安岡明夫HP(yasuoka.akio@gmail.com)

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=副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-2」=
090927加筆訂正
Q4.「彼はトルコの病院に勤務していた時に、『シルクロードの死神』で中国の核実験による後遺症を世界に告発したことにより、中国への帰国は叶わなくなり、家族は崩壊(妻や子に再会が出来なくなった)。中国に残していた二人の子は出国を許可されず祖父母が養育している」(p.120-121)。

これだけ読むと、あたかもアニワル・トフティ氏は妻子と分かれることを自分では予定せずに番組に協力し、結果的に家族と生き別れになったかのようである。

処がこの本をよく読むとそうでない。実は、彼が番組に協力した時既に家族と生き別れの運命だったのである。彼はそれで家族と生き別れとなることが分かっていた。彼は意識的に家族を棄てたのではないか?

何故なら、英国TV番組の協力するということは、番組がTVで放映されるということだ。そこに「大学に保存されている内部資料や病院のカルテ、図書館の資料等」で知ることの出来る内容が入っていれば、当然中国側は誰にそれが可能だったかを調べる。「大学に保存されている内部資料や病院のカルテ、図書館の資料等」を収集していたのだから当然彼は多くの人に目撃されたはずだ。また、ロプノール近辺の村々に何回も入っているのだから当然顔を覚えられているだろう。

だからこそ、1999年3月、台湾人記者からトルコと中国の関係強化が始まることを聞いた時、あわてた。部屋代も踏み倒して英国へ亡命したのである(p.137-139)。

つまり彼は、もう中国に帰国できないことを知っていた。帰国すれば「禁固二十年は免れない」(p.123)と分かっていたのである。

つまり彼は、英国TV番組の協力することを決意した段階で、若しくはその近い時期に既に、家族を棄てることになると知っていなければいけないはずなのである。

つまり彼は意図的に家族を棄てたのではないか?

処がそう単純に言えない所にこの問題の深さがある。
彼は本当に家族を棄てたことに気づいていなかったのではないか?
何故そんなことが可能なのだろうか?
彼は右手の行なったことが左手にわからないような人なのではないか?
この本から受ける印象はそのようなばらばらな人間性である。統一性が感じられず、矛盾だらけだ。

是非読者の方はこの本をお読みになって頂きたい。私の感想が間違っているかどうか?一体彼は何者で、彼の告発とは何なのか?彼が意図的に家族を棄てたのだとしたら彼は信頼するに全く足らぬ人間である。彼が自分で家族を棄てたことに気づいていないとしたら彼は病人だ。一体どちらなのか?

しかし、多くの苦しんでいる人を救うためあえて彼は自分の家族を捨てたのだという解釈が出来るかもしれないのでそこを考える。

本当に彼が新疆のウイグル族と漢族のことを考え家族のことを考えていれば、他の方法があった。英国TV記者に協力して彼らが出国後、彼は自首して出ればよかったのである。そして禁固20年の刑に服せば良かった。

大急ぎで国外に逃亡しようとすれば、収集した資料を破棄するなどのことも有り得る。しかし、必ず後で自首するつもりなら元の場所に戻しておくとか、当局に提出することも出来る。

これが最良の道ではなかっただろうか?そうすれば20年後家族とも再会できるし、ウイグル人は彼のことを恩人と思うだろう。20年後には中国は民主化しているだろうし、そうでなくとも心安らかな人生が待っているのではないだろうか?拷問を受けることも考えられるが、全てを正直に告白すればそれ以上のことが出来るはずもない。

仮に新疆地区に大きな核の放射能問題が存在し、それを告発する必要が真にあったとしたらこれこそが最良の道だったと思われるのである。違うだろうか?

Q5.本当に新疆ウイグル地区に深刻な放射能問題が存在しているのだろうか?

ここの所は私自身よく分からないところである。だが私の疑問点を書いていこう。

1985年12月、中国「政府の教育と宣伝部署の高官であったジャナブルは、『原爆実験は西から東へ風が吹く日に行っているから、新疆に影響はない』と」発言した(p.57)。

世界地図でロプノールを見ると、新疆地区の東のはずれにあるから、西から東へ風が吹く日に原爆実験を行えば、死の灰は東に流れ近くの山にぶつかって止まるはずだ。

ところが、実際にロプノール近辺の村々を尋ねると、農民の一部に

「農民たちは「基地では、漢人の住む地の方向に向かって、つまり西から東に風が吹く時は核実験をしない。西に吹いた時に行っていた」と憤る」(p.135)と言う「A」。

また、アニワルは
「英国国際科学調査委員会が中国の核実験の影響と思われる放射能を探知したのは、五千マイル(8千km)先までだと聞いた。・・中国政府は『核実験による周辺地域への影響はない』と主張し続けているが、カザフスタンなどの周辺諸国まで実際に『死の灰』は及んでいる」(p.134)
と言う「B」。

