軌道投入した科学衛星「エルグ」は、地球周辺にある放射線が強い「バンアレン帯」という空間を観測する。統括する篠原育准教授は、永野和行肝付町長が記したという愛称「あらせ」の色紙を手にして、「これから大変な運用が続く。正常な科学観測を開始できるように頑張りたい」と気を引き締めた。
奥村直樹理事長は「正常に役割を果たし、大変ほっとしたところ」と胸をなで下ろした。平成25年の初号機では、コンピューターの設定ミスで発射直前に打ち上げを中止するトラブルがあった。「今回は何としても成功させる意気込みで進めてきた。前回の手違いを全て克服する成功となった」と話した。
イプシロンは科学衛星だけを打ち上げてきた従来の固体燃料ロケットとは異なり、将来は商業打ち上げ市場に参入し、民間企業や海外からの受注を目指す。奥村氏は「技術を確立して競争力を持つ一方、市場でお客さんを発掘する必要がある。将来、事業を担うと想定される企業とも連携して進めている」とした。
ただ、市場ではロシアが価格面で圧倒的な優位に立つなど競争は厳しい。奥村氏は「衛星運用企業から聞くところでは、必ずしも打ち上げ費用だけでロケットを決めているわけではないという。価格を下げる努力はするが、総合的に信頼を勝ち得ることが一番重要だ」と強調した。
具体的には予定時刻通りの打ち上げや、衛星に与える振動を抑えるなどの工夫を通じ「お客のニーズに寄り添う技術開発を日本の強みにしたい」と話した。
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