日銀は20日開いた金融政策決定会合で、景気の総括判断を「緩やかな回復基調を続けている」として小幅に上方修正した。前回会合まで盛り込んでいた「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの」の表現を削除した。海外経済や消費が持ち直しているためだ。金融政策の緩和の枠組みは現状維持を決めた。
黒田東彦総裁は20日午後に記者会見して、今回の決定内容について説明する。物価2%をめざす金融政策の現状維持は、政策を決める9人の委員による賛成多数で決めた。短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度にする長短金利操作については、佐藤健裕委員と木内登英委員の2人が反対した。
日銀は今年3月から景気の総括判断を「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」としてきた。今回の総括判断で、前半部分の表現を削除したのは、新興国景気の不安が和らいで輸出や生産が持ち直しているからだ。
そのうえで「緩やかな回復基調を続けている」との表現にした。日銀は国内で気温の低下とともに冬物衣料などの消費が上振れている点も重視する一方、景気全体の足取りが力強さを取り戻すまでには至っていないと判断したとみられる。
世界経済が着実に改善している一方で、来月20日にトランプ次期大統領が就任する米国の経済動向には不透明感がある。日銀は今回の声明文で、リスク要因として「米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響」などを指摘。海外経済が日本経済に与える影響を引き続き慎重に点検していく姿勢だ。
景気の個別項目では輸出、生産、消費の個別判断を引き上げた。輸出と生産はそれぞれ「持ち直している」とした。ともに従来は「横ばい圏内の動き」と表現していた。消費は従来あった「一部に弱めの動きがみられるが」との文言を削り、「雇用・所得環境の着実な改善を背景に」と指摘したうえで「底堅く推移している」とした。
金融政策は、長短金利操作を柱とする現行の枠組みを維持した。
トランプ相場は財政出動による財政悪化懸念も伴って米長期金利の急上昇につながり、国内長期金利の押し上げ要因となっている。その国内長期金利は前週後半、マイナス金利政策の導入を決めた1月末以来の高水準である0.100%まで一時上昇した。ただ日銀はゼロ%程度とする誘導目標に沿った動きの範囲内と判断した。