ゲスト
(ka0000)
森に現れし悪魔
マスター:なちゅい
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/12 07:30
- 完成日
- 2016/12/16 21:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●疾走してくるヤギの一団
ヤギといえば。
古くから人類によって家畜として飼育され、その肉、毛、乳などは広く使用されている。
普通、乾燥地域に住み、あるいは飼われている動物。それが、なぜか今雑魔と成り果て、リンダールの森に現れているという。
「狼の数が減ったというのに、これでは……」
森の集落の中、年老いたエルフの集落の長が呟く。
単なる雑魔だと思いたいが。そんなことを考えるエルフ達は、集落に向けて突進してくるヤギ雑魔の対処に頭を悩ませている。
この森含め、グラズヘイム王国東の地域には、何かいるのだろうか。動物を雑魔とさせる何かが……。
そう考えれば、狼は前触れにしかすぎないのかもしれない。実際、こうして雑魔となったヤギがエルフの集落へと侵攻してきているのだから。
ヤギはリアルブルーの西洋地域において、悪魔の象徴とされていたこともあるという。これは、異教神のイメージからきたものとされるが、それらの印象がこのファナティックブラッドにおいても、どこからか知れ渡っている可能性もある。……例えば、歪虚などによって。
「杞憂ならいいのですけれどね……」
別のエルフがそう告げるが、ともあれ今は雑魔の対処が先。……しかし、今、集落の男性の多くは出稼ぎに出ており、戦える者はわずかしかいない。男性達を呼び戻したくとも各地に散っていて、ヤギの接近にはとても間に合わない。
「致し方ない。ハンターの力を借りよう」
長はそのまま、集落にあるハンターズソサエティへと向かって行ったのだった。
程なく、ハンターズソサエティに出された依頼。
リンダールの森に現れたヤギ雑魔の討伐というのがその内容だ。
冬となり葉を落とした木々が立ち並ぶ森を、敵は木々を避けながら前方へとものすごい速さで疾走してくる。木々が邪魔だと感じた場合は木を破壊して、直進することもあるらしい。
ヤギ雑魔の攻撃は雄雄しく生えた角だ。また、体当たりを行うこともあるのと、時に禍々しい呪いを発してくることもあるから注意したい。
面倒な相手ではあるが、熟練のハンターであれば十分対処できる相手だと思われる。
どうか、力を貸してほしい。その張り紙には、1人のエルフの名前と共に、達筆な文字でそう書かれてあったのだった。
ヤギといえば。
古くから人類によって家畜として飼育され、その肉、毛、乳などは広く使用されている。
普通、乾燥地域に住み、あるいは飼われている動物。それが、なぜか今雑魔と成り果て、リンダールの森に現れているという。
「狼の数が減ったというのに、これでは……」
森の集落の中、年老いたエルフの集落の長が呟く。
単なる雑魔だと思いたいが。そんなことを考えるエルフ達は、集落に向けて突進してくるヤギ雑魔の対処に頭を悩ませている。
この森含め、グラズヘイム王国東の地域には、何かいるのだろうか。動物を雑魔とさせる何かが……。
そう考えれば、狼は前触れにしかすぎないのかもしれない。実際、こうして雑魔となったヤギがエルフの集落へと侵攻してきているのだから。
ヤギはリアルブルーの西洋地域において、悪魔の象徴とされていたこともあるという。これは、異教神のイメージからきたものとされるが、それらの印象がこのファナティックブラッドにおいても、どこからか知れ渡っている可能性もある。……例えば、歪虚などによって。
