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<鳥インフル>自然に近い動物園 接触リスク

鳥インフルエンザウイルスが検出されたコクチョウ3羽がいた大森山動物園の動物病院の外観(大森山動物園提供)

 秋田市の大森山動物園でコクチョウ3羽がH5N6型の高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した問題は、希少種の保存や繁殖の役割も担う動物園に深刻な課題を突き付けた。園内の池や沼で自然に近い姿を観察してもらうことは、結果的にウイルスを持った鳥獣と接触する機会を増やすことになる。死角だったとも言える展示方法の在り方を巡り、模索が続く。
 園によると、コクチョウは園内の沼で飼育し、飛来した野鳥と共存していた。沼の工事に伴い、10月19日に園内の動物病院に移した。ウイルスの潜伏期間は通常、1週間〜10日前後と言われている。
 コクチョウは11月15日以降に相次いで死んでおり、今回の感染源は沼ではなく、網や鉄格子で囲った動物病院のおり内で感染したとみられる。
 ウイルスの侵入経路は(1)飼育員や獣医師の足に付着(2)野鳥のふんや抜け落ちた羽根、小鳥や小動物に付着−のどちらかの疑いが強まっている。
 ただ、小松守園長は「沼での感染の可能性はゼロではない。自然の沼での飼育はリスクが高い」と話し、飼育方法を見直す可能性を示唆した。
 国内の動物園で飼育する鳥類が鳥インフルエンザに感染したのは、高岡古城公園動物園(富山県高岡市)に次いで2例目。2010年12月にコブハクチョウ1羽が感染した同園は、渡り鳥が飛来する堀での飼育をやめた。
 高田数孝園長は「本来であれば野外展示したいが、園内での感染拡大を避けた」と説明する。
 日本動物園水族館協会(東京)によると、園内外の池や沼で鳥類を飼育する動物園は全国的に多い。
 協会の成島悦雄専務理事は「自然に近い状態で観察する飼育形態とは相反するものの、鳥インフルエンザの流行期は野鳥との接触を避け、希少種を隔離するのが現実的だろう」と話す。
 大森山動物園は、絶滅危惧種で国の天然記念物のニホンイヌワシの繁殖に力を入れている。小松園長は「15年前まで高病原性の鳥インフルエンザは広がっていなかった。全国の動物園は、どう対策すべきか戸惑っているのが正直なところだ」と胸の内を明かした。


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2016年12月01日木曜日


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