費用対効果の意識を徹底して歳出を抑制・削減する。税制改革を実行し、増税する。経済成長によって税収を増やす。

 借金まみれの財政を立て直すには、この三つを怠らず、地道に取り組んでいくしかない。

 だが、安倍政権は成長による税収増によりかかった財政運営を続けている。それで2020年度に基礎的財政収支(PB)を黒字化する再建目標を達成できるのか。政府が決めた予算案を見ると、不安と疑問が募る。

 まずは歳出である。

 国の来年度の一般会計当初予算案は総額97兆4500億円に達し、当初予算としては5年続けて過去最大を更新する。少子高齢化に伴う社会保障費の増加が大きいが、全ての分野を対象に、より少ない予算で政策効果を高める検討を尽くしたとはとても言えまい。

 財源不足を埋める新規国債の発行額が前年度からわずかに減るため、財務省は「経済再生と財政健全化の両立を実現する予算」とうたう。だが、予算全体の3分の1超を新規国債に頼る現実を忘れてはならない。

 補正予算を組んで、災害復旧など緊急事業に限らず歳出を幅広く積み増す作業は、もはや恒例行事だ。今年度の補正は3次にわたり、当初予算から歳出は3兆円余、新規国債の発行も4兆円余り増える。毎年度の当初予算同士を比べて増減を論じることがむなしくなる。

 補正予算に関しては、3次補正で税収見込みを1・7兆円減らすことになった点にも注目するべきだろう。

 景気はさえない状況が続くとは言え、わずかながらもプラス成長を続けており、経済が大きく落ち込んだわけではない。それでも輸出型製造業が為替相場の変動に直撃され、法人税収が見込みを下回ることになった。それに象徴される通り、不安定なのが税収である。

 安倍政権は、消費増税を2度にわたって延期するなど、本格的な負担増を避け続けている。一方で法人税は減税し、企業を元気にすれば税収も増えて財政再建が進むとの立場をとる。

 しかし、財政再建を着実に進める観点からは、それが甘い「期待」にすぎないことを、今回の予算が示している。

 政府の夏時点の試算では、19年10月に10%への消費増税を実施し、毎年度の実質成長率を2%程度と高めに見込んでも、20年度のPBは5兆円超の赤字が残る。黒字化は高い目標だ。

 それでも旗は降ろさないと、首相は繰り返す。どうやって達成するのか、語る責任がある。