「杞憂ならいいのですけれどね……」
別のエルフがそう告げるが、ともあれ今は雑魔の対処が先。……しかし、今、集落の男性の多くは出稼ぎに出ており、戦える者はわずかしかいない。男性達を呼び戻したくとも各地に散っていて、ヤギの接近にはとても間に合わない。
「致し方ない。ハンターの力を借りよう」
長はそのまま、集落にあるハンターズソサエティへと向かって行ったのだった。
程なく、ハンターズソサエティに出された依頼。
リンダールの森に現れたヤギ雑魔の討伐というのがその内容だ。
冬となり葉を落とした木々が立ち並ぶ森を、敵は木々を避けながら前方へとものすごい速さで疾走してくる。木々が邪魔だと感じた場合は木を破壊して、直進することもあるらしい。
ヤギ雑魔の攻撃は雄雄しく生えた角だ。また、体当たりを行うこともあるのと、時に禍々しい呪いを発してくることもあるから注意したい。
面倒な相手ではあるが、熟練のハンターであれば十分対処できる相手だと思われる。
どうか、力を貸してほしい。その張り紙には、1人のエルフの名前と共に、達筆な文字でそう書かれてあったのだった。
プレイング
リプレイ本文
●エルフの集落を護る為に
リンダールの森。
ユウキ(ka5861)はエルフばかりが住むその集落に興味津々できょろきょろと見回す。
「エルフの集落……、さすが、綺麗なエルフがいっぱいだなぁ……」
幻想的な光景にうっとりしてしまった彼女はさておき。
とある集落までやってきたハンター達は、さほど雑魔の襲撃まで余裕のない状況に危機感を募らせる。
「山から下りてきた『獣』が人里で大暴れ……。まあ……、そんな季節ですかね」
従魔までそんな事を模倣しなくてもいいのにと、クオン・サガラ(ka0018)は悪態づく。彼は霧島 キララ(ka2263)、南護 炎(ka6651)と共に、罠に使えそうなものをエルフから買い取っていた。
「ヤギの雑魔か……。獣が相手ならやりやすい、私好みの相手だな」
「山羊型ですが……、山羊は断崖絶壁も僅かな凹凸を利用して上り下りすると聞きます」
銃の手入れを行いつつ霧島 キララ(ka2263)が呟くと、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)が言葉を返す。
山羊の習性と同じくしているのならば、ぬかるみなど地盤が不安定な場所も、根が地面に出ていて障害となっている場所なども、相手の方が自分達よりも有利だろうとセツナは語る。
「倒される木々には注意が必要ですが、無闇に動かずに迎撃することが有効そうですね」
セツナはそう戦況分析を行うが、山羊雑魔は疾走し続け、エルフの集落を狙うという。
「突撃する敵を食い止めるとは、また面白い戦場じゃのぅ」
ダグマス(ka6527)はこの状況に興味を抱いて参加している。ドワーフの戦士である彼はアックスブレードに視線を向けながら、声高らかに告げた。
「この一撃でもって、奴らに痛打を与えるとしようかの!」
「猛進する山羊を止める、来てしまったモノは確実に対峙します」
笑うダグマスにクオンは力強く頷き、討伐に意欲を見せる。
「ここで俺がしくじったら、村のみんなが大変なことになっちまう。絶対に失敗できない!!」
大切なものを護る為。炎は鍛えた体を張って集落を護ろうと誓う。
「……そうだね、絶対に、護り切ってみせるよ!」
惚けていたユウキも我を取り戻し、仲間達に合わせて声を上げる。
「さて、狩りを始めようか……」
意気揚々と作戦に臨むメンバー達にキララが声をかけると、ハンター達はひとまず集落を後にし、こちらに向かい来る雑魔の対処に乗り出したのだった。
