アメリカの製薬大手メルクの日本法人であるMSDは19日、がん免疫治療薬の「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)について、条件付きで一定期間患者に無償提供すると発表しました。
薬価が決まるまで患者が使えない状況に対応するためで、患者の要望に応えるとともに、医療現場で早く浸透させる狙いがあるとみられます。
キイトルーダは、小野薬品工業が製造販売する「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の類似薬。体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞が免疫の攻撃を逃れる仕組みを解除し、がんを治療します。
9月に皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)に対して厚生労働省から承認を得たのに続き、19日付で肺がんの大部分を占める非小細胞肺がんについても認められました。
無償提供の対象は、肺がん患者のうち、最初の抗がん剤としてキイトルーダの使用が可能な患者です。臨床試験に参加していた医療機関のうち、市販後の調査などに協力できる所に無償提供を限定します。使用の可否は事前検査で判断され、期間は薬価が決定するまでとしています。2017年2月にも薬価が決まる見通し。
抗がん剤などの無償提供を行う例はありますが、新薬は薬価が決まってから売るのが一般的です。日本肺癌(がん)学会と患者団体が肺がんの最初の抗がん剤としてキイトルーダを使えるよう、早期承認の要望書を厚労省に出していました。
オプジーボを製造販売する小野薬品とその提携企業の米ブリストル・マイヤーズスクイブは、キイトルーダがオプジーボの特許を侵害しているとして、日米欧の各国でライセンス料の支払いを求めて提訴しています。
2016年12月20日(火)