リニア中央新幹線名古屋駅の起工式であいさつするJR東海の柘植康英社長=名古屋市中村区で2016年12月19日午後0時33分、木葉健二撮影
JR東海は19日、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線・名古屋駅の起工式を行った。既に着工している東京・品川駅、南アルプストンネルと並ぶ「3大難工事」の一つで、在来線などが営業運転する既存駅直下での作業を迫られる。主要駅の工事に着手したことで、用地買収など開業に向けた動きを加速させたい考えだ。【林奈緒美】
「大変難しい工事なので、細心の注意を払って安全に進めていきたい」。JR東海の柘植(つげ)康英社長は起工式でこう語り、気を引き締めた。
リニア名古屋駅(全長約1キロ)は地下約30メートルに整備され、現在のJR名古屋駅北側と直角に交差する形になる。19日に着工したのは、用地買収を必要としない名古屋駅直下の工区(長さ220メートル)だ。
JR名古屋駅は現在、在来線や既存の新幹線で1日平均約41万人の乗降客が利用している。名駅周辺はかつてアシの茂る湿地帯が広がり、地下水位が高くて地盤も軟弱なのが特徴。営業運転への影響を最小限に抑えながら、安全に工事を進めることが課題になる。
工事ではまず、新幹線の高架や在来線の線路周辺の地中に複数のくいを埋め込み、くいの上部に既存の高架と線路を支える土台を建設する。その後、土台下の土を掘り進め、地下約30メートルでリニア駅を整備。完成は開業直前を見込んでいる。
名古屋駅地下には、過去に駅ビルを建設した際に残った構造物がある。これを取り除く作業を行うため18年度以降、東海道線上りホームの一部を閉鎖する予定。在来線のダイヤに影響を及ぼす恐れもある。
都市部の地下工事では今年11月、福岡市の博多駅近くで地下鉄延伸工事による陥没事故が発生した。同工事は地中を横に掘り進める工法を採用しており、地上から下に掘り進むリニア名古屋駅の工法とは異なる。リニア駅工事でも地下水の排水を順次行い、土砂や水の流入を防ぐ「土留め壁」を造る必要があるものの、JR東海は「福岡市と同様の陥没事故が起きることはない」としている。
JR東海は名古屋駅直下の工事と並行して、リニア駅で残る工区の用地買収を本格化させる方針。地権者約120人と交渉中で、19年までの取得を目指す。ただ、リニア開業を見込んで名古屋駅周辺は地価が高騰しており、用地交渉が難航することも予想される。
リニア中央新幹線
東京・品川-名古屋間を最短40分で結び、2027年に開業する予定。大阪への延伸時期は当初45年としていたが、国から低利融資を受け、JR東海は延伸で最大8年前倒しを検討中。建設費の総額は約9兆円を見込む。昨年12月に南アルプストンネルで、今年1月に東京・品川駅で本格着工した。