2班に分かれたハンター達は作戦の為、下準備を行う。
「今回は、所謂防衛戦と考えるべきか……」
討伐依頼ではあるものの、キララは集落の防衛に重点を置いて動く。
クオンがメインとなって罠を張っていたが、キララはその手伝いを行っていた。凝った仕掛けを行うには時間がないと判断し、比較的簡単でかつ、相手の足を止める罠を仕掛けていく。
一足早くバイクで集落にやってきていたクオンは、仲間との合流前、すでに集落手前側に幾つか罠を仕掛けていた。
さらに、2本の木にワイヤーを結んだり、所々にトラバサミを設置したりと、クオンは仲間達と共に罠張りを再開し、雑魔の来襲に備える。
「誰かが引っかかるとまずいからな……」
敵の行動をコントロールするには多少目立ってもよいと、クオンは仲間が見分けられるようにと目印をつけていた。また、終了後の回収作業を楽にする狙いもある。
ここが最終防衛線。山羊雑魔をここから先に進めてはならないからこそ、ユウキはいち早く戦闘態勢に移ることができるように、敵の接近を警戒していた。
その3人よりも少し前方では、率先して敵を迎撃すべく、炎、ダグマス、セツナが布陣する。
「さすがに、落とし穴を掘る時間はなさそうですか……」
乗馬したままのセツナは、トランシーバーで後方メンバーの状況を確認しつつ呟く。
森の中では、木々が密集しており、大地に木々の根が張り巡らされている。穴を掘るのも容易な事ではない。
さらに前方から、何かが木々を突き倒してこちらに迫ってきている。これ以上準備を行う時間はなさそうだ。
炎も短い待ち時間を活かして、木々の間に調達したワイヤーを張っていたが、敵の接近に気づいて手を止めて、後方メンバーへとトランシーバーで山羊雑魔の接近を伝える。
「来たぜ、戦闘に備えてくれ!」
炎は自らも覚醒し、紅く染めた片方の瞳で鋭く前方を見据えた。
「さて、狩りじゃ。奴らの角よりも、わしらの腕っぷしのほうが強いことを、思い知らせてやるわい」
覚醒したダグマスは兜を光らせ……いや、その中、頭部の髪がなくなった部分が光らせる。
そうしているうち、メンバーの視界の向こうに、山羊雑魔が駆けてくるのが見えた。
「後方の皆様が罠を仕掛ける時間を稼ぎませんと……」
同じく、覚醒したセツナ。下馬した彼女は降魔刀に手をかけて敵へと迫っていくのだった。
●山羊雑魔の暴走を止めろ!
突進してくる山羊の雑魔。黒いオーラのようなものを纏ったそいつらは目を血走らせて走ってくる。
セツナは円を意識した体捌きを行い、手前の山羊の迎撃に当たった。
回避に集中すれば、敵はそのままこの場を突破してしまうかもしれない。セツナはそう考え、突きつけてくる角を最小限の動きで避ける。そして、降魔刀を振るってその角を切り落とそうと切りかかったが、思った以上に角は硬く、すぐには折れそうにない。
(背後に村があっては、後退もままならぬ)
ダグマスもまた、向かい来る敵へと一騎打ちを仕掛けた。
「だが、勇敢こそを誉れとするわしらがここで引けるはずもない」
突撃してきた山羊の体を、ダグマスはまず受け止める。
そのまま、彼は攻めに転じた。戦法は至極単純。攻撃を重視した構えから、強く踏み込んで アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」を力の限り叩きつける。
見事にダグマスは敵の体を斬りつけ、そいつを転倒させた。彼はにやりと笑い、さらに手傷を負わせようと斬りかかっていく。
「絶対に、ここを突破させない!!」
全身から雑魔が発する負のオーラ。それを受けて全身に痛みを覚える炎だが、いちいち痛みを気にしてもいられない。
精神を統一させた炎は素早く踏み出し、敵の退路を断ちつつ「ユナイテッド・ドライブ・ソード」の刃を浴びせかけた。
