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【社会】

虐待事件裁判 子どもの心理負担軽減を 証言DVD、地裁で証拠採用

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 旭川や高松、徳島、那覇の各地裁で昨年までに開かれた子どもに対する虐待や強制わいせつ事件の公判で、検察側が被害者の証言を録音録画したDVDを証拠として提出し、裁判所が採用するケースがあったことが、関係者への取材で分かった。法廷での被害者への証人尋問が回避された。つらい体験を何度も聞かれることで子どもが感じる心理的負担の軽減を目指す司法の取り組みとして注目される。

 欧米では司法、福祉の関係者が連携し、代表者が原則一回だけ聴き取りをする「司法面接」制度を導入。録音録画した内容が捜査上証拠として扱われ、法廷でも証言の代わりに使われる。日本の検察にも同様の手法を研究する動きが出ている。

 関係者によると、被害者の証言を収めたDVDが証拠採用されたのは、旭川、高松、徳島、那覇の四地裁で開かれた強制わいせつ事件や傷害事件の四公判と、高松地裁丸亀支部であった傷害事件の二公判。判決は二〇一四〜一五年にそれぞれ言い渡され、いずれも被告の有罪が確定している。

 各事件の被害者は事件当時七〜十四歳で、検察側が被害立証のため、被害者の証言を収録したDVDを証拠として提出。弁護側も同意し、証人尋問は行われなかった。

 高松、徳島両地裁と高松地裁丸亀支部の公判ではDVDを再生せずに検察官が概要を読み上げ、旭川、那覇両地裁では一部を再生。旭川地裁では、裁判官や検察官、弁護人がモニターを見ながらイヤホンで音声を聞き、被告にはモニターを見せずに音声だけを聞かせるよう配慮したという。

 一橋大の緑大輔(みどりだいすけ)准教授(刑事訴訟法)は一連の動きを「子どもの負担軽減につながる」と評価する一方、「冤罪(えんざい)を生まないためには調べ段階での誘導のない質問技術が必要となるが、検察官は有罪立証が念頭にあり誘導的になる危険性が排除できない」と指摘。「弁護側が争う事件でも裁判所の判断で証言DVDが証拠採用されるケースはあり得るが、弁護側が証人尋問できない場合に(手続き上の)公正さをどう担保するかが課題となる」としている。

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