ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事のフランス経済閣僚時代の公務を巡り、同国の裁判所が今週、職務不履行罪の有罪判決を下したことを受け、IMF理事会は早速、同氏の擁護に動いた。
理事会はラガルド氏の職務継続を「全面的に信任する」と結論づけた。だが、アナリストらは同氏の有罪判決は暗い影を落とし、IMFの威信と、場合によっては政策にも悪影響を及ぼしうるとみる。
「これは相当なダメージになるだろう」と元IMFエコノミストのピーター・ドイル氏は言う。「今後はIMFが決定を下すたびに(判決との)関連を勘繰られそうだ」。ドイル氏は英国の欧州連合(EU)懐疑派がこの問題に付け込もうとする可能性を指摘し、こう付け加えた。「ラガルド氏が英国のEU離脱のプロセスに関して何か言おうとした時、どうなるかを想像してみるといい」
有罪とされたのは、ラガルド氏がIMF専務理事になる前に起きたことに対してで、同氏は一貫して不正行為を否認している。
ラガルド氏とIMFは、19日の判決直後に同氏が仏政府に加え米国などの国々からも続投への支持を受けたことを挙げ、政治色の強い判決だったことも浮かび上がらせようとしている。
裁判所は、実業家のベルナール・タピ氏に4億300万ユーロ(約493億円)の公的資金が渡るのをラガルド氏が防げなかったことを職務怠慢とする一方、刑罰は科さず、この有罪判決が同氏の犯罪歴として残らないとも言い渡した。
ラガルド氏は5年に及んだ法的係争に区切りをつけ、前に進みたいという意欲をはっきりと示した。「この判決については上訴せず、私のすべての注意と時間、力、精力、そして熱意をIMFのトップとしての使命に傾けたい」と語った。
■ラガルド氏、米次期政権との関係に直面
ラガルド氏は特に今、IMFの最大の出資国である米国との関係をどう維持していくかという課題に直面している。米大統領選の期間中、ラガルド氏はトランプ氏を公然と批判することは努めて避けていた。だが、トランプ氏が掲げたような保護主義的な貿易政策には反対すると明言している。
トランプ氏はグローバル体制やIMFのような国際機関、さらにそれらの機関が70年以上推進してきた貿易促進や経済自由化の政策を非難し、選挙で勝利した。選挙以来、トランプ次期政権で要職への起用が取り沙汰されるボルトン元国連大使は、IMFと世界銀行の大改革を提案している。グローバル体制自体の刷新を求める意見も根強い。