そばでは、1体が炎の張ったワイヤーに引っかかって転倒する。しかし、もう1体は障害を上手く避けて3人を突破してしまった。
そして、セツナが角を狙いつつ山羊と交戦していたものの、敵は体当たりに見せかけて彼女を抜き去ってしまう。
「……っ」
セツナはそれに悔しそうな表情を見せつつ、トランシーバーで他の3人へと告げる。
「すまない。2体そちらに向かった……!」
戦闘時ということもあり、端的に用件のみ伝えた彼女は、この場の2体を逃さぬようにと切りかかっていくのだった。
連絡を受けた、後方メンバー達。
「私がやるべき事は皆の援護とトドメといった所か……」
見晴らしの良い木の枝の上で、敵を待ち構えるキララ。覚醒したその瞳は蛇のように縦長瞳孔に変化し、赤く淡い光を放っていた。
そして、スナイパーライフル「レスティヒクーゲル」を構える右腕には、蛇を思わせる痣が浮かび上がる。
(久しぶりの依頼参加で、勘が鈍っているかもしれないな……)
この戦いで取り戻すことが出来ればよいのだが。そう考えていると、蹄が地面を蹴る音が近づいてきた。
「集落も、エルフも、絶対護りきるよ! 勿論、ハンターの皆も!」
叫ぶユウキは、ロングボウ「イチイバル」を携えて構える。
疾走してくる2体の山羊。だが、敵は突然動きを止めた。1体はワイヤーに引っかかって大きく転倒して地面を転がった。もう1体はトラバサミにかかったようで、身動きが取れなくなっている。これも、クオンが仕掛けた罠が機能した結果と言えよう。
「楽に逝かせてやりたいところだが……。まぁ、恨んでくれても構わないさ」
蛇の瞳にマテリアルを込め、キララは暴れる敵に狙いをつける。狙うは面積の広い山羊の胴体。あわよくば、足を狙って機動力を奪おうと考える。
狙うは、ワイヤーで転んだ山羊。立ち上がればまた疾走するのが目に見えたからだ。
キララの狙撃は見事に敵の前足を射抜く。それにより、山羊は鳴き声を上げながら、キララへと呪いを発してきていた。
一方で、トラバサミにかかって暴れる敵へ、魔杖「スキールニル」を振るうクオンが光の三角形を正面に出現させ、その3つの頂点から伸びる光で雑魔を貫いていく。
「これより後ろには、絶対に行かせないよ」
トラバサミから抜け出た敵へ、ユウキは渾身の力で矢を飛ばす。その矢は敵の眉間を貫いたものの。山羊雑魔はしぶとくハンター達の方へと走り出したのだった。
●ここは通さない……!
前方に再び視点を戻すと、その場の3人が全力で山羊雑魔を留めていた。
「打ち負けるのが悪いんじゃ。怪我は甘んじて受けよう」
雑魔による角に突撃。ダグマスは体に傷を負いながらも、アックスブレードの刃を受け続ける。セツナが援護してくれているので、一騎打ちではなくなったが……。
「しかし、退きはせぬぞ」
一歩たりとも、ダグマスは退かない。彼が抑えているうちに、セツナが山羊の角の片方をへし折ってしまう。
その大きな隙に、ダグマスはありったけの力を込めて刃を振り下ろす。真っ二つに裂かれる山羊の頭。そいつは崩れ落ちる前に無に帰してしまった。
炎も、体勢を立て直した山羊を相手にしていた。そいつは爛々と眼を輝かせ、この場の突破を図っている。
「ここを抜かれたら、村のみんなが大変なことになってしまう!!」
持ちうる全ての力を使い、炎は斬撃を浴びせ続ける。
ダグマスもセツナも、この場の雑魔がこの1体になったことで、攻撃を集中させていた。セツナが敵の後ろ足に斬りかかって動きを阻害したところで、炎が敵の前足を切り落とす。
そのダメージに耐えることができず、山羊雑魔は奇妙な鳴き声を上げながら消え去ったのだった。
