背筋が凍るテロが、ドイツとトルコの両首都でおきた。

 ベルリンではクリスマス市(いち)にトラックが突入し、多数が死傷した。アンカラでは地元の警官がロシア大使を射殺した。

 年末に相次ぐ凶行は、改めてテロの脅威と背中合わせにある世界の厳しい現実を物語る。どんな背景であれ、暴力は断じて容認できない。

 ベルリンの事件では、中東の過激派組織「イスラム国」(IS)系のメディアが犯行声明を出した。真偽は不明だが、フランスなど各地でISの関わるテロが続いてきたのは確かだ。

 社会で疎外された若者をテロの道に引き込むISなどの過激思想をいかに根絶するか。今年は、そのための国際社会の結束が叫ばれた一年だったはずだ。

 ところが、ISとの戦いを含むシリア問題への取り組みについて、国際的な足並みは大きく乱れている。

 アサド政権を支えるロシアと、反体制派を支える米欧との対立が続き、内戦による深刻な人道危機にも国際社会は有効な手が打てずにきた。

 先週、アサド政権が制圧を宣言した都市アレッポの惨状は、すさまじい。政権は、一部の市民もテロリストとみて攻撃し、ロシアもそれに手を貸した。

 アンカラの事件の際、大使を射殺した警官は「アレッポ、シリアを忘れるな」と叫んでおり、ロシアへの反発が動機だった可能性が指摘されている。

 これを受けてロシアのプーチン大統領は「テロとの戦いを強化する」と述べ、トルコ政府との連携を表明した。

 それがもし、シリアの反体制派への弾圧を強める意図も含んでいるならば、事態のいっそうの悪化が懸念される。対テロ戦に名を借りた抑圧は、さらなる暴力の連鎖を招くだけだ。

 アサド政権とロシアは一刻も早く、流血を止めるべきだ。ISを解体し、シリア再建の道筋を探る目標に向けて国際社会と結束するべきである。

 欧米社会も自制が必要だ。

 ベルリンの事件後、欧州の一部政治家らは、難民受け入れへの非難を強めている。トランプ米次期大統領は、容疑者も不明な段階で、イスラム過激派の犯行のような言動を繰り返す。

 難民やイスラム教徒もまたテロの被害者である現実から目を背け、彼らをテロ予備軍のようにおとしめる風潮は、憎しみをあおり、社会の分断を広げる。

 感情的な対応は戒めたい。どうすれば対テロの実効性のある国際協調を築けるか、冷静に考えるべきだ。