の研究を続けることにも意義はあろう。日本はエネルギーの9割以上を輸入に頼り、原発依存をすぐにはゼロにできない。今後、新興国で原発が増えればウランを安定的に確保できるか不透明だ。高速炉はウランを有効活用できる可能性があり、その選択肢をいま放棄するのは得策でない。

 だが、研究を続けるうえでもんじゅの轍(てつ)を踏んではならない。政府は2018年までに新たな工程表をつくるとした。その前に、もんじゅがなぜ失敗したのか、徹底した検証が不可欠だ。

 もんじゅは開発当初から、ウランを燃やした以上に増やせる「夢の原子炉」とされてきた。これが大義名分となり、経済性や誰が商業炉を建設するかが二の次になった。建設を推進してきた文部科学省が、開発体制や進め方のどこに問題があったかをきちんと洗い出し、総括すべきだ。

 新たな高速炉も建設ありきではなく、技術の裏づけやコストを見極めることが欠かせない。原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムは国内外に48トンたまっており、国際社会の懸念も強い。プルトニウムを燃やすだけの炉を研究するのも選択肢だろう。

 もんじゅの廃炉をめぐっては福井県の西川一誠知事らが「説明が不十分だ」と反発している。地域の理解がなければ核燃料サイクルは維持できない。政府は原子力の将来展望を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。

社説をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

保存
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワード

もんじゅ核燃料サイクル日本原子力研究開発機構西川一誠政府福井県

【PR】

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報