「A」から考える。つまりこの村は、ロプノールの西側に存在したのである。ところで、西風が吹く時逆風が吹くことは良くあることなのだ。

そのメカニズムは2つある。1つは、その村が盆地にあることだ。その場合、上空では西風が吹き、従ってロプノールの放射能は全く流れてこないにも関わらず、地表近くでは逆風で東風が吹くことはある。

もうひとつのメカニズムは、その村が半盆地にあることだ。平地で西風でも、山に半分覆われた所では逆風が吹くこともある。

つぎに「B]を考える。五千マイル(8千km)と言えば地球の裏側だ(赤道では一周に4万kmかかるが、緯度が高くなるとこの程度になる)。つまりこの放射能とは、西風のジェット気流に乗って地球を一周か何周かしたものかもしれない。カザフスタンで検知されたのも当然である。ごく薄いものかもしれない。

そこで最後に残されたものが、

1994年9月、鉄道局は全ての鉄道沿線の鉄道労働者とその家族に健康調査。「アニワルは腫瘍に関するデータを集計するチャンスを得た」(p.122)

「ウイグル人の悪性腫瘍発症率は中国のほかの地域に比べて35パーセントも高い・・」(p.122)

と言う部分である。これが本当だとすれば何か新疆地区には癌を引き起こすような要素があることになるが、それが放射能だと決め付けるのは早すぎるし、果たしてこれが本当である確証もない。癌を引き起こす要素は放射能以外に無数にあるから、どう考えてもこれだけで決め付けるのは乱暴ではないだろうか?

また、次のようなエピソードが書かれている。これはアニワル氏が語ったものではないが。

「シルクロードへ一人旅に行った日本人青年の話が今も忘れられない。
「ローカルバスに乗って南新疆をめざしていたところ、突然昼間なのにピカッと光るものを感じた。その後、バスの中を見渡すと同乗者たちが皆、鼻血を流している。その光景は滑稽にさえ思えた。ところが、鼻に手を当てると自分も同じように血が出ているのに気づいた。バスの中は騒然となった。あの時、私は被爆したのかもしれない」」(p.134)。

果たしてこういうことがあるのだろうか?原爆で被爆した場合、3〜4日目ぐらいから鼻血が出るケースがある。また、白血病になると、鼻血が出ることがある。

それは次のようなメカニズムと考えられている。
まず、放射線の中のガンマ線が強烈に人体内を通り抜けると、造血のための臓器(骨髄など)が損傷される。このため正常な機能を減少した血球が生産される。

特に白血球は正常な機能を失いやすい。そこで、性能の低下を量で補うため、骨髄などは盛んに白血球を数多く生産するようになる。するとDNAを転写する回数が飛躍的に増えるため転写ミス(突然変異)が発生しやすくなるなどの原因でガンが発生しやすくなる。これが白血病だ(注)

すると、骨髄が白血球の産出の大わらわとなるため他の血液要素の産出がおろそかとなり、特に出血時に血を止めるための血小板が数が少なくなる。このため、皮膚や粘膜が傷ついた時血が止まるのが遅くなるのだ。

ところが上の青年の話では、ピカッと光った瞬間に全員が鼻血を出し、ピカッと光る以外に特に衝撃を受けた様子がない。こういうことがあることなのだろうか?あるとすれば、中性子爆弾のようなものが実験されており、いきなり鼻の粘膜と血小板がガンマ線で破壊されたとでも考える以外ないが、その割には日本人青年が不思議な死に方をしたとの話も聞かない。また、そうであれば鼻から血が出るだけでなく、耳や目からも血が出るはずではないだろうか?
寡聞にして原発事故・原爆被曝で瞬間的に鼻から血が出たと言う話を勉強不足のため聞いたことがないが、ジャーナリストの方でこういう話を聞かれた方は是非記事を書かれて日本人を広く啓蒙して頂きたい。

(注):白血病の発生原因としてはその他に、大量の放射線がいきなり骨髄中の造血細胞に突然変異を発生させ、その突然変異がガンを引き起こすものだったためにいきなり発生するメカニズムもある。

参考文献:
「中国を追われたウイグル人」(水谷尚子/2007/文春新書)

参考記事:
書評「中国を追われたウイグル人」090809「1」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39750792.html
書評「中国を追われたウイグル人」090809「2」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39752811.html
(エッセー)ウイグルの針刺し事件を考える090909
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39942413.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「1」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-1」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044904.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「2」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-2」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044905.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「3」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40084645.html

それ以外の参考記事は下記のとおり:
ウイグル暴動関連重要記事目次
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39719208.html

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