「固定残業代含む求人」がはらむ4つの問題点

効率的で働きやすい職場環境には逆行する

残業が前提となっている求人のやり方に批判が集まっています(写真:tomos / PIXTA)

「基本給30万円。ただし、45時間分の残業代を含む」

こうしたあらかじめ雇用条件に固定された残業代を含んだ求人の募集を排除しようとする動きが出てきた。12月13日に開いた厚生労働省の労働政策審議会で、実際とは異なる虚偽の賃金や待遇を示して求人した企業に対する罰則を強化する方針が決定されたからだ。来年の通常国会に職業安定法の改正案が提出される見通しだ。

改正案の重要な柱の1つは、求人で提示する給与について、残業代を除いた明確な金額を示すよう企業に義務付けること。法定時間を超えた時間外労働について払われる残業代は、原則として基本給よりも25%以上の割増賃金が支払われる。見込みの残業時間数に基づいて支払う、いわゆる「固定残業代」をあたかも基本給の一部のように装い、みせかけの好条件で求職者を誤認させることを防ぐ。

固定残業代は求職者の誤認だけが、問題ではない。会社の労務管理という観点から見ると、4つの問題点をはらんでいる。効率的で働きやすい職場環境の構築が後手に回ってしまうおそれがある。

「残業させて当然」という社風を生む

第1の問題点は、固定残業代が常態化している企業は、「残業させて当然」という社風を生んでしまうことだ。

そもそも労働基準法は、長時間労働から労働者を守るため「1日の労働時間は8時間以内」「1週間の労働時間は40時間以内」と定めている。これを超えて労働させた場合に、使用者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰を科される。もちろん、会社と労働者代表の合意の下で労使協定、いわゆる「36(サブロク)協定」を結んだ場合は、これを超えて残業ができるが、あくまでも「例外」の扱いであり、労働基準法の理念に照らし合わせると「残業は禁止」が出発点なのである。

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