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<政治新幹線の先に>(上) 米原乗り入れ

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 北陸新幹線の未着工区間(福井県・敦賀−新大阪間)のルートを巡り、与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)が二十日、下部組織の検討委員会の報告を基に小浜−京都案の採用を決めた。費用対効果や建設費などで圧倒的に優れる米原案は、どうして選ばれなかったのか。「政治新幹線」と言われる検討過程の深層に迫る。

 「米原ルートはリニア中央新幹線が通ることになれば、当然つなげるべきだ」。今年一月、一人の政治家がソファに深くもたれて悠々と語った動画がネット上に流れた。

 画面越しに映るのは、与党PTの検討委員長の西田昌司参院議員(京都選挙区)。米原案を推す滋賀県知事でも米原市長でもない。

 ただこうも加えた。「米原案の根拠は『リニアができたら(東海道新幹線の過密ダイヤが)空くじゃないか』というところにある」。当初、新大阪までのリニア全線開業は二〇四五年を予定。新幹線の延伸時期までに開業が間に合わないのを見越し、暗に米原案を否定するものだった。

 その三カ月後の四月、与党検討委は米原案と小浜−京都案、舞鶴案の三案に絞り、滋賀県が米原案、JR西日本と福井県が小浜−京都案、京都府が舞鶴案をそれぞれ推す三つどもえになった。

 当時から営業主体のJR西も支持する小浜−京都案が一歩リードしていた。米原案は、リニア開業時期との絡みで、米原駅での東海道新幹線への「乗り入れ」ではなく、「乗り換え」が前提に。所要時間の長さをネックに出遅れていた。

 しかし、夏ごろから米原案に追い風が吹く。政府が名古屋−新大阪間の開業前倒しへ動きだしたからだ。十一月十一日、四五年から最大八年の前倒しが正式に決まった。

5日の与党PTの検討委で県が配布した資料。三日月知事は東海道新幹線への「乗り入れ」検討を求め、国民本位の議論の必要性を訴えた

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 「当時は巻き返せる空気だった」と滋賀県関係者は振り返る。ところが、三日月大造知事が今月五日、与党検討委で「乗り入れ」を提案すると、その利点は議論されなかった。検討委後の会見で西田委員長は次のように言い放った。

 「新幹線整備は、JRと地元自治体の合意が大きな柱。技術的な議論より、そのポイントが事実上、大事だと思う」

 JR西日本とJR東海は終始、ダイヤの過密性や会社間の運営システムなどの違いを挙げるばかり。有識者から「乗り入れは可能」と指摘が挙がっても、JR東海の柘植康英社長は「相当先の話」と「乗り入れ」への言及を避けた。

 三日月知事は「乗り入れ」の実現例として山陽新幹線と九州新幹線の相互直通運転を指摘。その上で「乗り入れに必要な経費は数百億円、別のルートを選択すると、(米原案の五千九百億円)プラス一・五兆〜二兆円だ」として、国民本位の議論を求めた。しかし、結果は違った。

 今振り返れば、西田委員長は一月、動画でこうも言っていた。「一つ一つ聞き取りして現状を委員が理解し合っていくとルート選定は自然に落ち着いていく」

 この発言について、与党関係者は補足する。「結局、小浜−京都案を選ぶための議論。米原乗り入れを検討したら、落ち着くどころではなかった」

 (この連載は成田嵩憲が担当します)

 

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