英国の新聞らしく、時事ネタをパロディーにしたコラムです。ここで話される内容のどれが本当で、どれがそうでないか、空想を働かせてお楽しみ下さい。(コンテンツ編集部)
クレムリン(ロシア大統領府)で、不満げなウラジーミル・プーチンが側近のドミトリー・メドベージェフを呼びつけた。(本文敬称略)
――お呼びだそうで。
欧米のメディアを読んでいたんだ。
――そんなことしないでほしかったですね、ウラジーミル・ウラジミロビッチ。嘘のニュースに満ちていますから。それに、読んだら、あなたは怒りますからね。
怒るだと! 全く、あ然としているよ。タイムにフィナンシャル・タイムズ、月刊チャプター11――みんな、軒並みトランプを「今年の人」に選んだ。一体なんで、こんなことがあり得るんだ。私の実績を見てみろ。ウクライナを侵略して、クリミアを盗んだ。西欧を不安定化させて、ロシアの勢力圏を再構築した。シリアを爆撃で真っ平にし、米国の選挙を不正操作し、私のひいきの男をホワイトハウスに据えた。功績を多少認めてもらうには、一体何をすればいいんだ?
――私にとっては、あなたが常に「今年の人」です、ウラジーミル・ウラジミロビッチ。
それはうれしいね、ドミトリー。でも、それじゃ違うんだ。だって、冗談抜きで、君はアレッポを見たか? 我々はあそこを破壊したんだぞ。アサド(大統領)に再びシリアを掌握させた。米国の新しい国務長官は勲一等のレーニン勲章を持っているし、国家安全保障担当の大統領補佐官は「ロシア・トゥデー」で料理番組の司会をしている。それだけで少なくとも候補に挙がる価値があると思うじゃないか。
――全く、おっしゃる通りです。
私は石油輸出国機構(OPEC)に減産させたし、経済は活気が出始めている。
――素晴らしい成果です。
米国の民主党全国委員会にハッキングし、盗んだ情報をウィキリークスに流した。ナイジェル・ファラージやベッペ・グリッロの言うことに人が現に耳を貸すように私が仕向けたんだ。それが、どれほどの偉業か分かるか? 私はロシアのオリンピックチーム全員に投薬して、それでも出場資格をはく奪されたのは半分だけだった。それで私が何をもらったか? ニシト、何もなし、だ。
あの髪形でトロフィーワイフが複数いるトランプを見ろよ。彼は、路上からスタートして戦ってのし上がる必要は一度もなかった。選挙で1回、70歳の女を倒した。金権政治家と白人至上主義者を取り巻きにしている――まあ、いい。トランプも悪いところばかりじゃないんだろう。