精神障害者を強制的に入院させるかどうかを判断する精神保健指定医の不正取得に関わったとして、厚生労働省は26日、指定医49人とその指導医40人を資格取り消し処分にしたと発表した。同省の医道審議会は、処分が出る前に指定医の辞退届を出した6人と資格申請中の4人を合わせた99人を不正と認定。今後、医師法に基づき全員に医業停止などの行政処分も検討する。
発表によると、取り消しになった89人は資格申請時、12都府県の26病院で勤務していた。京都府立医科大病院(8人)、兵庫医科大病院(7人)、愛知医科大病院(同)などが多く、地域別では兵庫県の医療機関が最多の28人に上った。いずれも資格取得に必要な症例リポートを、自身が診察していないのに同僚のリポートを使い回して国に提出。指導医も確認を怠った。
相模原市の障害者施設殺傷事件で容疑者の措置入院判断をした医師1人を含む6人は、不正なリポートを提出したなどと認定されたが、資格を返上しているため今回の処分対象から外れた。
厚労省によると、医師89人は現在、19都道府県で勤務している。複数の自治体から、措置入院や精神科救急の態勢などで「影響が出る可能性がある」と懸念する声が出ているという。
昨年、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)で、診察していない患者の症例リポートを使い回すなどし、指導医を含め指定医23人が資格取り消しになった。厚労省は2009年以降に資格申請した3374人についてリポートをデータベース化し、同様の不正がないか調べていた。【熊谷豪】