日々放送・配信あるいは劇場公開されるアニメーション作品はアニメーション制作会社なくしては生まれない。スタジオジブリをはじめサンライズ、Production I.G、スタジオ地図、京都アニメーションなど、現在では国内に622社が存在し(※アニメ産業レポート2016参照/日本動画協会調べ)、そのほとんどは日本の資本で運営されている。海外となるとディズニーやドリームワークス、あるいはワーナーブラザーズといった北米の大手スタジオはよく知られているが、中国のアニメーション制作会社に詳しい人間は非常に少ないのではないだろうか。
吉祥寺にスタジオを構え、これからも継続的に日本でアニメーション作品の放送を行っていくという「絵梦」。その代表取締役社長であり、自身も監督などを手がける李豪凌氏に、「そもそも絵梦とは?」という基本的な質問から、日本でどのような制作会社になることを目指しているのかなどをうかがった。
[取材・構成:細川洋平]
絵梦株式会社 | 絵夢(エモン)株式会社
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■ネット配信参入で急成長した絵梦
――はじめに絵梦とはどういうスタジオなのかうかがえますでしょうか。
李豪凌(以下、李)
ひとことで言えばアニメーション制作会社です。2013年までは中国のテレビ放送を中心に制作してきて、2013年末にネット配信が爆発的に発展すると、絵梦もショートアニメでネット配信に乗りだしました。ショートアニメというのはタブレットなどで手軽に観られるアニメとしてちょうどよかった。インターネット環境が整った今はより長い尺の作品も手がけています。
中国は日本以上に放送倫理規定が厳しい国です。放送局の方針と視聴者のニーズに差が出て来てしまいます。そこでネットが発達し、実際は多くの視聴者がタブレットや移動端末で配信番組を楽しんでいます。
――ネットは相性がよかった。
李
そうです。ネットは投資家が運営している以上、自由ですから観客の見たいものに純粋に投資が行われます。実際ネットアニメがはじまってから、中国は新たなアニメーション文化がはじまりました。絵梦はそのはじまるタイミングで参入でき、さまざまな先手を打った結果、多くの投資家に重要視される会社になりました。
絵梦としては今後、いい作品をどう生み出していくのか、どうやってみなさんに知っていただくのかをとにかく考えていきたいです。中国は手描きの2Dアニメが主流ではありますが、一時期3Dにこぞって傾倒したため2Dアニメの技術が少し遅れているんです。ですから日本や韓国の技術を学ぶため、絵梦は2015年に韓国へ進出し、次に日本へ来ました。ゆくゆくは中国と日本の関係を密にして、日本の優れた物語やアニメーターを中国にも紹介したいと考えています。大まかな絵梦の歩みは以上です。
――李社長ご自身はどういった経緯でアニメに興味を持たれたのでしょうか。
李
中学生くらいの時から『スラムダンク』など観ており元々アニメは好きだったのですが、大きなきっかけは大学生の時に訪れました。テレビアニメ『最終兵器彼女』を見て、非常にショックを受けたんです。悲しい物語でしたが、自分にとってインパクトが大き過ぎてその後一ヶ月くらい沈んでしまいました(笑)。そこで、アニメ作品というのは誰かに大きなインパクトを与えたり、気持ちや世界観をガラリと変える力を持っているんだと実感したんです。アニメーションを作るということは有意義で価値のある仕事なんだと思いました。
――まさにガラリと変わったんですね。
李
ええ。それで大学では建築を学んでいたのですが、アニメ業界に身を投じました。最初は上海にあるテレビ局に行き、やがてテレビ放送向けのアニメ監督をするようになりました。中国のテレビ局はエリア毎にありますから、上海エリアに向けて放送していました。その後、絵梦に移ったというわけです。