鳥インフルエンザの感染が過去最悪の規模へと拡大する中、韓国農林畜産食品部(省に相当、以下同じ)が生きた地鶏の流通を許可していた事実が15日までに分かった。生きた地鶏はウイルス拡散の危険性が非常に高いにもかかわらず、同部はあえて流通を許可し、これが問題になると2日後に再び禁止した。今回の鳥インフルエンザはウイルスの感染力が以前よりも強く、しかもこのように国の対応があまりにもずさんなため、過去に例のないほど深刻な状況となっている。政府横断型の指揮系統が不在となっていることや、農林畜産食品部だけが対応に当たる現状への懸念も高まっている。
今回、農林畜産食品部が生きた地鶏の流通を許可した背景には、韓国地鶏協会の圧力があったといわれている。流通が禁じられ被害が発生した地鶏農家から泣き付かれた協会が、農林畜産食品部に流通を認めるよう強く求めたようだ。もちろん農家の被害が拡大するのは心痛いが、それ以上に重要なことはウイルスの拡散を遮断することだ。ところが農林畜産食品部は畜産農家の保護という組織としての目標にとらわれ、感染拡大の阻止という国家次元の目標を見失ってしまったのだ。
日本でも韓国と同じ時期に鳥インフルエンザの感染が広まったが、最初に感染疑いの事例が確認されてから2時間後、安倍首相は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置し、官邸が中心となって対応に当たった。これに対して韓国では最初の感染確認から5日後に関係部処(省庁)による会議が開かれ、農林畜産食品部に対策チームを設置するなど対応を一任することが決まった。その後、感染から1カ月が過ぎた現時点で、韓国では殺処分された鶏やカモなどの数が1900万羽に上っているが、日本では78万羽にとどまっている。国による対応の違いによってこれほどの差が出ているのだ。
一方で農林畜産食品部と他部処との調整が進まないことも問題として指摘されている。現場で殺処分を行う担当者の数が足りなくなると、農林畜産食品部は韓国軍に支援を要請したが、国防部はこれを拒否した。警戒レベルが「警戒」から「深刻」に引き上げられた時期も遅れたが、これも農林畜産食品部だけに対応を押し付けたことが原因といわれている。
ただ今のところ住民の間で感染者が出ていないことは何よりも幸いだ。過度に不安を感じる必要はないが、感染を早期に遮断できなければ、住民が感染する恐れも十分考えられる。ちなみに中国では2014年に17人が鳥インフルエンザウイルスに感染し、うち10人が死亡した。黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相は見せるための庶民生活視察よりも、鳥インフルエンザの感染拡大を今以上に深刻に受け止め、国としての対応にもっと力を入れるべきだ。