どうも、ゴトーだ。
俺は三度の飯より野球が好きでな。
プロ野球観戦は大人になった今でも毎年何回かは行くようにしている。
90年代後半あたりから野球人気が低下してヤバイ、と言われるようになっているが、実は観客動員数は右肩上がりで増え続けている。
一方で視聴率や競技人口は下がっているのも事実なので、それも合わせて紹介したい。
プロ野球の視聴率低下
プロ野球は戦後から日本の国民的スポーツとして発展し、テレビ視聴率は20%超えは当たり前という時代が長らく続いていた。
しかし2000年代に入り、イチローを始めとした有力選手が次々とメジャーリーグに移籍した時期から急激に野球の視聴率が低下していく。
今となっては信じがたいが、90年代の後半になっても巨人戦の平均視聴率は20%前後をキープしていた。
ざっくりと時代ごとに切り取った巨人戦平均視聴率は以下のようになっている。
年度 | 平均視聴率 | 象徴的出来事 |
---|---|---|
1980年 | 20.7% | 王貞治引退 |
1983年 | 27.1% | 原辰徳MVP |
1990年 | 20.6% | 西武黄金時代 |
1994年 | 23.1% | イチローが台頭 |
1999年 | 20.3% | 最後の平均20%超え |
2001年 | 15.1% | イチローがメジャー移籍 |
2006年 | 9.6% | 第1回WBC優勝 |
2010年 | 8.4% | 過去最低水準 |
このデータを見ると、確かにメジャー移籍を皮切りにガクンと視聴率が低下しているように見える。
2000年代のプロ野球のメジャーに対する嫌悪感は非常に強く、それを象徴するようなものとして「田澤ルール」がある。
これは2008年に田澤純一が日本球界を経ずにメジャー挑戦を表明した際に、ドラフトの指名を見送るように各球団に通達を送ったことがキッカケだ。
NPBはこれを受けて、日本球界での指名を拒否した人はアメリカから帰って来ても2年間の空白期間がなければ、日本球界に復帰できないというルールを作ってしまった。
嫌がらせ以外の何物でもないルールだが、確かにこの視聴率の落ち方を見ると有力選手のメジャー移籍が原因かのように感じられるので、メジャーを嫌うのも無理ないとも感じた。
実際、90年代のスーパースターといえば松井秀喜とイチローだったが、両選手とも抜けてしまうことでプロ野球のマスコット的存在がいなくなり、話題性が失われたのは否めないだろう。
2000年代に入ると、まずはプロ野球中継の延長がなくなり、次第に放送枠が減り、今ではレギュラーシーズンが地上波で放送されることは一切なくなってしまった。
2004年5月2日の「巨人 vs 広島」が最後の20%超えのリーグ戦となり、2015年8月25日の「巨人 vs ヤクルト」では3.7%という記録的な低視聴率を記録している。
競技人口の低下
同時に野球の競技人口も2000年代からの減少が著しい。
全国の中学校の部活動による統計データによると10年間で以下のように推移している。
2006年 | 2016年 | |
---|---|---|
軟式野球 | 30万2037人 | 18万5314人 |
サッカー | 22万473人 | 22万7735人 |
この10年間の間にサッカーは微増している間に、軟式野球の競技人口はなんと40%も減少している。
小学生に限ると野球はサッカーはおろかバスケットボールにも抜かれているというデータもあり、野球人口の減少はかなり深刻な問題となっている。
観客動員数の推移
このように視聴率も競技人口も急激に下がっているにも関わらず、観客動員は不思議なことに統計が取られて以降、一貫して増え続けている。
(引用元: プロ野球観客動員リポート ファンを惹き付ける5つの要素 | Baseball LAB[ベースボールラボ]プロ野球×データ)
1950年から5年刻みで平均動員数を抜粋したのが以下の表だ。
- | セ・リーグ | パ・リーグ |
---|---|---|
1950年 | 4452人 | 4200人 |
1955年 | 10813人 | 5440人 |
1960年 | 13600人 | 6966人 |
1965年 | 14885人 | 5956人 |
1970年 | 16776人 | 7800人 |
1975年 | 24306人 | 8200人 |
1980年 | 26467人 | 14900人 |
1985年 | 29265人 | 12100人 |
1990年 | 30585人 | 22100人 |
1995年 | 31573人 | 24700人 |
2000年 | 31630人 | 23600人 |
2005年 | 26650人 | 20226人 |
2010年 | 28491人 | 22762人 |
2015年 | 31494人 | 25002人 |
これを見ると2000年をピークに増え続け、その後一旦落ちて再び回復しているように見えるが、これには一つからくりがあり、実質的には一貫して右肩上がりになっている。
そのからくりとは、2004年まで観客動員数をどんぶり勘定で発表していて、それを翌年から改めようという動きになったことだ。
観客動員数の水増し問題
今となってはよくそれがまかり通っていたなと思われることだが、2004年までの観客動員数はどんぶり勘定で、「大体このくらいでしょ」という数字を主催者が勝手に発表していた。
特に酷かったのが巨人戦で、1988年~1994年まで5万6000人、観客席の改修工事以降の1995年~2004年までは5万5000千人の超満員と、ただの1試合も残さず満員発表をしていた。
