【イスタンブール=佐野彰洋】トルコの首都アンカラの文化センターで19日、ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が男に銃撃され、死亡した。トルコのエルドアン大統領は暗殺を「2国間関係正常化への挑発」と非難した。ロシアのプーチン大統領は「シリアにおける和平プロセスの妨害」を狙ったとの見方を示した。
両大統領は電話協議で事件の真相解明に向けた合同委員会の設置で一致した。エルドアン氏は捜査担当者派遣や在トルコ大使館や領事館への警備強化要請を受け入れた。
事件は19日午後7時(日本時間20日午前1時)ごろ発生。カルロフ氏は写真展の開幕式典でスピーチしていた。事件発生時の映像によると、男はカルロフ氏の背後から銃撃後、アラビア語で「アラー・アクバル(神は偉大なり)」、トルコ語で「アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな」などと叫んだ。
ソイル内相によると、男は現役の警察機動隊員。駆け付けた警察部隊と交戦の末に射殺された。他にも3人が軽傷を負った。
シリア内戦では激戦地北部アレッポ東部の反体制派支配地域が陥落したばかり。アサド政権の後ろ盾であるロシアへの反発がトルコ国内で強まっていた。
トルコとロシアの2国間関係は2015年11月のロシア軍機撃墜事件で大きく冷え込んだが、16年8月にエルドアン氏がロシアを訪れ関係正常化で合意した。ロシアが発動した経済制裁の段階的な解除など正常化のさなかだった。