あらすじ:街を出るための資金が必要なロッキーは、恋人マニー、友人アレックスと共に、大金を持っているといううわさの目の見えない老人の家に忍び込む。だが、老人(スティーヴン・ラング)は、驚異的な聴覚を武器に彼らを追い詰める。明かりを消され屋敷に閉じ込められた若者たちは、息を殺して脱出を図るが……。(シネマトゥデイ)
製作国:アメリカ 上映時間:88分 製作年:2016年
監督・脚本:フェデ・アルバレス 脚本:ロド・サヤゲス
キャスト:ジェーン・レヴィ / ディラン・ミネットト / ダニエル・ゾヴァット / スティーヴン・ラング 等
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どうも、アバウト男です!
日本での謳い文句として『20年に一本の恐怖の作品』と銘打ち、海外でも大ヒットした【ドント・ブリーズ】。そこそこのホラー好きとしては、ついつい気になってしまう作品で、実際に観てきました!
『ドント・フリーズ』じゃないし『ドント・プリーズ』でもありませんよ『ブリーズ』です!ラストの結末やオチは書きませんが、展開的にネタバレを含む感想になっています。
本年度屈指のスリラーが登場!
本作の内容をザックリ説明するなら、
日頃から泥棒に入り小金稼ぎとスリルを楽しんでいる、金髪美女のロッキー/その彼氏でイケイケのマニー/ちょっと気弱なアレックスの若者3人組が、次に狙いを定めたターゲットは盲目の退役軍人の老人宅。老人は多額の金を所有しており、近隣は空き家だらけ、楽勝な仕事かと思いきや…
実は盲目の老人はかなりの異常者で、奪われた銃でマニーが早々に殺されてしまう。果たして残ったロッキーとアレックスの2人はこの家から無事出れるのか?
要は『ヤバい盲目ジジイの家から逃げ出せ』スリラーです!
本作、相手が盲目な老人とはいえ『退役軍人』ってこともあり、ここ最近流行りジャンルの一つでもある、俗に言う『舐めてた相手が実は殺人マシーンでしたムービー』の要素を、上手くスリラーに取り入れた点も面白いなと。
普段『殺人マシン』側が主人公で、舐めてかかるDQNどもがヤられるって話が面白んだけど、それを逆転させDQN目線から見せるのが本作。
『殺人マシン』というよりは『異常者』って事で強いて言うなら『舐めてた相手が実は人殺しの抵抗ない異常者だったムービー』かな。
この映画『盲目のジジイから逃げる』ってシンプルな設定にも関わらず『面白み』が大きく4つあって、随所に飽きさせない工夫が凝らされてましたね。その4つの『面白み』を挙げながら感想を語っていきます。
1. ジジイに存在がバレないように逃げ回る『スパイ潜入モノ』的な前半!
まずは若者が老人宅に上がり込んでから、老人に存在を悟られないように、お目当の大金を探す『スパイ映画の潜入モノ』みたいな流れで前半を魅せてくれる。
マニーを躊躇なく殺した老人は、他にも仲間がいるんじゃないか?と疑い、耳を澄まし、銃を構え存在を伺う。
ここで【ドント・ブリーズ】=『息をするな』というタイトルの意味が浮かび上がる。物音を立てたら即座に射殺され兼ねないハラハラと緊張感。思わず観客であるこちら側も息を飲んでしまう。
老人は視力を失ってるものの、卓越した聴覚と嗅覚を持ち、侵入された入り口を塞ぎ、若者の退路を絶って行く。老人が家をうろつき回る中、見つからないように別の出口を探しに奔走する。
タダでさえ格子の付いた窓ばかりなのに、さらに限られた退路を断たれる怖さね!まさに袋のネズミ。
2. ジジイに存在がバレてからの地獄の『鬼ごっこ』的な後半!&犬!
結局、老人が大金を取られている事に気づき、残りの2人の存在は早い段階でバレでしまう。ここから盲目老人と若者2人の地獄の『鬼ごっこ』展開へと移行する。
普通だったら「盲目の老人と泥棒を日頃からやってる若者であれば余裕だろ?」と思うかも知れないが、地下に逃げ込んだ2人に対し、老人はブレーカーを落とし視界を『真っ暗』にする秘策に出る。その手があるよな!
真っ暗闇にしてしまえば、老人が見てる光景そのものになり、家の構造を知り尽くしている老人が有利になり形成が逆転する。
ここの場面で、暗闇で手を伸ばし辺りのものを触りながら、何も見えてないロッキーが、図らずしもどんどんと老人の方へと近づいて行ってしまう「あ、ヤバい!ヤバい!」と思ってしまうリアルな暗闇描写にはハラハラさせられましたね!
それと同時に、老人も複雑な地下室に目印になる家電や天井の柱を触りながら、場所を認識してる描写なんかもあって、ちゃんとしてるなと。
家の構造を熟知しているとはいえ、さすがに若者と盲目の老人だと部が悪い。そこでこの『鬼ごっこ』的やり取りをトントンのバランスにしているのが、凶暴な犬の存在だ。
老人は手懐けた狂犬を放つ事で、動きに制限のある自身の行動範囲を格段に高める。
接近戦はジジイ!遠距離戦は犬!
