【モスクワ杉尾直哉】ロシアのメディアによると、トルコ駐在のロシアのアンドレイ・カルロフ大使が19日、トルコの首都アンカラで写真展覧会に参加中に銃撃を受けた。ザハロワ露外務省情報局長(報道官)はカルロフ大使が死亡したと発表、「この殺害をテロ攻撃と見なす」と語った。
ロシア国営テレビが伝えたトルコメディアの映像によると、カルロフ大使は「トルコ人の目で見たロシア」をテーマにした写真展の開会式で演説中、背広姿の若い男に背後から銃で撃たれて倒れた。映像では、男が右手に銃を持ったまま、左手を挙げて何かを叫ぶ様子が映っていた。露メディアによると、男はその後、治安当局によって「無力化」されたといい、殺害された模様だ。
殺害の目的は明らかではないが、AFP通信は、男が「アレッポ」「報復」と叫んだとの目撃者の証言を伝えた。ロシア軍は昨年9月からシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)掃討目的の空爆を実施しており、露軍のシリア作戦への「報復」だった可能性がある。
シリア北部の主要都市アレッポは、ロシアが後ろ盾となっているアサド政権側が12日までにほぼ全域を制圧した。トルコはアサド政権と対立するシリア反体制派を支援してきた。反体制派が露軍の空爆攻撃を受けたことでロシアとの関係を悪化させたが、エルドアン大統領は今年からプーチン露大統領との関係改善に努めてきた。
シリア正常化を目指すロシアは20日、モスクワでロシア、トルコ、イランの3カ国外務・国防相による初めての会議を開く計画だが、カルロフ大使の殺害が影を落としそうだ。