民進党は21日の常任幹事会で、皇位継承などに関する論点整理を了承した。天皇陛下の退位の制度化は「恒久的な皇室典範改正によるべきだ」と主張。政府が検討する「一代限り」の特例法での対応は「違憲の疑いを生じさせるとの指摘もある」と疑問を投げかけた。ただ、野党内でも日本維新の会などは特例法に傾いており、議論は割れている。
天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議(座長・今井敬経団連名誉会長)は今の天皇に限り退位を認める方針で、特例法での対応を軸に調整を進めている。自民、公明両党は政府の立場を基本的に支持する方向だ。
一方、民進党は論点整理で憲法2条で皇位継承に関し「皇室典範の定めるところにより」と明記していると指摘。特例法については「『その天皇固有の問題がある』という判断につながり、適切でない」「時の政権与党による恣意的運用の危険性を排除できない」と否定的だ。「次期通常国会で必要な皇室典範の改正を実現すべきである」と結論づけた。
具体的には、皇嗣(天皇の世継ぎ)の即位の前提を定めた皇室典範4条に「退位」を追加する改正を掲げた。退位の要件として、皇嗣が成年で、天皇自らの意思に基づくなどの規定を加えることも打ち出した。典範改正は長期の時間や膨大な作業が必要との主張に対しては「まったくあたらないとの意見も少なくない」と反論した。
今後の検討事項として、女性皇族が結婚後も皇族の身分にとどまる「女性宮家」創設を可能にする典範改正も盛り込んだ。女性・女系皇族への皇位継承資格の拡大についても、国民的な議論喚起を訴えた。民進党は今回の論点整理を土台に、今後の与野党協議で意見を表明していく方針だ。
野党内の主張は割れている。共産党は「皇室典範の改正が筋ではないか」(志位和夫委員長)との立場で民進党と近い。自由党も大島理森衆院議長に「陛下の意思に即して皇室典範を見直すべきだ」との考えを伝えた。社民党も国会が主導して典範を見直すべきだと主張している。
一方で、日本維新の会や日本のこころを大切にする党は特例法の是認に傾く。維新の馬場伸幸幹事長は20日の記者会見で「個人的には一代限りで良いと思う」と述べた。
与野党各党は天皇の退位そのものは容認し「静かな議論が必要」との立場では一致する。制度実現の手法で温度差が生じる中、どう決着をつけるかが問われる。
民進党の野田佳彦幹事長は21日の記者会見で「議員立法で法案提出することは考えていない」と述べた。論点整理をまとめた同党の皇位検討委員会の長浜博行委員長は「決して政争の具にされるようなことがあってはならない」と強調した。