資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、米国株の先行きを占った。
極端な割高とは言えないとしながら、調整の可能性もあると語り、トランプ政権が世界恐慌直前のクーリッジ政権の二の舞になることを懸念した。
シラー教授はトランプ・ラリーに乗って20,000を目指すニューヨーク・ダウ平均についてCNBCで尋ねられた。
シラー教授の答は率直。
米国株市場が下がるかどうかはわからないと言う。
教授が開発したCAPEでも異常値とは言い切れないからだ。
「CAPEレシオが28倍でも飛び抜けて高いというわけではない。
過去ここから上昇したこともある。」
教授はこう慎重な見方を示し、現状の相場観を語った:
- ダウ平均20,000には手ごわい抵抗線であり、今はここに長い間つかまっている。
- 市場が調整するかどうかわからないが、可能性は大いにある。
急激なトランプ・ラリーの進展に、さすがにシラー教授も過熱感を否定しきれない。
資産価格の上下について断定的な表現を用いるのを避ける教授だが、「今から買いに入ってくる人がいるのはちょっとへんな気がする」と漏らした。
教授は大きく上げるとも、大きく下げるとも言いたがらない。
「調整はあっても大きくなく、小幅だろう」と述べる一方、20,000の抵抗線を超えても多く望めるとは限らないという。
代替わりの抵抗線は複雑な心理によるものとし、過去の例を紹介した。
「いったん抵抗線を超えれば上昇していくとみんな考えるが、歴史はそうなっていない。
ダウが1,000を超えたのは1972年だが、1,100を超えるのにはそこから10年かかった。」
わずか1割の上昇に10年以上の年月がかかっている。
教授は、市場のモメンタムといったあやふやな話で投資すべきではないとし
「いつでも言えることは、バリュー投資が重要だということ。」
と語った。
シラー教授は、トランプ政権が景気を刺激することに成功する可能性を示唆している。
次期大統領は不動産屋であり、大きな家に住む期待を掻き立てるだろうという。
「私たち(アメリカ人)はもっと質素に暮らしていた。
しかし、今人々は考えを変えた:
『これじゃうまく行かない。
大きく行かなきゃダメなんだ。』」
シラー教授によれば、トランプ次期大統領はその例を示したのだという。
住宅需要が刺激されれば、経済には間違いなくプラスだ。
しかし、シラー教授は、そうした前向きな成果が後の反動を大きくするリスクにも心配を寄せている。
教授はカルビン・クーリッジ大統領(1923年8月3日–1929年3月4日)の二の舞を恐れる。
「クーリッジの繁栄のようになるかもしれない。
しばらくはうまくいくが、ひどい終わり方をする。」