関西へ最短、重視
北陸新幹線の福井県敦賀市以西ルートを検討する与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)は20日、同県小浜市経由で京都駅に至る「小浜・京都ルート」を採用することを正式に決めた。京都-新大阪間については、東海道新幹線の北側を通る北回り案か、京都府南部を通る南回り案かの判断を先送りし、年度内に結論を出す。2046年とされる全線開業の前倒しに向け、今後、2兆円を超える建設費の財源確保策を探る方針だ。
与党PT座長の茂木敏充・自民党政調会長は会合後の記者会見で、「北陸・関西間の移動の(時間が最短という)速達性や、(乗り換えがないなど)利便性を総合的に勘案した」と述べた。
茂木座長は詳細なルートの調査に1~2年、環境影響評価(環境アセスメント)に4年前後かかることを明らかにした上で、「効果を十分に発揮するには、早期の全線開通が必要だ」と指摘。調査の間に、開業前倒しに向けた財源について与党内で検討する方針を示した。
与党は、JR西日本が提案した小浜・京都ルート▽滋賀県米原市で東海道新幹線に接続する米原ルート▽小浜市、京都府舞鶴市を経由して京都・新大阪両駅に至る舞鶴ルートの3案を検討。小浜・京都が最短時間・最安料金で北陸と大阪を結び、利便性向上の効果額が最大になることなどを受け、PTの検討委員会が今月14日、「小浜・京都が適切」とする報告書をまとめていた。【吉永康朗】
予算目当て、合意加速
与党の議論が実質3カ月間で決着したのは、昨年3月に北陸新幹線の東京-金沢間がつながったことや、安倍政権が今年1月に高速交通網整備で掲げた「地方創生回廊」構想が追い風になったからだ。政治家同士が長年綱引きしてきたが、「今なら予算がつく」(自民幹部)との思惑から合意が一気に進んだ。
与党内の構図では、北陸選出の議員らが関西へのアクセス時間が最短になる「小浜・京都ルート」を支持。京都府や山陰選出議員は「山陰新幹線」につながる「舞鶴ルート」を推した。議論は今年9月、8月の党役員人事で政調会長となった茂木敏充氏が主導して本格化。「舞鶴派」を納得させるため、山陰新幹線などの推進を与党として強く後押しすることを条件に折り合った。
茂木氏は20日の会見で、山陰や四国新幹線を念頭に「来年度からの研究調査予算の大幅増額などの真剣な検討を国土交通省に求めた」と強調。関係議員に配慮してみせた。
財源に関し、自民党内では、リニア中央新幹線建設で採用された財政投融資や建設国債発行案などが早くも浮上している。【高橋克哉】