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適用18歳未満に 来年中にも諮問、法務省検討

 少年法が適用される年齢(現行20歳未満)について、法務省が18歳未満への引き下げに向けて本格的な検討を始めたことが20日、分かった。法務省は民法の成人年齢(現行20歳)を18歳に引き下げる改正案を来年の通常国会に提出する方向で作業を進めている。国会審議など民法改正案の進捗(しんちょく)状況を踏まえた上で、来年中にも法制審議会に少年法の適用年齢引き下げに関して諮問するとみられる。

 実際に適用年齢が18歳未満に引き下げられれば、18、19歳は一般成人と同様の刑事手続きで扱われ、少年院送致や保護観察など保護処分の対象から外れることになる。

 少年法の適用年齢引き下げを巡っては、選挙権年齢を18歳以上に引き下げた改正公職選挙法(昨年6月成立)の付則が「民法、少年法についても検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」としていた。自民党の特命委員会も昨年9月、少年法の適用年齢について「18歳未満に引き下げるのが適当」とする提言をまとめている。

 このため法務省は昨年11月~今年7月、省幹部らで構成する「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」で、少年法研究者や福祉、教育専門家ら計40人からヒアリングを実施。内部で検討し、20日に報告書を公表した。

 ヒアリングでは、適用年齢引き下げについて「公選法や民法に連動する必要はない」「18、19歳が保護処分の対象から外れ、必要な処遇がされず再犯の増加が懸念される」などの反対意見があった。一方「大人として取り扱われる年齢は(ほかの法律と)一致する方が国民に分かりやすい」「再犯増加の懸念には刑務所や社会内での処遇の充実や連携で対応できる」などの賛成意見もあった。

 適用年齢が18歳未満に引き下げられれば、比較的軽微な罪の場合は起訴猶予や執行猶予付きの判決などになり、保護処分の手厚い処遇がうけられなくなることも想定される。このため報告書は20歳前後の若年者を対象に新たな処分の導入なども今後の検討事項に挙げている。【鈴木一生】

 【ことば】少年法

 20歳未満を保護対象とし、処罰よりも矯正や教育に重きをおき、刑事事件では成人とは異なる手続きを定めている。少年が事件を起こせば、家庭裁判所が審理し、少年院送致や保護観察などの保護処分が検討される。家裁が刑事処分が相当と判断した場合のみ、検察官送致(逆送)され、一般の刑事裁判で審理される。殺人など故意に人を死亡させた16歳以上は原則逆送される。

解説 若年層更生、幅広く検討

 法務省が20日にとりまとめた「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の報告書の特徴は、少年法が適用される年齢の引き下げの妥当性の問題にとどまらず、20歳前後の若者が罪を犯した場合、どのような処分・処遇をすべきかを幅広く検討した点にある。

 適用年齢の18歳未満への引き下げが実現すれば、18、19歳は少年院送致や保護観察などの保護処分の対象から外れることになる。現行の制度では、事件を起こした少年は家庭裁判所に送られ、家裁調査官らが本人の性格や家庭環境などを詳しく調査した上で、処分が決められる。少年院送致になると、本人の特性に応じた教育計画が作成されるなど、再犯防止のためのきめ細かい指導が用意されている。

 18、19歳が保護処分ではなく、刑事裁判で実刑判決となった場合、大人数を収容する刑務所では刑務作業もあり、少年院で受ける特性に応じた教育的処遇などは困難だ。起訴猶予や執行猶予付き判決になった場合は教育の機会さえ失われるとの見方もある。

 報告書は「若年者は可塑性(未成熟で今後変化する性質)があり、更生のために特性に応じた処遇の充実が重要」と指摘。検討事項として、刑務所内でも少年院にあるような教育的処遇のための施設や体制の整備を挙げた。さらに、刑務作業が課される懲役刑と、作業が義務ではない禁錮刑を一本化し、受刑者の特性に応じた処遇を義務付ける法制上の措置にまで言及した。少年法の適用年齢に関する議論は、成人の刑事政策全般の見直しにも拡大する可能性がある。【鈴木一生】

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