前方メンバーも、うまく動きを止めた山羊2体へと攻撃を行う。
再び動き始めようとする雑魔の足を止めるべく、キララはライフルを連射した。
「悪いな、喰いつかせてもらった」
弾幕によって敵の足を止めたところで、クオンが雷撃を放ってその体に痺れを走らせる。ピクピクと体を小刻みに動かす山羊雑魔。クオンはその正面に躍り出て魔導拳銃の銃口を突きつけ、弾丸を撃ちこんでいく。
だが、敵はしぶとく、彼の体を呪ってくる。体に走る痛みに、クオンは顔を引きつらせた。
(数こそ少なくなったが、直撃をもらうわけには……)
現状、敵の特攻を受けずに済んではいる。できるならこのまま。クオンはそう考えながらも術式陣を前方に展開し、無数の氷柱を敵に飛ばしていく。手前の山羊はそれによって頭をかち割られ、ついに息絶えてしまった。
「これ以上、集落には近寄せねぇよ」
ユウキはやや言葉を荒くし、剣で応戦を行う。炎のオーラを纏って敵の注意を引き付ける彼女は、山羊の体当たりを食うこととなる。
「痛てぇんだよ、この野郎がっ!」
その突進は決して小さいダメージではない。だが、その痛みを、彼女はしっかりと反撃として、騎兵用剣「ツァグダー」をそいつの脳天に叩きこむ。
「痛てぇだろ。エルフの集落狙うから、こうなるんだよっ!」
そうして、ユウキがこの場から離脱したタイミングで、キララが瞳を光らせる。
「確実に仕留めさせてもらう……。被害を出すわけにはいかないんでな」
ライフルの弾丸にマテリアルを込めたキララは、それを発砲することで、冷気を纏った射撃を行う。
それを浴びた敵は体を凍らせていたが、続く射撃に命の炎すらも凍てついてしまって。山羊は完全に表情を固まらせたまま、粉々に砕けていった。
「思ったよりも、腕は鈍っていなかったようだな」
愛銃の手入れを行いつつ、キララは笑みを浮かべていたのだった。
●静けさの戻った森で……
山羊雑魔全てを倒したハンター達。
一度合流した後、周囲に敵がいないかとユウキ、炎が確認の為に森を巡回する。とりわけ異常は見受けられなかった為、罠を解除した後にエルフの集落へと戻る。
「もう大丈夫だぜ!!」
炎は笑顔で雑魔の討伐を伝えると、エルフ達は手と手を取り合って喜ぶ。
セツナが補足するように、長老へと状況説明を行う。その際、ユウキはこの周辺の雑魔の出現情報なども聞こうと、集落の少女と話をしていた。
「今後の対策を練れると良いんだけど……」
ただ、それ以上にエルフと仲良くしたい彼女は、たわいない雑談をすることで、エルフの少女と楽しく語らっていたようだった。
リンダールの森。
ユウキ(ka5861)はエルフばかりが住むその集落に興味津々できょろきょろと見回す。
「エルフの集落……、さすが、綺麗なエルフがいっぱいだなぁ……」
幻想的な光景にうっとりしてしまった彼女はさておき。
とある集落までやってきたハンター達は、さほど雑魔の襲撃まで余裕のない状況に危機感を募らせる。
「山から下りてきた『獣』が人里で大暴れ……。まあ……、そんな季節ですかね」
従魔までそんな事を模倣しなくてもいいのにと、クオン・サガラ(ka0018)は悪態づく。彼は霧島 キララ(ka2263)、南護 炎(ka6651)と共に、罠に使えそうなものをエルフから買い取っていた。
「ヤギの雑魔か……。獣が相手ならやりやすい、私好みの相手だな」
「山羊型ですが……、山羊は断崖絶壁も僅かな凹凸を利用して上り下りすると聞きます」
銃の手入れを行いつつ霧島 キララ(ka2263)が呟くと、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)が言葉を返す。
