電話とWeb申込で事業を加速させる:ユーザータイプで変わるプロセス設計方法
これまで、「コールセンターで売上倍増する方法」や「コールセンターの電話営業で一番大事なKPIは接続率」などで、電話申込によって売上を拡大させる方法を書いてきました。
サイタの申込プロセスの歴史は、最初はWeb申込のみでしたが、Web申込を捨てて電話申込に特化した後、さらに進化して、現在はWebと電話のハイブリッド方式となっています。
今回の記事では、事業を成長させるために、ユーザーによって申込プロセスをWebと電話にわける理由とその方法について書いてみました。
@tkiyama
目次
はじめに:複雑なCtoCをシンプルにする
電話申込のデメリット
電話とWebのハイブリッド方式:ゆるふわと目的志向
選択肢が多い=ユーザーファースト、ではない
複雑さを最小限に抑えるための「ややこし系」
チャットAIを導入すべきか
さいごに
はじめに:複雑なCtoCをシンプルにする
習い事のCtoCプラットフォームとして、教える側と教わる側が、「お互いに都合の良い時間と場所を選ぶことができる」のがサイタです。昔からよくある教室みたいに、相手の都合にあわせて決まった時間と場所を指定されるのではなく、ユーザー同士の希望にあわせてベストな時間と場所をマッチングすることができます。
まさにこの部分。
サイタは、お好みの場所や時間帯に応じてレッスンの予定を決めることができます。仕事前や帰りの時間帯、お買い物のついでや休みの日など、お好きに選ぶことができます。
これだけ書くと「CtoCってスゴイ!」感じですが、裏側をお話しすると、「お互いに都合の良い時間と場所を選べる」ようにするために、申込プロセスが複雑になってしまっていました。
例えば、Amazonでモノを買うときに必要な入力項目は、名前と電話番号と住所だけ。
日本でもボタン一つで日用品を注文できるAmazon Dash Buttonが発売されましたが、Amazonの購入プロセスは非常にシンプルです。一方サイタの場合は、買い物ボタンをポチっとするだけで購入完了となるAmazonと違って、希望スケジュールや場所情報などを細かく入力する必要があります。
Airbnbやヤフオクで、待ち合わせや受取方法を相手と何度もやりとりしたことがある人も多いと思いますが、あの面倒な複雑さです。
お互いの条件をあわせるために調整が必要なので、C2Cはどうしても複雑なプロセスになってしまう(要はめんどくさい)。それでも価格メリットや商材の幅広さがあるので許容されていましたが、スマホ普及で一気に流れが変わったように感じます。スマホ対応とは、少ないタップ数で完了できるかどうかが全て。C2Cの良さがあっても複雑なサービスは生き残ることができません。
Airbnbは普通のホテルのような簡単予約を目指しているし(”airbnb instant book”で検索してみてください)、メルカリのすさまじい人気も、ヤフオクの取引プロセスの複雑さを一気にシンプルにしたことが理由の一つだと思います。
この複雑性を解決するためにサイタで導入したのが、「電話申込」でした。
電話申込のデメリット
電話申込をはじめるまでは、サイタでは普通のウェブサービスと同様にWeb申込のみでしたが、Webを捨てて、電話受付のみに振り切りました。
具体的には、申込フォームの入力項目を劇的に減らして電話対応することで、売上拡大に成功したわけです。
※このあたりを詳しく知りたい人は「超シンプル申込フォーム→電話→CVRアップ!」を見てね。
Web申込の一部を残すのではなく全て電話受付にしたのは、極端にやらないと施策の効果が測定できないから。小さな改善施策だと、季節変動とか単発要因に紛れてしまって本当の効果がよくわからないので(サンプル数が少ないというのもあるけどね)、意図的にリスクをとることが多いです。
ということで全力で電話に振り切った弊社ですが、当然ながら、電話申込のデメリットもたくさんありました。
大きなところでこの3つ。
・深夜などのコールセンター営業時間外は受付できない。
・電話で話すのがイヤ、もしくは仕事の関係で営業時間内は電話で話せない人がいる。
・変動費率(人件費)が上がる。
そりゃそうだよね、という感じで予想通りなのですが、電話関連の施策が落ち着いたところで、これらのデメリットを解消するために導入したのが「電話とWeb申込のハイブリッド方式」でした。
電話とWebのハイブリッド方式:ゆるふわと目的志向
検索キーワード/デバイス/画面遷移などから、Webか電話のどちらにするかをシステムが自動判定します。Web/電話のどちらになるかは秘伝のタレみたいなノウハウがあるのですが、設計の背景にある基本の考え方がこれ。
目的志向ユーザー → Web申込
ゆるふわユーザー → 電話申込
「目的志向」ユーザーは、自分の意志がはっきりしていて、希望条件が明確です。
