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【私説・論説室から】

軍艦島で会った英国人

 長崎市の南西沖十八キロ、かつて炭鉱として栄えた軍艦島へのツアーに参加した。船は接岸したが波が高くて上陸はかなわず、周囲を巡り、廃虚になったアパートや病院、学校などの外観を写真撮影しただけだった。

 船で隣に座ったのが英国人の男性。二十代前半のようでサムと名乗った。なぜ一人で軍艦島にと聞くと、映画007シリーズ「スカイフォール」に出てくる「デッド・シティー」のモデルになった場所なので直接見たかったと言う。物好きな人だなと思ったが、下船後に昼食に誘ってみた。

 シャイで口数も少なかったが、神社、仏閣に興味があり、京都では清水寺と伏見稲荷がよかったと言う。次に広島、長崎を訪れ平和公園と原爆資料館を見た。「原爆の惨状は本当に恐ろしい。平和が一番大切だと思った」。私は軍艦島が世界文化遺産の一施設に登録されたが、韓国と中国が反対したと説明した。すると「知っています。戦争中に炭鉱で強制的に働かせたのでしょう」と言う。日本語はできないが、歴史や文化を知りたい、史跡を訪ねてみたいと話していた。

 一人で地図を見ている外国人を時々見かける。観光か買い物、食べ歩きだろうと思っていたが、サムのように、日本に特別な何かを探しに来たのかもしれない。これから街で外国人に何か尋ねられたら、できるだけ力になりたいと思う。 (山本勇二)

 

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