山羊の習性と同じくしているのならば、ぬかるみなど地盤が不安定な場所も、根が地面に出ていて障害となっている場所なども、相手の方が自分達よりも有利だろうとセツナは語る。
「倒される木々には注意が必要ですが、無闇に動かずに迎撃することが有効そうですね」
セツナはそう戦況分析を行うが、山羊雑魔は疾走し続け、エルフの集落を狙うという。
「突撃する敵を食い止めるとは、また面白い戦場じゃのぅ」
ダグマス(ka6527)はこの状況に興味を抱いて参加している。ドワーフの戦士である彼はアックスブレードに視線を向けながら、声高らかに告げた。
「この一撃でもって、奴らに痛打を与えるとしようかの!」
「猛進する山羊を止める、来てしまったモノは確実に対峙します」
笑うダグマスにクオンは力強く頷き、討伐に意欲を見せる。
「ここで俺がしくじったら、村のみんなが大変なことになっちまう。絶対に失敗できない!!」
大切なものを護る為。炎は鍛えた体を張って集落を護ろうと誓う。
「……そうだね、絶対に、護り切ってみせるよ!」
惚けていたユウキも我を取り戻し、仲間達に合わせて声を上げる。
「さて、狩りを始めようか……」
意気揚々と作戦に臨むメンバー達にキララが声をかけると、ハンター達はひとまず集落を後にし、こちらに向かい来る雑魔の対処に乗り出したのだった。
2班に分かれたハンター達は作戦の為、下準備を行う。
「今回は、所謂防衛戦と考えるべきか……」
討伐依頼ではあるものの、キララは集落の防衛に重点を置いて動く。
クオンがメインとなって罠を張っていたが、キララはその手伝いを行っていた。凝った仕掛けを行うには時間がないと判断し、比較的簡単でかつ、相手の足を止める罠を仕掛けていく。
一足早くバイクで集落にやってきていたクオンは、仲間との合流前、すでに集落手前側に幾つか罠を仕掛けていた。
さらに、2本の木にワイヤーを結んだり、所々にトラバサミを設置したりと、クオンは仲間達と共に罠張りを再開し、雑魔の来襲に備える。
「誰かが引っかかるとまずいからな……」
敵の行動をコントロールするには多少目立ってもよいと、クオンは仲間が見分けられるようにと目印をつけていた。また、終了後の回収作業を楽にする狙いもある。
ここが最終防衛線。山羊雑魔をここから先に進めてはならないからこそ、ユウキはいち早く戦闘態勢に移ることができるように、敵の接近を警戒していた。
その3人よりも少し前方では、率先して敵を迎撃すべく、炎、ダグマス、セツナが布陣する。
「さすがに、落とし穴を掘る時間はなさそうですか……」
乗馬したままのセツナは、トランシーバーで後方メンバーの状況を確認しつつ呟く。
森の中では、木々が密集しており、大地に木々の根が張り巡らされている。穴を掘るのも容易な事ではない。
さらに前方から、何かが木々を突き倒してこちらに迫ってきている。これ以上準備を行う時間はなさそうだ。
炎も短い待ち時間を活かして、木々の間に調達したワイヤーを張っていたが、敵の接近に気づいて手を止めて、後方メンバーへとトランシーバーで山羊雑魔の接近を伝える。
「来たぜ、戦闘に備えてくれ!」
炎は自らも覚醒し、紅く染めた片方の瞳で鋭く前方を見据えた。
「さて、狩りじゃ。奴らの角よりも、わしらの腕っぷしのほうが強いことを、思い知らせてやるわい」
覚醒したダグマスは兜を光らせ……いや、その中、頭部の髪がなくなった部分が光らせる。
そうしているうち、メンバーの視界の向こうに、山羊雑魔が駆けてくるのが見えた。
「後方の皆様が罠を仕掛ける時間を稼ぎませんと……」
同じく、覚醒したセツナ。下馬した彼女は降魔刀に手をかけて敵へと迫っていくのだった。
●山羊雑魔の暴走を止めろ!