と言った具合に。若者2人をジリジリと追い詰めていく。これは手強い…
3. ジジイの隠された異常性&どちらにも感情移入出来ない作り
「仲間を殺されたのは分かるけど、まず泥棒に入ってる時点で自業自得だし、盲目で大金を持ってる老人から金を取るってなんか可哀想じゃん?」と思いながら観てると、隠された老人の異常性が中盤ふと見えてくる。
老人には1人娘を事故で失ったことで心にドス黒い『闇』を抱えていて、娘を事故死させた女を自宅の地下室で監禁していたのだ。
この地下室に人を監禁しているって展開はホラーやサスペンス映画なんかにはよく見られるパターンだけど、ひと味違うのは『彼が何の為に監禁』をしてるか... ここがこの老人の異常性の部分でしたね。
まだ娘の復讐として、分かりやすく『拷問』や『レイプ』するならホラー映画的要素として分かるが、彼いわく「レイプはしない!ただ私の◯◯◯◯◯◯もらう!」ここに何が入るかは実際観てのお楽しみです。キモいし!なかなかのサイコ感でしたね。
とはいえ、泥棒を繰り返す若者たちにも事情があって、ロッキーは親からネグレクト気味の妹と一緒に冴えない暮らしをしていて、大金を手に入れた暁には家を出て遠くに引っ越すそうと考えている。
その為に彼氏が殺され、危険に晒されながらも「命を取るか?金を取るか?」といった具合に大金に異常な執着を見せる。
アレックスはアレックスでロッキーに好意を抱いているので、彼女を見過ごせず必死に出口を探す。
この絶妙に、若者側にも老人側のどちらとも感情移入出来ない作りが良いなと!
4. ホラー好きこそ楽しめる『捻り』と『スカし』のサービス精神
そんな『どちら側にも感情移入できない』作りが、本作の終盤に見られる、話がどちらにも転ぶか分からない『捻り』の効いた『話運び』と程よくマッチしていて、終始息をつく暇も無く、どんどん引き込まれて行く。
これ... 一体どうなるんだ??!
恐らくこの手のスリラーやホラー映画好きほど「あ〜ハイハイ、今回はこういうオチね!」とタカを括ると、スカされる。この『捻り』のサービス精神が鑑賞後「なかなか良い映画だったな〜!」と満足感に繋がって来るんじゃないかな。この映画タダでは終わってくれない!
大まかにはこの4つが面白ポイントですね!
これも言わせて!良いなと思った場面
個人的にグッと来た場面も他にも色々あって、
まず老人の女性に対しても加減しない殴りっぷり!振り抜かずコンパクトに数を重ねるパンチが、素人っぽくなくて良かったかな。
それと勘のイイ盲目老人ならではの『気付いたらすぐそこにいて、まわりの音に耳を澄ましてこちらを伺っている』シーンね。ホラーぽい見せ方であり、すぐにこちらに向かって来る訳じゃない盲目な設定ならではの、ギョッとする描写でしたね。
それと地下の『監禁部屋』のディテールもイイですね!【クリーピー 偽りの隣人】とはまた違う『嫌な監禁部屋』描写。ソファの座るクッション部分を壁に敷き詰め、防音と女が傷つかない為の配慮とが、なんとも異様な光景で。
あと死体を浸す黒い液体なんかは【10 クローバーフィールド・レーン】を連想したり、犬を痛めつけるたり殺す描写が無かったのも好感が持てました。
やっぱ地下室の『暗闇シーン』』暗い空間で観るべきだし、銃声が怖さが引き立つ劇場の方が、魅力が引き立つ作品ですね!今年の新作映画はこれで締めるのが良いんではないでしょうか!
まとめ
評価:★★★★ 結構良かったぜ!
スリラー映画でいうと、ここ最近の良作サメ映画【ロスト・バケーション】に匹敵するくらい面白かった。若干こっちの方が面白いかも!
今後期待の監督さんですね!ロッキーを演じたジェーン・レヴィも可愛かったし。88分とタイトで満足な出来でした!
[ 予告編 ]
本作に通じる映画を2本紹介!
ワナオトコ
泥棒(強盗)に入った主人公の男が、罠を仕掛け殺しを楽しむサイコキラーに巻き込まれ、家から逃げ出そうと奮闘するホラー映画。
タイトルでスルーされそうだけど、実は隠れた良作!続編である【パーフェクト・トラップ】は微妙な出来。
ザ・ゲスト
『舐めてた相手が実は殺人マシーンでしたムービー』をスリラーの要素として取り入れた本作とはちょっとニュアンスが違うけど『不信な男は実は殺人マシーンでしたムービー』の【ザ・ゲスト】も軽く連想しました。
関連&オススメ作品!
死霊のはらわた (リメイク)
本作の監督フェデ・アルバレスの過去作。実はマニーを演じたジェーン・レヴィも出演してたみたいですね。グロ描写だけで内容は記憶に無い。
クリーピー 偽りの隣人
ロスト・バケーション