東京カメラ部 10 選に選ばれた人気フォトグラファーたちの撮影、現像テクニックとは
米国カリフォルニア州出身、東京都在住。
街の雰囲気を表現したいという気持ちとともに、2011 年に一眼レフを購入したのがきっかけで写真撮影を始めた。その後、日本のお祭りに触れたことでお祭りの喜びを表現したいという気持ちになり、継続的お祭りを撮影するようになった。
見てくれる人が感激を受け、それで快適な瞬間を味わってもらえたら幸せです。
写真歴は 5 年ほど。2013 年に中目黒のお祭りのポスターを見て、踊っている人の表情に魅了されて以来、お祭りの写真を撮るようになりました。風景写真を撮りに行くこともありますが、今はお祭りとストリート スナップを中心に撮っています。
カメラについてちょっと話をすると、私はほとんどズームレンズを使いません。それは単焦点レンズの性格が好きだからです。背景がボケるというのもありますが、使いこなしていくと、ベストな表現が見つかる。それを探すのも楽しい。だから、画角の違うカメラを複数持つこともあります。
写真を撮る時、カメラの設定に左右されるという『初心者の罠』に私も最初の一年は、はまりました。絞りは、その他設定は、どうしたらいいのかなど。ですがミスを繰り返し、それを見直すことで解決できました。撮影に入ったら、もうそういうことは考えない。それ以来、今回紹介しているような作品はほぼ 100%、シャッタースピード優先で撮っています。事前に撮影場所を回り、ISO のレンジを決める。そしていい場所を見つけたら、そこに被写体が来るのを待つだけですね。
これは、上野美術館のそばの公園で撮った写真です。ちょうど雨が止んで、光が射し込んでいるような状況です。顔に光が当たり、明るくなるように意識して撮っています。自然なシーンを撮るために、カメラは腰の位置で構え、背面の液晶ディスプレイを見ながら撮っています。
このような写真を撮る時、私のスタイルは、とにかく待つことなんです。光の射し方や建物、道路などを意識して、いい場所があったら待つ。そこに被写体が自然体で来るのを待って撮る。
写真を上達させるためには、とにかくミスすることだと思います。私は本格的に撮るようになって 5年ですが、すでに 10 万枚以上撮っています。そして、その写真を捨てずに全部持っていて、今でも見返して、もっと強いイメージを持って撮るべきだと、反省することがあります。そして、それが上達の方法だと思っています。
この数年夢中になっているのが、お祭りの写真撮影です。運営している NPO 団体などとつながり、撮影許可をもらって撮ることも増えています。お祭りの中で人物写真を撮るために意識しているのは、どういう写真を撮るか事前に決めておく、ということです。特に大切なのは表情です。昔はあまり考えずに撮っていましたが、それではいい写真にならない。どういう表情を表現したいのかを考えて、それを構図につなげていく。
たとえばこれは、お祭りの会場に早めに着き、準備しているところで撮りました。女の子が大人のお姉さんたちの輪に入って、一緒に踊りたがっていたのですが、「まだ 10 年早いよ」なんて言われていて、ちょっと悲しそうにしているところに声をかけて撮りました。少女の切ない気持ちと無邪気さ。撮る前のそんなストーリーが写っている気がします。
またこの写真も、別のお祭りですが準備中のショットです。これは、日が落ちる直前の空の青さと、子どもたちの黄色いハッピの色を揃えて撮ることをイメージしました。ただ子どもの目線でカメラを構えてしまうと、子どもたちの自然な表情が撮れないので、腰の位置にカメラをセットして、ファインダーを見ずに撮っています。それにより子どもたちのいつもと違う不安とお祭りの高揚が入り交じった、ちょっと不思議な表情が撮れました。
お祭りの写真は一瞬が大切なので、連写で撮ることが多いです。なので撮影枚数は、1 週間で 1 万枚を超えることも少なくありません。ただし、その中から現像するのは 3 ~ 400 枚程度になります。写真を見て、その写真に写っている人の表情を、どういうふうに表現したいか考えるのです。そこで強い気持ちがわかなかったら、その写真は現像しません。
昔は特に考えずに現像をスタートしていました。すると彩度を上げてもいい気がするし、落としてもいい気がする。最終的なイメージがないので、選べなくなってしまうのです。だから最初のころは、現像に 2 時間も 3 時間もかかっていました。大切なのは、先にどういう表現をしたいか決めておくことだと気が付きました。