突進してくる山羊の雑魔。黒いオーラのようなものを纏ったそいつらは目を血走らせて走ってくる。
セツナは円を意識した体捌きを行い、手前の山羊の迎撃に当たった。
回避に集中すれば、敵はそのままこの場を突破してしまうかもしれない。セツナはそう考え、突きつけてくる角を最小限の動きで避ける。そして、降魔刀を振るってその角を切り落とそうと切りかかったが、思った以上に角は硬く、すぐには折れそうにない。
(背後に村があっては、後退もままならぬ)
ダグマスもまた、向かい来る敵へと一騎打ちを仕掛けた。
「だが、勇敢こそを誉れとするわしらがここで引けるはずもない」
突撃してきた山羊の体を、ダグマスはまず受け止める。
そのまま、彼は攻めに転じた。戦法は至極単純。攻撃を重視した構えから、強く踏み込んで アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」を力の限り叩きつける。
見事にダグマスは敵の体を斬りつけ、そいつを転倒させた。彼はにやりと笑い、さらに手傷を負わせようと斬りかかっていく。
「絶対に、ここを突破させない!!」
全身から雑魔が発する負のオーラ。それを受けて全身に痛みを覚える炎だが、いちいち痛みを気にしてもいられない。
精神を統一させた炎は素早く踏み出し、敵の退路を断ちつつ「ユナイテッド・ドライブ・ソード」の刃を浴びせかけた。
そばでは、1体が炎の張ったワイヤーに引っかかって転倒する。しかし、もう1体は障害を上手く避けて3人を突破してしまった。
そして、セツナが角を狙いつつ山羊と交戦していたものの、敵は体当たりに見せかけて彼女を抜き去ってしまう。
「……っ」
セツナはそれに悔しそうな表情を見せつつ、トランシーバーで他の3人へと告げる。
「すまない。2体そちらに向かった……!」
戦闘時ということもあり、端的に用件のみ伝えた彼女は、この場の2体を逃さぬようにと切りかかっていくのだった。
連絡を受けた、後方メンバー達。
「私がやるべき事は皆の援護とトドメといった所か……」
見晴らしの良い木の枝の上で、敵を待ち構えるキララ。覚醒したその瞳は蛇のように縦長瞳孔に変化し、赤く淡い光を放っていた。
そして、スナイパーライフル「レスティヒクーゲル」を構える右腕には、蛇を思わせる痣が浮かび上がる。
(久しぶりの依頼参加で、勘が鈍っているかもしれないな……)
この戦いで取り戻すことが出来ればよいのだが。そう考えていると、蹄が地面を蹴る音が近づいてきた。
「集落も、エルフも、絶対護りきるよ! 勿論、ハンターの皆も!」
叫ぶユウキは、ロングボウ「イチイバル」を携えて構える。
疾走してくる2体の山羊。だが、敵は突然動きを止めた。1体はワイヤーに引っかかって大きく転倒して地面を転がった。もう1体はトラバサミにかかったようで、身動きが取れなくなっている。これも、クオンが仕掛けた罠が機能した結果と言えよう。
「楽に逝かせてやりたいところだが……。まぁ、恨んでくれても構わないさ」
蛇の瞳にマテリアルを込め、キララは暴れる敵に狙いをつける。狙うは面積の広い山羊の胴体。あわよくば、足を狙って機動力を奪おうと考える。
狙うは、ワイヤーで転んだ山羊。立ち上がればまた疾走するのが目に見えたからだ。
キララの狙撃は見事に敵の前足を射抜く。それにより、山羊は鳴き声を上げながら、キララへと呪いを発してきていた。
一方で、トラバサミにかかって暴れる敵へ、魔杖「スキールニル」を振るうクオンが光の三角形を正面に出現させ、その3つの頂点から伸びる光で雑魔を貫いていく。
「これより後ろには、絶対に行かせないよ」
トラバサミから抜け出た敵へ、ユウキは渾身の力で矢を飛ばす。その矢は敵の眉間を貫いたものの。山羊雑魔はしぶとくハンター達の方へと走り出したのだった。
●ここは通さない……!