例えばドラムに申し込むユーザーの場合、「使えるお金は月1万円」「レッスンは月2回、水曜日の19時以降」「友達と一緒にやってるバンドで3ヶ月後にライブに出たい」みたいな感じ。
そういうユーザーには、Web申込で条件を指定できるようにしていて、Webだけで申込が完結するようにしています。
一方、ゆるふわユーザーは、ゆるふわ〜な感じの人です(笑)。
ゆるふわとは、人の属性ではありません。誰でもシチュエーションによって、ゆるふわになる。何かの刺激(TVCMや電車のつり革広告など)があると、ゆるふわ〜と行動します。
さっきのドラムの例でいうと、「TV番組でバンド演奏してるとこ見て、なんかドラムってかっこいいなーと思ってー」みたいな感じ。
ゆるふわなユーザーに「希望条件を入力して下さい」と要求しちゃダメ。「めんどくせー」となって離脱されるだけです。(実際は「めんどくせー」とさえ思わずに、なんとなく離脱されることが多い)
だから、ゆるふわユーザーには、名前と電話番号を入力してもらうと、
続きは電話で!となって、あとは弊社のサポートスタッフがホテルのコンシェルジュのように電話でヒアリングしながら、申込を完成させます。
選択肢が多い=ユーザーファースト、ではない
ユーザーファーストとは、ユーザーが自分の好きなように選べることだと最初は誤解していました。
そうではなく、ユーザーを迷わせないこと、気持ちよく画面遷移してもらうことがユーザーファーストです。
サイタでいうと、スクールを選びたい人もいるし、自分の希望がよくわからない人もいます。
選びたい人にとっては、スクールが比較しやすく、求める情報が論理的に区分されていることが望ましい。
自分で選びたい人(=目的志向ユーザー)にとっては、こういう一覧表示がユーザーファーストです。
一方、「先生を選んでくださいと言われても…」という人、(自分が何をしたいかよくわからない)ゆるふわユーザーにとっては、LPっぽいページの方が親切です。
自分の選択基準を持ってない人(=ゆるふわ)に、スクールを無理に選ばせることは暴力的。
例えば、生命保険のことをよくわかってなくて、「生命保険って入ったほうがいいのかなー」程度に考えている人に、生命保険の比較表を見せて「ほら選んで!」と強要してるのと一緒。「積立利率変動型終身保険って言われても…」みたいな。離脱するだけです。
そういう人に必要なのはコンシェルジェ。ユーザー目線になって考える人が、ヒアリングしながら提案することがユーザーファーストです。
複雑さを最小限に抑えるための「ややこし系」
(電話ではなく)Web申込を増やそうとすると、細かいことを会話の中で解決できる電話申込と違って、どうしても設計が複雑になってしまいます。自動化しようとして条件分岐を増やすほど、追加施策を重ねていったときにわけわかんなくなるし、数値分析もできなくなってしまう。
リリース後に少ない行数のSQLで数値分析できる施策が良い施策というか、複雑な条件分岐は何もいいことない。複雑は犯罪。
ということで、導入したのが「ややこし系」と名付けた処理でした。
プロセス設計していると、エンジニア泣かせのたくさんのイレギュラーケースが出てきます。それらの内、自動化するのが難しいとか、担当者が替わったら理解できないでしょとか、追加施策のときに大きな調整が必要だなーみたいな、将来に禍根を残す予感がするものは、すべて「ややこし系」にぶっこみます。
「ややこし系」に該当すると電話受付になります。無理して自動化しないというのがミソ。
過度な自動化は設計者のエゴです。どこまでやるかは、あくまでオペレーションの全体最適で判断するべき。
チャットAIを導入すべきか
電話、Webとくると、やっぱり次にやるのは、2016年後半にすごい盛り上がった感のあるチャットAIですが、やりたいなーとは思いつつ、サイタではまだやっていません。LINEで申込受付している会社の話とかも聞くけど、離脱率が相当高いなーという印象。
「申込の最初のアクションの成功率」「離脱率」「対応コスト(人件費)」「最終的な課金率」をパッケージで判断することが重要で、サイタのビジネスモデルの場合は、今のところチャットAIはまだだなー、と考えています。
さいごに
ここまで、どうやって電話とWeb申込を組み合わせるか詳しく書いてきましたが、大事なことは、電話とかWebとかの手段ではなくて、サービス全体にとって、つまりユーザーにとって最適な打ち手を選択すること。
サイタでの最適解は、電話とWeb申込のハイブリッドでした。いろいろ苦労しながらも、このような設計ができたのも、コールセンターを内製にして、良いことも悪いこともひっくるめて日々ユーザーと対話することで、ユーザーインサイトを深く理解するスタッフが設計チームにいてくれたからだと思います。
(コールセンターを内製すべきかは「コールセンターで売上倍増する方法」をご参考)
今回の記事が、UXにあわせた申込プロセスに悩んでいる人のお役に立てたらうれしいです。
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