お祭りの撮影は、さまざまな色の光源が混在していたり、そもそも暗いなど、条件がシビアなので RAW で撮ることが求められます。現像で気を付けることは、ホワイトバランスの調整と、影の部分を明るくしたりハイライト部分のディテールを起こす、といった作業が中心ですね。最近の現像ツールは簡単なので、2 週間あればそれなりに使えるようになりますから、作業自体は難しくないと思います。
写真を撮る上で構図を決めるポイントとして意識しているのは、被写体の目と光、そして (背景などが織りなす) 線です。たとえばこちらの写真は、この子がしっかりと自信を持って踊っているのが表情でわかります。目線はしっかりとお客さんの方を向き、指先もぴしっと伸びている。こんな小さい子なのに、こんなに自信を持って演じている、その姿をぜひ収めたいと思って撮影しました。
その時に考えたのが、後ろにいる大人を先導している、そんな構図にしようということです。また道路で踊っていることがわかる画角で撮るため、35 mm を使用しました。完成時の画のイメージが決まっていたので、あらかじめ会場を回り、周辺のビルの感じや道路、そしてライトの位置などをチェックし撮影場所を決め、この場所に来るのを待って撮っています。
またこの写真の女の子は、すごく自然な表情が魅力でした。この子を見た時に「撮りたい」と思ってフォローして、ベストな位置を探しました。しばらくすると、こちらに気付いてくれた。そこで後のグループをいれるような構図を狙って撮りました。
この写真では顔がしっかりと明るくなるように、顔に写真を見る人の目線が行くように、意識しています。光が目と指に当たり、見ている人が自然にそこに目がいくように考えています。
この写真は鮮やかに見えますが、実は彩度は低めにしてあります。というのも、現像時にホワイトバランスやコントラストを調整すると、それだけで色がしっかり出るのです。その状態で彩度をいじると、今度は肌の色がおかしくなってしまう。人物写真にとって肌の色は最も大切なもの。肌の色がおかしくならないように意識することが大切です。
古いアメリカのカメラマン、アンセル・アダムスの名言のひとつに「コンセプトの悪い写真は、ピントがいいと余計にコンセプトの悪さが明確になってしまう」というものがあります。
技術があって、しっかり撮れたとしてもイメージが明確に出ないと、それは現像したい写真になりません。カメラの機能や設定、技術は大切ですが、どういう思いで被写体を表現したいのか、が大切だと考えています。
私の写真保存環境は、合計 18 TB の HDD と、それらをバックアップするための NAS (ネットワーク HDD) を使っています。あとは写真をアップロードするサービスや自分の Web サイトですね。
OneDrive は自分の PC にもともとインストールされていました。
今回初めて、OneDrive を意識して使ってみたのですが、エクスプローラーで写真をドラッグアンドドロップするだけで写真をアップロードできるなど、自然に使えたのが好印象でした。また、知人に写真を送る時に OneDrive の共有リンクを送ったのですが、みんなすんなり見られたみたいで。容量重すぎて見にくいかな? と心配していたので、安心しました。OneDrive だと、だれにでも簡単にシェアできますね。
最初は、他のクラウド ストレージ サービスのように特別なアプリをインストールしたり、それを活用する手間があるのかなと思っていました。しかし、OneDrive はそれがなく、ローカルの HDD と同じように使えました。OS と連携しているのは非常に便利ですね。
今後、Office で使える OneDrive で容量制限がなくなったら、写真容量が多いので NAS をなくして、すべて OneDrive にバックアップしたいですね。
OneDrive へ画像を保存・共有する方法はこちら
東京カメラ部が Facebook ページにてシェアした写真の中で、各カテゴリー内でクチコミ度*1が高かった写真とその写真を撮影された方です。
2014 年は 2 億人*2を超える人々が総計 22 万作品*3の中から選んだ 10 作品・10 名となっています。