前方に再び視点を戻すと、その場の3人が全力で山羊雑魔を留めていた。
「打ち負けるのが悪いんじゃ。怪我は甘んじて受けよう」
雑魔による角に突撃。ダグマスは体に傷を負いながらも、アックスブレードの刃を受け続ける。セツナが援護してくれているので、一騎打ちではなくなったが……。
「しかし、退きはせぬぞ」
一歩たりとも、ダグマスは退かない。彼が抑えているうちに、セツナが山羊の角の片方をへし折ってしまう。
その大きな隙に、ダグマスはありったけの力を込めて刃を振り下ろす。真っ二つに裂かれる山羊の頭。そいつは崩れ落ちる前に無に帰してしまった。
炎も、体勢を立て直した山羊を相手にしていた。そいつは爛々と眼を輝かせ、この場の突破を図っている。
「ここを抜かれたら、村のみんなが大変なことになってしまう!!」
持ちうる全ての力を使い、炎は斬撃を浴びせ続ける。
ダグマスもセツナも、この場の雑魔がこの1体になったことで、攻撃を集中させていた。セツナが敵の後ろ足に斬りかかって動きを阻害したところで、炎が敵の前足を切り落とす。
そのダメージに耐えることができず、山羊雑魔は奇妙な鳴き声を上げながら消え去ったのだった。
前方メンバーも、うまく動きを止めた山羊2体へと攻撃を行う。
再び動き始めようとする雑魔の足を止めるべく、キララはライフルを連射した。
「悪いな、喰いつかせてもらった」
弾幕によって敵の足を止めたところで、クオンが雷撃を放ってその体に痺れを走らせる。ピクピクと体を小刻みに動かす山羊雑魔。クオンはその正面に躍り出て魔導拳銃の銃口を突きつけ、弾丸を撃ちこんでいく。
だが、敵はしぶとく、彼の体を呪ってくる。体に走る痛みに、クオンは顔を引きつらせた。
(数こそ少なくなったが、直撃をもらうわけには……)
現状、敵の特攻を受けずに済んではいる。できるならこのまま。クオンはそう考えながらも術式陣を前方に展開し、無数の氷柱を敵に飛ばしていく。手前の山羊はそれによって頭をかち割られ、ついに息絶えてしまった。
「これ以上、集落には近寄せねぇよ」
ユウキはやや言葉を荒くし、剣で応戦を行う。炎のオーラを纏って敵の注意を引き付ける彼女は、山羊の体当たりを食うこととなる。
「痛てぇんだよ、この野郎がっ!」
その突進は決して小さいダメージではない。だが、その痛みを、彼女はしっかりと反撃として、騎兵用剣「ツァグダー」をそいつの脳天に叩きこむ。
「痛てぇだろ。エルフの集落狙うから、こうなるんだよっ!」
そうして、ユウキがこの場から離脱したタイミングで、キララが瞳を光らせる。
「確実に仕留めさせてもらう……。被害を出すわけにはいかないんでな」
ライフルの弾丸にマテリアルを込めたキララは、それを発砲することで、冷気を纏った射撃を行う。
それを浴びた敵は体を凍らせていたが、続く射撃に命の炎すらも凍てついてしまって。山羊は完全に表情を固まらせたまま、粉々に砕けていった。
「思ったよりも、腕は鈍っていなかったようだな」
愛銃の手入れを行いつつ、キララは笑みを浮かべていたのだった。
●静けさの戻った森で……
山羊雑魔全てを倒したハンター達。
一度合流した後、周囲に敵がいないかとユウキ、炎が確認の為に森を巡回する。とりわけ異常は見受けられなかった為、罠を解除した後にエルフの集落へと戻る。
「もう大丈夫だぜ!!」
炎は笑顔で雑魔の討伐を伝えると、エルフ達は手と手を取り合って喜ぶ。
セツナが補足するように、長老へと状況説明を行う。その際、ユウキはこの周辺の雑魔の出現情報なども聞こうと、集落の少女と話をしていた。
「今後の対策を練れると良いんだけど……」
ただ、それ以上にエルフと仲良くしたい彼女は、たわいない雑談をすることで、エルフの少女と楽しく語らっていたようだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
『相談卓』 霧島 キララ(ka2263) 人間(リアルブルー)|26才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/12/11 23:29:05 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/10 00:12:54 |