ちなみに東京ドームの本当のキャパシティは「約4万6000人」で、5万6000人なら連日立ち見席に1万人もいることになるが、当然そんなことはなく、普通に空席が目立つ試合も多かった。
これがなくなったのは球界再編問題に揺れた2004年のオフのことで、2005年からは実数に近い形での発表になっている。
もっとも厳密には実数ではなく、現在の計算方法としては「有料販売チケット数 + 無料配布分」となっていて、ゲートにいる人が手でもぎ取ったチケットの数を元に調べているわけではない。
(それを1枚ずつ調べていたら試合中に調べられないという事情もある)
チケットを購入したけど見に来なかった、あるいは年間シートを購入したけど毎日見に来ることはない、といった人の分は余分にカウントされていることになるが、まあ許容できる誤差の範囲ではある。
パ・リーグの台頭
セ・リーグもほぼ一貫して伸びているが、80年代後半以降のパ・リーグの観客動員の伸び方は凄まじい。
80年代までのパ・リーグは暗黒時代とも呼ばれていて、外野席などはほとんど客の姿が見られないことが常態化していた。
近鉄やロッテのような不人気球団に至っては、70年代までの平均観客動員数が数千人程度で、日によって1000人を割ることもしばしばあったらしい。
それが今や平均2万5000人を上回るようになってきているのを見ると、いかに目覚ましい伸び方かがよく分かる。
この10年だけで見ても、オリックス、楽天、日ハムは1.5倍近く観客動員を伸ばしている。
意外なことに楽天2013年に日本一になり、翌年からは低迷しているが、それからも毎年動員数を増やし続けている。
セ・リーグの動員事情
ここ10年あまりの推移を見ると、凄まじく動員を増やしているのはDeNAと広島だ。
横浜 | 広島 | |
---|---|---|
2005年 | 13369人 | 14385人 |
2012年 | 16194人 | 22079人 |
2016年 | 26933人 | 29963人 |
このように横浜はほぼ2倍、広島に至っては2倍以上の動員数になっている。
特徴としてはどちらの球団も長らく続いた暗黒時代を脱していることで、チームの上昇気流に乗ってファンのボルテージも上がり続けている。
広島はキャパシティが最大3万2000人なので、動員数的には上限近くに達していることになる。
横浜に関しては2012年にオーナーがTBSからDeNAに移ったことで様々な改革を行い、わずか4年で平均動員数を1万3000人以上増やしているので、横浜ファンにとってDeNAの功績はとても大きい。
ちなみに12球団で唯一中日だけが、平均動員数が下落傾向にある。
中日は2004年から2011年まで落合博満が監督となり、全ての年でAクラス、4度のリーグ優勝、1度の日本一と栄光時代を築いたが、観客動員はむしろ下降傾向にあった。
それを問題視して、勝利至上主義の落合が解任されたが、続くジョイナス高木、谷繁監督ではチームが低迷したことでますます動員が減る悪循環に陥っている。
世界のプロリーグで2番目の動員数
イタリアの「カルチョ・エ・フィナンツァ」によると、プロ野球の観客動員数は世界の全てのプロリーグの中で2番目に動員が多いことが報じられている。
リーグ | 競技 | 国 | 合計動員数 | 平均動員数 |
---|---|---|---|---|
MLB | 野球 | アメリカ | 7370万人 | 3万5000人 |
プロ野球 | 野球 | 日本 | 2420万人 | 2万8200人 |
NFL | アメフト | アメリカ | 1750万人 | 6万8400人 |
プレミアリーグ | サッカー | イギリス | 1380万人 | 3万6400人 |
ブンデスリーガ | サッカー | ドイツ | 1320万人 | 4万3300人 |
リーガエスパニョーラ | サッカー | スペイン | 1070万人 | 2万8200人 |
セリエA | サッカー | イタリア | 860万人 | 2万2600人 |
リーグアン | サッカー | フランス | 790万人 | 2万900人 |
KBOリーグ | 野球 | 韓国 | 730万人 | 1万200人 |
こうして見ると日本のプロ野球というのは世界的な人気リーグなのがよく分かる。
試合数が多いことで合計2位になっているが、平均動員数で見てもセリエAを上回るなどかなり健闘している印象がある。
なぜ観客動員が増えたのか
さてここまで野球の競技人口や視聴率が低下している一方で、観客動員が増えていることを紹介してきた。
本来なら相関していそうな指標なだけに、不思議に感じられるデータだ。
ではなぜ観客動員が増えてきたのかというと、球団の地道なファンサービスが実ったおかげだと言われている。
とりわけ地域密着として、地元のファンを球場に足を運ばせるような様々な施策を採ってきた。
例えば横浜DeNAは、ファミリー向けに靴を脱いで座れる「リビングBOX」や、ビールサーバーが付いたカウンター席の「スカイバーカウンター」など、従来の野球ファン以外の人に気軽に野球観戦してもらう企業努力を続けていった結果、4年で60%以上の動員増につなげている。
むしろ今までサボりすぎだろ…と思わなくもないが、地域の人々にとって野球観戦してもらう敷居を下げたことで、一つ一つの球団の全国的な人気は上がっていなくても、観客動員を増やすことに成功している。