読んで聞く濱口桂一郎の雇用論 第1幕 読む ちくま新書発行 濱口圭一郎著 日本の雇用と中高年 238ページ 労働問題唯一絶対の答えは「長く働き長く生きること」 序… 欧米雇用問題→若者の失業滞留、日本→人件費高い中高年廃出 欧米の雇用システム=ジョブ型=まず職、仕事があり、それにふさわしいスキル人材採用 日本の雇用システム=メンバーシップ型=会社にふさわしいと思われる新卒一括採用 損得の問題点…スキルなくても新卒採用された幸運児対スキルあっても不況下新卒からこぼれ入口が閉ざされたままの不運児 解決への考察…雇用システムは教育システム、社会保障システムと密接な連動:相互依存がある、社会構造全体への目配りが肝心。例えば国家の基本機能たる現役世代への社会保障を企業に任せていたことなどいきなり変えられない。 第1章 人口高齢化は先進世界の共通潮流である ともに雇用と社会保障全面に対応していかなければならない 2006年OECD報告書→その答えは長く生き、長く働くことである 高齢者を早く引退させ現役世代の負担を多くするのは真逆政策である 自分が稼いだお金で自分の生活を賄うのである 整理解雇の4条件@緊迫の必要性A回避努力B説明努力C人選合理性 日本型雇用システムでの整理解雇の位置づけ= 我国の終身雇用が原則、雇用が永続することで人生設計、解雇はその生活の手段を奪い、意に反し不利な労働条件での転職による人生計画を狂わすのせで企業経営上の必要性があろうとも一定の制約を課す 一見厳しいようでこれは物事の半分→努力した上での整理解雇には人選さえかなり自由度を認めている 欧米では解雇の先任権セニョリフィが実定法とか厳格に適用されている =公平な解雇順とは後から来た者が先になる、前からいた者は後になる 日本では年功序列どころか反セニョリフィであり、長期勤続の中高年ほど解雇対象になる、裁判所もそれを認める。…年齢45歳以上には合理性を有するものというべき… 第2章 1954年 インフレで機能停止し、老齢年金受給者本格化迎え、厚生年金制度の再建のため法改正した 段階的とは言え男子60歳支給に。労使は反対だった、それまで男女平等だったがわざわざ差別化、改正理由は寿命が延びたこと 男子3年ごと1歳引き上げた1974年ついに60歳に到達 1941年労働者年金法では55歳支給開始(養老年金)当時おおむね55歳定年だった 1946年日清紡が男子55歳女子50歳定年制導入 各企業も1940年代後半に定年制導入、1986年高齢者雇用安定法60歳下回らぬ努力要請、1994年義務化1998年全面施行 年金の支給開始年齢と退職年齢は、老後生活の所得保障という観点からは密接な関係がある 60歳定年延長も厚生年金の支給開始年齢引き上げを追いかけたもの 65歳支給引き上げは当然雇用確保が政策課題になる 1985年65歳支給開始に、→附則で特別措置で60歳支給のまま→1989年段階的に65歳へ改正→65歳までの雇用確保ないため猛反対あり→厚生省対労働省不調→1990年努力義務改正→1994年反省から年金雇用調整され65歳引き上げと65歳継続雇用努力義務 2012年継続雇用義務化 →長く生き長く働く世界的大原則 しかし年金に尻を叩かれ改正したともいえる 第3章 2007年6月政治家主導による「雇用対策法」に採用時の年齢制限禁止規定が成立。 政治主導の経過 2006年12月 厚生労働省労政審建議=年長フリーターの雇用促進の為募集・採用のあり方を見直すこと重要…事業主に努力義務として新卒予定者の募集時には出来るだけ年齢制限しないよう…との微温的内容建議。 2007年1月自民党、求人の年齢制限禁止法案、規制強化へ調整 安倍首相の再チャレンジ政策の一環。募集採用に当たっては年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないとの努力規程から義務規定に。 