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税収不足 円安頼みの危うさ示す

 2016年度の国の税収が当初見積もりを1・7兆円下回り、前年度実績も割り込む見通しとなった。最近まで続いた円高で企業収益が圧迫され、法人税中心に税収が減る。

     政府は税収不足を穴埋めするため、1・7兆円分の赤字国債を追加発行する。災害復旧費などを計上する16年度第3次補正予算案に盛り込み、22日に閣議決定する予定だ。

     リーマン・ショックで景気が冷え込んだ09年度以来の事態だ。国の借金が1000兆円を超す中、円安に伴う税収増に頼ってきたアベノミクスの危うさを示すものだ。

     政府は当初、16年度税収を57・6兆円と見込んだが、55兆円台に下方修正する。15年度実績の56・3兆円も下回る。

     大型公共事業を柱にして10月に成立した第2次補正予算でも建設国債2・7兆円を発行した。使途を公共事業などに限るが、借金に変わりない。今回の赤字国債も含めると新たな借金は4兆円を超す。

     税収はアベノミクスが本格化する前の12年度は43兆円台だった。14年の消費増税に加え、日銀の金融緩和で円安が進み、輸出企業の業績が改善して法人税収などが伸びた。

     安倍晋三首相は税収増を「アベノミクスの成果」とアピールし、景気対策と称した補正予算を毎年度編成してきた。並行して新規国債の発行額を徐々に減らすこともできた。

     税収不足について、首相は国会で「円高が要因」と説明した。これまでの税収増が景気底上げの成果ではなく、円安頼みだったと認めるようなものだ。

     アベノミクスは、金融緩和で景気を支えているうちに成長戦略を具体化し、経済の好循環を実現することを目指していたはずだ。だが、成長戦略は不発でデフレ脱却も見えない。景気が本格回復していれば、税収も為替相場に大きく左右されることはなかったのではないか。

     政府は依然として円安頼みだ。11月の米大統領選後に急速な円安が進み、輸出企業の収益改善が期待できるためだ。編成が大詰めの17年度当初予算案で、税収は57兆円台に回復すると見積もる方針だ。

     だが、「米国第一」を唱えるトランプ次期米大統領が米国企業に有利なドル安を望む発言をすれば、円高に戻る可能性が高い。税収も再び見積もりを下回る恐れがある。

     今回の税収不足ではっきりしたのは、アベノミクスが不安定な為替相場の影響を受けやすいことだ。

     円安で輸出企業の業績が上向いても、効果は一時的になりがちだ。人口減対策や規制緩和など日本経済の構造改革を通じて、持続的な成長に導く政策が必要だ。

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