ロシア大使射殺 実行犯を現場で撮ったカメラマン
- 2016年12月21日
暗殺事件の現場にプロの報道カメラマンがいることは珍しい。要人殺害の瞬間や、直後の実行犯の表情が、報道写真として記録に残るのは極めてまれだ。
しかしトルコの首都アンカラで19日、ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使(62)が写真展の会場で警官に射殺された時、AP通信のカメラマン、ブルハン・オズビリジ氏は偶然、最前列に居合わせた。
オズビリジ氏は、アンカラ機動隊のメブリュト・メルト・アルトゥンタシュ警官(22)が大声で怒鳴りまくり、銃を振り回す間、その様子を撮影し続けた。
「もちろん怖かったし、銃撃犯が自分の方を向いたらどれほど危険か分かっていた」 オズビリジ氏は事件後、広く共有されたAP通信のブログにこう書いた。
また、大使の命が「目の前で消えていく」様子についても書いている。
(注意――この記事では以下に射殺現場の生々しい写真を掲載します)
カルロフ大使は「トルコ人が見たロシア」という写真展の開会式に出席し、スピーチをしている最中に撃たれた。
オズビリジ氏が式典をのぞくことにしたのは、ギャラリーがちょうど、AP通信の職場と自宅の間にあったからだった。
ブログ記事によるとオズビリジ氏は、トルコ・ロシア関係を表現するのに使えるストック写真を撮る機会になるだろうと、普段通りの撮影の仕事のつもりで会場に向かった。しかしふたを開けてみれば、普段どころか殺人事件と現場の混乱を自ら目撃することになったと、書いている。
大使は撃たれてあおむけに倒れ、アルトゥンタシュ警官はその周りを歩き回った。アラビア語とトルコ語で、シリアの紛争について怒鳴った。シリアのアサド政権にとって、今やロシアは不可欠の同盟国だ。
会場に居合わせた人たちは、身をかがめて必死に隠れようとしたという。
オズビリジ氏は、「会場の人たちは悲鳴を上げ、柱の後ろやテーブルの下に隠れて、床に倒れ伏した。私は怖かったし混乱していたけれども、壁の後ろに少し隠れることができたので、自分の仕事をした。つまり、写真を撮ったわけだ」と書いた。
ほかの人たちが逃げようとするなかで、実行犯に近づくのは危険な行為だと分かっていたが、現場の様子をとらえなくてはならないと考えていたという。
ソーシャルメディアでは、オズビリジ氏の行動を称賛する声が飛び交った。
英国のジャーナリスト、サイモン・リケッツ氏はツイッターで、オズビリジ氏のブログ記事を共有し、「多くの場合、歴史を一番最初に記録するのはカメラマンだ」と書いた。
AP通信のディレクター、クリスティン・ガズレイ氏は「APの同僚、ブルハン・オズビリジの勇気に感動している」とツイートした。
オズビリジ氏は、射殺事件が起きる前の様子もとらえていた。恐ろしい事件が間もなく起きると知る由もなく、会場にいる被害者と周りの人たちの表情だ。
「編集作業のためにオフィスに戻って、自分が撮った写真を見てショックを受けた。銃撃犯は実は、スピーチをする大使の後ろに立っていたんだ。まるで友達か、ボディガードのように」とオズビリジ氏は書いた。
アルトゥンタシュ警官は現場で、トルコ警察に射殺された。
(英語記事 Russian ambassador killing: Photographer who captured the scene)