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北欧の"幸せ"テーマにGLOBEイベント③

詳報その3)ワーク・ライフ・バランス


 12月2日に東京都内で開かれたトークイベント「世界一幸せ?北欧社会のリアルを読み解く」(GLOBE編集部と株式会社KADOKAWA、フィンランド大使館共催)の詳細を、テーマごとに3回にわたってお伝えします。GLOBEに世界の食と文化についてのコラムを連載しているデンマーク在住英国人ジャーナリストのマイケル・ブースさんと、駐日フィンランド大使のユッカ・シウコサーリさん、朝日新聞の渡辺雅隆社長の3人がパネリストとして語り合いました。




最終回は、ワーク・ライフ・バランスや男女平等についてです。


(左から)司会の後藤絵里・GLOBE副編集長、渡辺雅隆・朝日新聞社長、マイケル・ブースさん、ユッカ・シウコサーリ駐日フィンランド大使


―司会の後藤絵里・GLOBE副編集長

男女の働き方は、子育てをしながら記者をしている私が最も関心のある分野です。渡辺さん、朝日新聞ではどのくらい女性が働いていて、育児休暇を取る男性社員はどれくらいいるのでしょうか。


―渡辺

みなさんの頭の中にある新聞社は、男ばっかりいて、たばこの煙がもうもうしていて、がさつで、みたいなことを思い浮かべると思うのですけど、今はそういったことはほとんどなくなっています。


女性の割合は今、全体でいうとまだ17%くらい。ただ、この10年くらいでは新入社員の3割から4割は女性です。直近の入社では33%が女性でした。社内の空気も相当変わってきて、喫煙率も恐らく10%台ですし、たばこを吸う場所は東京本社には2カ所しかないので、そこが大変なことになっているという状況です。昔の新聞社の印象とは相当変わったと思います。


もう一つ、女性が働くとか、男性が育児をするとか、という働き方改革については、当然のことながら新聞社も前向きに取り組まなければいけない。社説なんかで「こうあるべし」と書いているのですから、自分たちがそれをやらないで、こうですということもなかなか言えないわけで、一生懸命やっています。


男性も育休を随分取るようになってきています。そうは言っても、まだ年間10人くらいですけれど。最近はどんどん増えてきています。実際に育休をとった経験を記事にして書いている記者もいます。今年の夏前くらいから、月に1回くらい、「イクメンをやってみた」みたいなタイトルでやっています。制度的にはしっかりしてきたが、実際に取れるかどうかは別問題なので、それが課題かなと思います。


―後藤

社会に向けてその取り組みを広げていくことも考えているのですか。

渡辺雅隆・朝日新聞社長


―渡辺

うちの会社だけがちゃんとやっていれば良いという話ではなくて、日本がフィンランドのレベルまで一足飛びに行くのは難しくても、誰かがやっていかなくてはなりません。会社の中でいえば、経営側がしっかりメッセージを出すことが大事だと思っています。


―後藤

朝日新聞社の女性管理職はどのくらいですか。


―渡辺

先ほど「今、17%が女性です」と申し上げました。女性管理職の割合は実はまだ8%しかありません。管理職年代に入っている社員における女性の割合は12、3%ありますので、遅れているわけですね。ですから今、数値目標を掲げていまして、2020年段階での管理職年代の女性の割合は恐らく13%くらいになると思いますが、そこをまず目標にします。その後、2030年にはその割合が25%になりますので、その段階で女性管理職を25%まで持ち上げることを目標にしてやっています。


―後藤

シウコサーリ大使。今、私たちは「1割レベル」の話をしているのですが、フィンランドでは女性の進出はどのくらいまで進んでいますか。


―シウコサーリ

外務省という組織の中での女性の割合についてお話をさせて頂きます。外務省では75%のスタッフが女性になっておりまして、4分の3が女性ですね。事務的な仕事や秘書的な仕事はもちろん女性が多いのですが、外交関係の職務に関しても、男性は少数派です。世界中のフィンランド大使の46%が女性になっています。これは昨年度末の数字です。毎年、採用されるキャリアの方も女性が非常に多いので、私もそろそろ役職が危ないなと考えております。

ユッカ・シウコサーリ大使


女性が仕事に就く期間も長くなっています。過去10年~15年を見ますと、部長級の役職にある女性の数は非常に増えています。わが国では、「割り当て」と言いますか、女性割合の目標を導入しておりません。高い教育を女性の方に受けて頂いて、そしてその能力を発揮するより良いチャンスを用意して、自然な形でどんどん出て行って頂くことが重要だと考えています。ただしノルウェーでは、取締役の何パーセントが女性でなければならないという割当制度があり、50%となっています


―後藤

マイケルさんの本にはフィンランドには専業主婦はいないと書かれていて、私はのけぞったのですが、どうしたらワーク・ライフ・バランスを実現できるでしょうか。何が必要なのでしょうか。


―シウコサーリ

とても難しい問題で簡単にはお答えできないのですが、一つ言えることは、両親が働いていても、子どもたちに十分な育児が出来るようなシステムが必要だということと、両親が同時に働いている場合でも、うまく機能できるような家事の分担が必要だということです。子どもたちが全くケアをされずに家に残されてしまいますと、これから20年、30年経つと情緒的な問題が出てくると思います。こういったポイントも考慮する必要があると思います。


―後藤

元祖「イクメン」のブースさん、取材旅行にもできる限り家族を帯同されて、特にお子さんにも世界を見せる努力をされていると思いますけど、男女平等にコメント頂けますか。


―ブース

私は常に在宅で仕事ができますし、世界中に子どもたちを連れて旅をすることができるので、非常にラッキーな身分だと思っています。先ほど大使がおっしゃったように、一番重要なのは皆さんが支払えるレベルで、かつ質の高い育児制度です。それがあれば、女性が働きたいと思った場合にはワークコースの中にどんどん入っていけると思います。

マイケル・ブースさん


うわさによると、日本の女性は外で働くということにそれほど積極的に考えていないのではないかと。後藤さんは例外ではないかという風にも考えます。


―渡辺

色んな女性社員と話をしていますが、「働き続けたい」という思いはみんなすごく強いです。当然のことながら。しかし「保育園落ちた日本死ね?」ではないですけど、何かあったときにサポートする態勢が十分じゃない。会社は制度としては持っていても、それを使ったとして子どもをどうするのか。休むことはできたとしても、その間、その後、どうするのか。育児をしている間キャリアが止まってしまうという不安感はあると思います。ですからその不安感を感じないで、空白になってしまうかもしれないキャリアをどういう形で埋めていくのか、ということを今考えていかなくてはならないと思っています。

イベントが終わり、記念撮影


詳報その1 北欧と日本の違いについて

詳報その2 新聞と教育

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