利害関係者の労使当事者では思い切った政策を打ち出しにくいが、政治主導により理念的政策が推進しうる稀有の例であった。 新たな時代潮流を敏感に反映し生きた政策を実施するには政治家の役目は大きい。 第4章 高すぎる中高年齢層の賃金水準を合理的な装いで引き下げる手段としての成果給導入 欧米の成果給は職務(ジョブ)が明確に存在している 職務ごとに期待される成果がどの程度達成されたか査定し個別賃金が決定される 日本は職能資格を職務級に掏りなおしたものに過ぎず、査定の裁量幅の拡大に過ぎなかった バブル期入社組の人件費抑制が成果給導入の契機 無能なトップとそれに群がる無能管理職群→社内の士気の低下 第5章 追い出し部屋の意義は…貴方に適した職務はないのでここに=日本的メンバーシップ雇用型の本質 欧米ジョブ型からみると職務記述書にはなんと書かれているのか、まさにたわごと→職務の定めのない雇用契約が日本型雇用の特質 無期雇用、フルタイム、直接雇用、無限定社員である、職務、勤務地、労働時間を限定させるのがジョブ型→中高年齢層の救済策でもある=仕事があるのに、こなしてきているのに解雇は雇用契約上ありえない(仕事がなくなったなら解雇は正等になる もう1つの日本的雇用システム特徴→企業単にの生活保障システム=現役労働者の生活保障は全て企業内で解決、公的社会保障が出る幕でない フランス児童手当=第二子は賃金の22%加給、第三子は37%加給 公的制度が支える 単身と子供5人では70%もの可処分所得格差がある 欧米では教育費、養育費、住宅費を公的制度が支える、日本では賃金で支える=すなわち年功賃金が止められない 児童手当は第5の社会保険と言われた、しかし厳しい財政上の要請で、養育費の社会負担という考え方がなじみにくく、児童手当の意義と目的に疑問が付され廃止論さえ出てきた、少子化対策でようやく復活、介護保険の誕生で第5の社会保険は奪われた、教育費、養育費など子供にお金がかかる時期を公的に支援するなどの発想はなくなった、社会全体で見ていくという正当性が子供手当がバラマキとされた 第2幕 聞く 平成28年1月18日(月)横浜ベイホテル東急 神奈川SR経営労務センター主催新春セミナー「日本の雇用と労働法政策の課題について」 講師 濱口圭一郎氏 1、ジョブ型でなくメンバーシップ型の我が国雇用システムは改革を必要とする 新卒一括採用で入社。仕事ではなく会社に入った。 仕事がなくても配転可能な限り解雇は正当とされない、一方残業拒否、配点拒否は解雇の正当な理由になる。実定法規でなく労使慣行が判決法理として確立している不思議 欧米ジョブ型労働者に比較しわが国では劣悪待遇の非正規労働者が増大 このようなシステム改革を論ずるべきであり、規制改革を論ずると話が歪む・ 2、労働市場の流動化が進んでいるがジョブ型化なき市場主義化が進んでいる。 3、規制改革会議=労働時間の量的上限規制論、休日休暇強制取得論、解雇金銭解決論 4、産業競争力会議=年収1千万円以上者の時間でなく成果で評価制度論 5、国家戦略特区ワーキンググループ=有期特例法案 6、解雇規制の誤解→解雇は出来るのが原則だが無限定契約だから配転可能な限り解雇非正当に。システム問題。解雇規制を設ければ例外は明確化する(解雇出来る) 労働相談の相場はあっせん解決金17万円。裁判所の労働審判は相場100万円。 7、ジョブ型正社員の誤解→当該職務の縮小が解雇の正当な理由になるだけ。 8、労働時間規制の誤解→日本の労働時間規制は世界一甘い。36協定さえあれば事実上無限に許される。従て未だにILO条約を批准できない。過労死も法違反ではない。厳しいのは残業代規制。37条は賃金規制であり労働規制ではない。25%増しの支払いは厳しい。時給4,000円労働者は1時間5,000円となる。 9、ホワイトカラーエグゼンプションはワークライフバランスではない。只の残業代規制の適用除外であり、虚構の理屈をつけただけ。月100時間上限とすべき。 第3幕 読む 岩波新書発行 濱口桂一郎著「新しい労働社会」212ページ 序章 職務ではなくメンバーシップ雇用の日本的特質=長期雇用、年功賃金、企業別組合はすべて職務のない雇用形態からのコロラリー論理的帰結として導かれる 民法623条には雇用契約は労働に従事すると定義されている。どういう労働かは問われていない。 契約とはどういう労働かを明確にしなければ契約にはならないのだが… 特定の業務ジョブを定め、そのジョブに義務を負い権利を持つのだが… 失業とはジョブを失う、就職はジョブを得るであるのに、 必要に応じ使用者の命令で決まってくる事実 採用の権限は現場になく人事担当者にある驚くべき事実 第1章 名ばかり管理職問題=管理監督者は労働時間規制も残業代もない規定に根源的課題 店長一人管理職、他は非正規パターン→利益代表メカニズムから排除出来ない流れ 月60時間超えは割増5割と長時間労働推進法案が…2008年12月成立 労働時間規制という本丸は未だ土俵にも上がってこない EU=週48時間上限(時間外含め!)それ以上は許されない 一日連続11時間の休息も求められている。 脳と心臓疾患の医学的限度は睡眠6時間か5時間か→5時間未満だと圧倒的に疾患が増加するリスクは証明されている。 最低一日連続11時間休息の法規制整備が望まれる。 第2章 有期契約から無期契約への道→戦前の判例、採用時臨時工でも実質的に本工に転化しているとして解雇手当金支給を命じた例や内務省通達もその趣旨ある。現行21条但し書き予告の除外の例外即ち有期契約も更新重なると実質無期と取り扱う考え方が戦前にもあった ※ 一定の条件を満たす有期契約は期間の定めなき契約とする方向性を… ※ 一定期間超えた有期契約の雇い止めには金銭支払い義務化を… 第3章 欧米福祉国家とは、教育、子育て、住宅などの分野も社会的再配分がなされている 日本の場合年金医療の社会保障だけでそれ以外は企業に負担させてきている 生活給制度がそれを可能ならしめてきた。一番メリット感じたのは政府。 そこから排除された非正規労働者の増加が少子化を生んだ 問題 労働してない扶養家族の生計費は誰が面倒見るべきなのか 企業か、労働者本人か、政府化? フランスの家族手当は@個別企業からA同業界全体で見るへ行きB少子化対策として普遍的法制化 我国=個別企業単位で負担、扶養手当、年功賃金、昇給、賞与 1971年児童手当法成立 所得倍増計画で既に児童手当構想あり 日本的慣行がもてはやされる中児童手当は日陰者扱いだった。 労務提供の代償と生計費補償との狭間を埋める役目を持つ 企業が求めるもの=学校で何を学んできたかではない、企業で使う技術を学校で身に着けてきたかでもない、答えは企業で厳しく訓練するに耐えられる素材かどうかだけである。 ならばそんな労働市場で若者が生き抜いていくには鎧=専門性を身に着けるしかない。 本人以外の扶養家族の生計費、教育費、養育費、住宅費などは社会的連帯の思想に基づき公的にまかなう必要がある 欧米ではそれを行っている。ならば年功賃金のフラット化も進むはず。 第4章 経済財政諮問会議の民間議員は経済界から2名、経済学者2名だけである。 労働者代表と消費者代表を加えるべきである。正当な社会経済政策を議論するべくステークホルダーを充実させるべきである。 労働界の世界的基準は政労使3者構成原則である。 デンマークのゴーデントライアングル=解雇自由:手厚い失業給付;労働市場政策に熱心 (労働組合組織率極めて高い、全国的レベルの労使協定で決める社会、議会制定法率は低いなど 言わば1つの企業のような国柄 濱口氏自慢のブログ http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com |
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